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13.勉強通話


 晃や瑠璃から変なことを言われ、妙に意識してしまった次の日、いつも通り過ごしていると昼休みになりRICEにメッセージが届いた。


『今夜空いていますか?』


 成実からそんなメッセージが届き、つい彼女の方を向いてしまう。すると彼女もこちらを伺っていたのか目が合う。


「っ!」


 目と目が合う瞬間、少しだけ初めて会った時に見せたような眩しい笑顔になったような気がしたが、恥ずかしさで目を逸らしてしまい、再び成実の方を向くと既に彼女は周囲の生徒と話をしていた。


「気のせいかな。よし、飯食うか。ん? どうした?」

「いや、なんでもない……。これで自分は分かりにくい奴だと思ってるんだよな……」


 晃がジト目で俺の方を見ていたが気にしないでいいだろう。


「そういえば友也、いつも昼食はパンだよな?」

「そうだな」

「友也も瑠璃ちゃんも料理するんだし弁当にはしないのか?」

「今のところするつもりはないな。朝はゆっくりしたいのと、帰ってから洗い物が増えるのが正直言うと面倒だったりする」

「なるほどなぁ〜」



 そんなことを話しながら昼食を食べ終え、授業の準備を済ませていたら気が付いたら成実の方を見てしまっていた。最近は妙に意識してしまうが、俺としては以前のように一緒にふざけたり競ったりしながらゲームを楽しみたいと思っている。今夜は何をするのだろうか。



 テストも近いため頭を切りかえ、午後の授業をしっかりと聞き、家で復習するためにいくつかのテキストを鞄に詰めて終礼が始まるのを待つ。


 担任がなかなか来ないなと思い、少し教室内を見回す。すると成実がこちらを見ていることに気付く。昼休みの時は気のせいだと思ったが、二度も同じことがあるとそうは思えなくなってくる。何かあるのかもしれないし夜に聞いてみるかと考えていたところで担任の教師が入ってきた。


「やぁ、諸君。テストも二週間後に迫っているから勉強も怠るなよ? テストが終われば冬休みだからこそ今だけ気合を入れて頑張れよな! では解散! ……そういえばクリスマスは私は今年も一人だな……」


 最後に悲しい独り言が聞こえた気がしたが、クラスの誰も反応しないため俺もスルーして帰宅することにする。クリスマスに一人なのは俺も一緒だな、などと考えながら。




 そして、約束の夜となった。今日は早めに夕食と入浴を済ませたため、普段よりも早くに準備が整った。一応連絡だけ入れておこうと思い、『こちらはいつでも大丈夫だぞ』とメッセージを送る。


 その後、期末考査に備えての勉強をしていると、メッセージが届いたという通知が来た。


『遅くなってごめん! 通話できるかな?』

『あぁ、できるぞ』


 そう返信するやいなや、成実から通話がかかってきたため、もちろんすぐに出る。


『いきなりごめんね』

「俺の方はいつでも大丈夫だから気にしなくていいぞ」

『そっか、ありがと!』

「あぁ。それで今日は何をするんだ?」

『えっとね……』


 そう言って成実は少し悩むような声を出し、一息ついてから続ける。


『今日は一緒に勉強したいなって思って!』

「勉強か? 成実は学年トップだったよな?」

『一応そうだね。でもいつも意外とギリギリなんだよ?』

「そうなのか。まぁ、俺は構わないぞ。なんならついさっきも復習して時間を潰していたし」

『そっか! お互いに勉強しているのを見張りながらの方が集中できるかなって思ったんだ!』

「まぁ、確かに一人だと誘惑に負けたりすることもあるよな」

『うん! そういうわけだから、今晩はよろしくね? あっ、分からないところとかあれば答えるから!』

「おう、学年トップに教えていただけるなんて光栄だな」

『むぅ、それじゃ始めるよ!』



 そうして俺と成実は、時々お互いの進捗を確認しつつ勉強を開始した。数学の解法で理解しにくいところや、英語で訳すのが難しかったところは懇切丁寧に教えてもらい、完全に理解することが出来た。



