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130.文化祭の終わり



 校舎外の人混みを抜けていき、校舎に入って教室の方へと向かうと遠くからでも長蛇の列と言って差し支えないほどの長い列が見えた。それを横目に2人は進んでいく。


 校舎に向かう途中、先程までは横になっていたため、衣服にシワがついていないかどうかを確認してから来たが、教室に入る前にもう一度チェックをしておく。



 そしていざ教室へと入ると、すぐ左のテーブルに見知った顔があった。


「……あら? 友也と成実ちゃん?」

「あ、香織さん!」

「香織さん、お久しぶりです」

「2人とも休憩は終わったのね?」


 そう香織さんに言われ、俺はチラッと接客をしていた晃の方を見る。もしかすると2人は香織さんには言ってないのかもしれない。すると視線で頷かれそうなのだろうと察する。こんな意思疎通も幼なじみならではか。


「はい、昨日はシフトが押して満足に文化祭を回れなかったので。でも、香織さんが来るなら早めに戻るべきでした」

「あぁ、気にしなくていいわよ。うん、そうね、2人の衣装姿も見れたし、私は帰るとするわ」

「もうですかっ?」

「ふふっ、そんな顔しなくてもまたすぐに会えるわよ。あ、晃達にも言ったけど、根を詰めすぎてフラフラになるまで無理はしないようにね。誰かさんみたいに(・・・・・・・・)、ね?」

「えっ」

「ふふっ。それじゃ、またね。ご馳走様〜」

「あ……」

「あはは〜……さすが香織さんだったね」

「そう、だな……」


 幼なじみ云々の前に、晃とは姉弟なのだから仮に隠したとしても伝わってる可能性を考えておくべきだった。心配をかけまいと思ったのに、既にされた後だったとは。


「……とりあえず、仕事に移ろうか」

「うん!」


 教室の方へと視線を向けると、確かに聞いていた通りある程度捌けているように見える。相変わらず廊下の列は絶える様子が見られないが……


「友也、もう大丈夫なのかい?」

「あぁ、おかげさまでな。代わってくれてありがとな」

「いや、気にしなくていいさ。それより、友也の方がすぐに動けるようなら持ち場の確認をしようか」


 そうして白雪に状況を聞き、指示に従って接客業務をする。裏で料理を作るだけじゃ感じられない空気感だったりをすぐ近くで味わえて、なかなかに良い経験ができたと思う。



 そのまま俺と成実も加わって店を回していき、昨日よりも手際よく、そして閉門とそう遠くないタイミングで全ての料理が売り終わった。


「「「ありがとうございました!!」」」


 これで文化祭の業務としての部分はほとんど終わった。クラスメイトにとっては実質仕事の終了だ。



「お疲れ様〜」

「おつー!」

「あ、委員長、もう大丈夫なの?」

「それな、俺も気になってたわ!」

「えっ」


 チラッと晃たちの方を見ると両手を合わせて肩を竦めていた。


「……申し訳ない。皆にも迷惑かけた。体調の方はもう大丈夫だよ」


 俺はクラスメイトに向けて謝罪をする。晃と白雪にもだが、同様にクラスメイトにも心配と迷惑をかけてしまった。


「あはは〜、気にしないでいいよ〜」

「そうそう。体調崩したって聞いた時にはびっくりしたけど無事でよかったって感じ」

「むしろ準備とか任せすぎたこっちが申し訳ないわ」

「あ……その、ありがとな……」

「ははっ、気にするなって!」

「困った時はお互いさまさまって言うしねっ。それよりさ!」

「あっ、そうね! 売上、今から確認するんでしょう?」

「あぁ、そうだな。打ち上げについての相談とかも皆としないとだな」



***



「ねぇねぇ、華ちゃん」

「なんだい?」

「やっぱりさ、友也くんって人望に厚いよね?」

「あぁ、そう思うよ。それに去年までの友也とはまるで違って見えるかな」

「そっか〜……」

「何かあったのか……って、友也が呼んでるみたいだよ?」

「あっ、本当だ。友也くん、すぐ行くよ!」

「はは、話はまた今度聞くとするよ」

「うんっ。ごめんね、華ちゃん」

「いや……成実、ありがとう」

「えっと、こちらこそだよ? ……あ、ごめん友也くん! ということで華ちゃん。行ってくるね!」

「あぁ。行ってらっしゃい」

「行ってきます!」

「………本当に友也は変わった。成実と出会ってから良い方へと変わり続けている。だから……ありがとう」



***



「すまん、何か話してたか?」

「あっ、気にしなくて大丈夫だよっ。別に今話さなくても大丈夫な事だったから!」

「そうか……ありがとな」

「うん!」


 そうして俺と成実は売上を調べた後に学校への報告をして、そのまま打ち上げの為に予約していた店へとクラス全員で直行して行った。

 そこでは今まであまり話す機会のなかった人とも話をし、以前と比べて随分とクラスメイトとの距離が縮まったと思う。


 1つの共同作業を経て、互いの距離が縮んだのは良いことだ。体育祭は色々あって距離を近づけるどころか、少しでも間違えば修復不可能な溝ができかねなかったからな……


 それこそ今ではそこで揉めた松村とも普通に話せるような仲になれているため、体育祭では何とかなって本当に良かった。

 まぁ、普通に話したりするようになったからこそ少し気になったことがあるのだが、体調が戻った後の教室に戻ってすぐの時の彼の様子に何か違和感を覚えた。

 まぁ、今度それとなく聞いてみるのも良いかもしれない。


 そんなことを考えながら打ち上げの楽しくも賑やかな時間を過ごしていった。




 ちなみに余談だが、売上は校内トップだっただけでなく、近年だと3年前のとある2年生のクラスが打ち立てたかなりの高額を追い抜いて1位となったらしい。

 ちなみに、その3年前のクラスの生徒に今日会った女性が含まれているとかいないとか。

 まぁ外見といい、高校時代だと内面もある意味で他者を惹きつけるものだったからな……何とも納得のできる話だと思う。



 そんなこんなで高2の最初で最後の文化祭は幕を閉じていったのだった。






 今回いつもより少々短くて申し訳ないです。

 字数的に前回のと今回のをちょうど半分にする予定だったんですけど、中途半端かなって思って前回の方が少し長くなったんですよね……



 えっと、次回とその次くらいは文化祭のアナザービューもとい別視点、別時間帯のを書いて、次の章へと繋がっていく予定です。

 まぁ、別視点のやつって書いて即投稿タイプの私からすれば、次からの話のプロット固めの為の期間みたいな所あるんですけどね……あはは……



 それでは今回もありがとうございました。次は今後の流れが決まり次第投稿したいと思います。また次回にお会いしましょう。

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