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閑話 その時、教室では

 文化祭2日目の友也たちが休憩に入るところからです。




「それじゃ、先に休憩入るよ」

「おうっ、しっかり休んでこい!」

「華ちゃん、人手が足りなくなったら連絡してね!」

「どうしても回らなくなったらその時は頼むかな」

「うん! また後でねっ」

「あぁ、また」


 昼前になり、友也と成実の休憩時間になった。あの二人は責任感も強くまとめ役としては適任なのだが、自分を疎かにしすぎるきらいがある。昨日だって結局ほとんど休み無しだったからな……


「ふぅ……それじゃ、俺たちも頑張りますか」

「あぁ、そうだね。さっきはあんなことを言ったけど、できる限り2人の邪魔はしたくないしね」

「おう。それに友也の方は結構疲れてるみたいだったしな」

「少し調子も悪そうだったね。まぁ、慣れない部分も多いんだろうから、私たちがカバーできる所はしていこうか」

「おう!」



 そうして昼前、昼時と時間が経ち、その連絡は入った。


「ごめんなさい、華ちゃん……」


 電話に出てから聞いた第一声がそれだった。重重しい口調で、どこか自分を責めるようなそんな声色。


「何かあったのかい?」

「その……友也くんが凄く体調が悪そうで……」

「やっぱり……」


 無理していたんだね。朝、気づいた時点で問いただして止めるべきだったな………


「やっぱり?」

「あぁ、いや。朝から調子が悪そうに見えていてね。晃も同じ意見だったしそうじゃないかと」

「あっ、華ちゃんたちもそう見えてたんだね。朝、そう思った時点で止めるべきだったよ……」

「……」


 友人もそっくりそのまま同じ意見で、思わず変な声が出そうになる。あぁ、友也が不調というのに――まぁ、ゲームのしすぎで寝不足で不調にはたまになっていたが――なんて嫌な女なのだろう。

 それに、初めての女友達とのお揃いならこんな所でじゃなくて別の方が良いのに……と、自分を責めつつ、自分にも言い聞かせるように言葉を紡ぐ。



「起こってしまったんだし、後悔は後にしよう。それで、何か他にもあるんだろう?」

「うん。午後からのシフトで、私が2人分頑張るから友也くんは休ませてあげてもいいかな?」

「んー、そうだね……少し待っててくれ」


 携帯電話から顔を離し、ちょうどバックに来ていた晃の方へ声をかける。


「あ、晃、ちょうどいいところに」

「ん? 何かあったのか?」

「午後からの私たちの方の休憩時間、潰れてもいいかい?」

「よく分からんが、華がその方がいいならなんでもいいぞ。っと、客も増えてきてるしそろそろ戻らないと。華も程々で仕事に戻ってくれよ」

「あぁ、もちろん。すまないね」

「おう、気にすんな」


 晃に確認を取ってから再び電話の方へと戻る。


「確認してきたけど、成実も一緒に休んでくれて大丈夫だよ」

「……へ? え、えっと、私、友也くんが休んでいいかって聞いた、よね?」

「うん、そうだね」

「それが私も……?」

「あぁ」

「な、なんで?」

「運良く私と晃が、成実たちの休憩終わりと入れ替わりで休憩に入る予定だったんだけど、続けてシフトに入れば成実たち2人が休んでも問題ないだろう?」

「えっ、で、でも!」

「こう言えば納得してくれるかな……体調悪い中で1人になると心細いだろう? だから成実は友也に付いていて欲しいんだ。それに、夏休みといい色々と2人には助けられてるからね」