 3時間ほど集中し続け、かなり進んだところで終了することになった。


「今日はありがとう。分からないところも教えてくれて助かったよ」

『どういたしましてだよ! 困った時はお互い様って言うしね』

「そうだな。まぁ、俺の方は成実から貰いすぎな気もするが……」

『えぇ!? そんなことないし、むしろ私の方こそお世話になりっぱなしだよ〜』


 そんなことを話していて、そういえばと昼休みに気になったことを聞いてみることにした。


「そういえばどうして昼休みに何度かこちらを見てたんだ?」

『えっ!? えっとね、今日のお誘い受けてくれるかなって思ったり、テストが終わったらまた一緒にゲームしたいな〜なんて思ってたんだよ!』

「なるほど。ゲームの方も構わないし、テストも近いから迷惑でなければ俺の方こそ勉強に付き合って貰いたいんだがな」

『ほんと? なら、あと2週間あるけど毎晩この時間は一緒に勉強する?』


 成実の方から思いがけない、だがとても魅力的な提案をされる。しかし、俺にばかり時間を割いていたら自分の勉強ができないのではと思ったので期間を少なくしてもらう。


「そうだな……三日に一度、この時間にやるというのはどうだ? 毎日俺のせいで時間を取らせるのは申し訳ないし」

『三日に一回……うん、了解! 分からないところとかも探しておいてくれたら、まとめて答えるからね? 遠慮はしないでいいよ!』

「おう、ありがとな」

『いえいえ、こちらこそ!』


 そんな時、瑠璃と晃に言われたことをふと思い出してしまう。


『デートに誘ってやれ』



「なんで今思い出す……」

『何か言った?』

「いや気にしないでくれ」

『そう? ならそうするね』


 そしてお互い黙り込んでしまう。個人的にはデート、もといお出かけに誘うこと自体は構わないどころか、できることならまた二人でのんびりと出かけて楽しく話したりしたい。予定を聞くだけだ、と自分に言い聞かせてから意を決して声を出す。


「『あの!』」

「あっ、なんだ?」

『いや、友也くんからどうぞ?』

「そうか? なら、えっと……」

『うん』

「テスト明けって空いてるか?」

『っ! う、うん。もちろん空いてるよ? なんなら先生も言ってたけど、私もクリスマス一人だし……』

「えっ……」


 それはクリスマスに誘って欲しいという合図なのだろうか? それともつい口走ってしまっただけだろうか……聞くに聞けず、再び二人の間に沈黙が訪れる。


『えっと、テスト明けから年末までは予定はないよ?』

「そ、そうか。もし良ければだが、また二人で出かけないか? テストの次の日の16日とかに」


 そう、16日は成実の誕生日だ。自然に誘うつもりが少々早口になってしまう。後悔はしていないが、恥ずかしさと照れで顔がとても熱い。


『16日……。うん、いいよ』

「そうか! ありがとう」

『こちらこそだよ……誘ってくれてありがとう!』


 少し儚げな雰囲気を感じたが、すぐにいつも通りに戻った。何はともあれ、これで誘うことが出来た。当日は日頃の感謝を伝えて、まだ悩んでいるがちょっとしたプレゼントを渡すつもりだ。


「それじゃ、今日はありがとな。それとテストまでお世話になります」

『う、うん! 任せてね! それじゃ、またね!』

「おう、またな」


 そうして俺と成実の初めての勉強会、もとい勉強通話は幕を閉じた。




「俺はどうしたいんだろうな……」


 瑠璃に彼女と言われたこと、晃にデートに誘えと言われたこと。そんなことを思い出し、自分の気持ちに薄々気づき始めているのも理解していた。


 確かに成実は気も合うし、こんな俺とも普通に接してくれる。さらに言うと、とてつもなく美しく、成績も良い。それなのにゲームが好きで、普通の女の子らしく可愛らしい一面もある。



「でも、失うのは怖い……今の関係が壊れるかもしれないと思うと、一歩を踏み出す勇気が出ないと思う……」


 先程は薄々と言ったが、自問自答を繰り返すうちに完全に自覚してしまった。


 それでも踏み出す勇気が出ないのは、過去に大切な人を喪い、絶望に打ちひしがれ、そして今も忘れることなど出来ずに、頻繁に出張をして仕事に打ち込んでいる父を見てしまっているからだろう。


「俺はどうすればいい……?」


 目を閉じ、もう一度自分に問うてみるが答えは出ず、そのまま俺は意識を手放した。


後書きですが、少し長くなるのでスルーしてくださっても構いません。

また本日の更新分はここまでです。お読みくださった方、誠にありがとうございます!





一度だけ四部で出てきた亡き母の言葉、普段父がいない理由。そして、友也が人と積極的に関わらず、友人が少ない理由。何となく伝わったでしょうか?

今後、一章が終わる頃に登場人物紹介として背景設定などなどは投稿するつもりです。

あ、ちなみに父親は子供を置いて出張に行っていますが、定期的に家には戻っていますよ。さすがに中学生がいるのに家に戻らないのは法的にまずいでしょうし。



それから、いつもよりも長めとなってしまい申し訳ないです。書きたいことを書いていたら長くなってしまいました!


初期に考えていた進み具合と随分と変わってきてしまいました!

本当は自覚するの正月以降とかバレンタインで他の人から貰っているのを見てもやもやして少しずつって思っていたのに、ついつい勢いで何話か続けて書いていたら自覚させてしまいした。まぁ、このまま突き進むのか、一度何かを挟んでから関係が進展するのかは作者自身も大筋から逸れすぎていて分かりません!これからも継続して読んでいただきたく思います。よろしくお願いします!

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