「……」

「んー、どうしてもっていうなら、成実の手作りのお菓子とかを今度ご馳走してくれ」

「分かった。本当にごめんなさい……それから、ありがとう」

「はは、気にしないで。それじゃ」

「うん。本当にありがとう」


 そうして通話を終了した。


「ふぅ……さて、晃にも言われていたし、そろそろ仕事に戻ろうか」


 本当にあの2人には感謝の念が堪えない。それこそ、少しずつ恩を返していかないとこっちが気にしてしまう。


 そうして気持ちを切り替えて私は仕事へと戻って行った。



***



 華が電話を終え、仕事に戻ってきた。


「それで、何だったんだ? 予想はできるけど」

「多分予想通りだよ。友也が調子を崩したから成実に看ててもらって、代わりに私たちがシフトに入るってこと」

「だよなぁ。友也のやつ、無理する時は凄い無理するからなぁ」

「まぁ、無理すべき時にできなかったり、勇気を出すべき時に出さないのは格好悪いから、友也のそういう所は嫌いじゃないけどね」

「……当て付けか? 一応ちゃんと告白しただろ?」

「ふふっ、別に晃がどうだとは言ってないよ」

「……」

「まぁ、1つハッキリと言えることがあるとすれば……」

「……?」


 そう言いながら顔を近づけてくる華。


「晃はあの時も、今も凄く格好良いよ?」

「っ……」

「ふふっ……さて、仕事に戻ろうか」

「お、おう……」


 10年近く一緒にいるのに、会う度、何かある度に新しい表情を見せてくる。本当にこいつは……


「可愛すぎんだろ……」

「っ……」

「ん?」

「な、なんでもない! さっさと動くぞ!」

「あ、あぁ……?」



 それから仕事に戻ると、教室――特に男子の方――がザワついていた。


「何かあったのか?」

「あ、あぁ、晃か。ってあれ? そろそろ休憩じゃないのか?」

「あぁ、友也が体調悪くしたらしくてな。その代わりだよ」

「えっ、まじ? 大丈夫なん?」

「委員長、ここ2週間毎日放課後残ってたしね〜」

「頼りになるからってお世話になりっぱなしだったかな……」


 意外だ。こう言うと悪いが、少なからずマイナスな反応をする人がいると思ってた。

 友也は過剰に人を避けていた――境遇がそうさせていたのもある――が、意外と周りは優しいんだぞ。まぁ、本人も最近は周囲とよく絡んでるしな。友として嬉しい反面、若干の寂しさがあるのは身勝手すぎるよな。



「そういえば答えを聞き忘れてたが、何かあったのか?」

「あぁ、客に凄い可愛い子がいてな」

「見ろよあれ。松村の妹だって。すっげぇ、美少女じゃねぇか!」

「中学生で来年ここを受けるんだってさ」

「な、なんでお前が知ってるんだ?」

「ちょうど接客担当でな! 迷いかけてたのをここの生徒に教えてもらって来たんだとか」

「接客担当……くっ……」

「ちなみに松村の妹らしい。まぁ、名前を出したら露骨に嫌がってたからあんまし仲良くはないみたいだけど」

「あぁ、あいつの妹か……なら美少女も納得だし、2人が並んだら凄い画になりそうだな……」


 松村の妹か……それなら美形なのも納得だ。それに前の体育祭から人が変わったように優しい雰囲気になって、前以上にモテるようになったんだよな。


「年下の方が好きなのか?」

「っ! は、華か……」

「何だか見惚れているようだったが?」

「いや、そうじゃねぇって。松村の妹って聞いて、あいつも随分人が変わったなと思ってさ」

「あぁ、晃はそっちの気があったのか」

「それも違う! はぁ……なんだ? 拗ねてるのか?」

「……悪いか?」

「っ……別に悪くは無いけど……」

「うふふ、青春って感じね〜」


 華と話をしていると聞き覚えのある声がした。


「げ……」

「げ、は酷くないかしら?」

「久しぶりです、香織さん」

「えぇ、久しぶり。相変わらず可愛いわね、華ちゃん」

「なんで来たんだ……というかこっち戻ってたのか?」

「えぇ。華ちゃんや成実ちゃんのコスが見れるって聞いてね。見ない訳にはいかない! って急いで来たわ」

「行動力……」

「あはは、ありがとうございます。残念ですが、成実と友也は今はいないんですよね」

「あら、休憩中だったかしら〜」

「そうですね」


 まぁ、わざわざ心配かける必要も無い。そう判断したのだろう、華はそう言って誤魔化した。それなら俺も話を逸らそう。


「それで注文は何にする?」

「んー、ここに来るまでに色々食べちゃったし、甘いものでオススメはあるかしら?」

「パンケーキとかはどうだ?」

「そうね〜、それにするわ」

「了解。んじゃ、オーダー伝えてくる」

「あ、晃、華ちゃん」

「なんだ?」

「なんですか?」

「あんまり無理しすぎはダメよ? でないと体調崩しちゃうからね」

「……あぁ、気をつけるよ」

「ご忠告、ありがとうございます」

「えぇ、それじゃ、パンケーキ待ってるわね」


 言われた時は少しドキッとしたが、よく考えてみると別に普通のアドバイスとも取れる。


「友也の事、勘づいたのか……」

「それともただの忠告か……まぁ、香織さんならどっちでも有り得そうだね」

「そうだな。まぁ、変に反応すると気付かれるし、普通にやるか」

「あぁ」



 そうしてオーダーを料理班の方に伝えて、できたものを持っていく。


「わぁ、凄いね。何となく周囲を見回してても思ったけれど、今年の、特にこのクラスってレベル高くないかしら?」

「まぁ、そうだよな。メニューとかもそうだし、内装も凝ってるよな」

「えぇ、それだけじゃなくて、クラスのみんなが成功させたいってやる気に満ちてるのかしら? 接客も良くて、いい空間だわ」

「……売上トップだったクラスのリーダーさんにお褒め預かり光栄です」

「むぅ、私結構本気で言ってるのよ?」

「あぁ、分かってるよ。だからこそリアクションに若干困るんだよ」

「何よそれ。私が普段はふざけてるみたいじゃない」

「違うのか?」

「……違うわよ」

「ならなんだ、今の間は」

「可愛くない弟ね……」

「そりゃ、どうも。あ、そろそろ戻るわ」

「そうね。この後も頑張りなさいね」

「もちろん。それじゃ」

「えぇ」


 言った通りリアクションに困りはするが、内心普通に嬉しく思っている、自分もそうだが、何よりも友也たちが真剣に頑張ったものを褒めて貰えたのだ。



「何かいい事あったのかい?」

「いや……まぁな」

「ふふっ、今は忙しいけど、また今度聞かせてくれよ」

「別に話すほどの事じゃ……」

「……まぁ、いいか。……あれ?」

「どうしたん、だ?」


 華が窓の外を見ていたのでそちらに視線を向けると、友也と神崎さんが手を繋いで駆けていた。


「……回復したから仕事に戻ろうってことか?」

「あはは……あの2人なら有り得るね」

「もっとちゃんと休めばいいのにな……」

「まぁ、そこも合わせてあの2人って感じじゃないかな?」

「そうだな……どうせ止めても止まらないんだ。せめて2人が楽できるように引き続き頑張るか!」

「あぁ、そうだね」


 そう言って気持ちを切り替えて、俺たち2人は再び仕事へと戻っていった。



 この後、クラスメイトが戻ってきた友也を心配したり謝ったり、打ち上げで全員で騒いだりしたが、それはまた別の話だろう。





 会話多いですねぇ。まぁ、地の文多すぎるよりも個人的な好みが会話多い方なのでどうしてもそちら寄りになってしまうんですよね。


 ちなみに打ち上げまで入れようと思ったけど、たいして教室パートと代わり映えしない上に、大勢いる会話ってごちゃごちゃしそうだったので省略です。



 次話からまた本編ですかね。構成自体は少しずつできているのですが、10日後から定期考査でして……

 申し訳ないですが、次回更新は未定です。なるはやでやるつもりですが少々お待ちいただきたく思います。


 それでは今回もありがとうございました。また次回お会いしましょう〜

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