127.文化祭初日は問題なく進み……
忙しい。そう、とても忙しいのだ。
「3番テーブル、ミートソース!」
「7番テーブル、プリンだって!」
「1番テーブル――」
開門してすぐはちらほら人が来る程度だった。しかし昼前にかけて人が増えてきて、お昼時の今はフル稼働で回している。
シフト交代も予定通りにできておらず、早朝組と朝一番の人達だけが交代した状態だ。
そして、このままだと昼食を食べる時間も確保できそうになかったため、晃達を含む一部のクラスメイトがつい先程近くの出店で適当に昼食を見繕いに行った。
そのまま忙しなく店を回していると、先程昼食を買いに行ったメンバーが帰ってきたようだ。
「友也ー、買ってきたぞ」
「朝シフトのメンバーで代わっておくから、今のうちに食べてしまってくれ」
「ありがとな晃、白雪」
そうして買い出しメンバーから料理を受け取り、数人ずつ交代しながら食事をとる。
「予想以上に忙しいね……」
「そうだな。ありがたいこととはいえ、まさかここまでとは……」
クラスメイトの配慮で小休憩は彼女と同じタイミングになったので、少し話をする。
「余ったらクラスで食べようかな、くらいに思ってたけど、このままだと閉門よりも早くに売り切れそうだな……」
「うん。今日は仕方ないけど、明日の分は少し買い足したりした方がいいかな?」
「クラス費は予備で少しだけ残ってるからそれも検討しようか。……それじゃ、そろそろ俺達も戻ろうか」
「そうだねっ! 残りもしっかり頑張ろうね!」
「おう!」
俺と成実、それから一部のクラスメイトは料理と接客の両方を担当している。午前中とは変わり、午後に俺が接客担当をしていると……
「お疲れ様っ、お兄ちゃん!」
「っ……瑠璃か?」
ちょうど食器を下げようとしている時に後ろから声がかかり、誰かと思えば自分の妹だった。
「えへへ、敵情視察に来たよっ!」
「敵情視察って……」
「あははっ、それにしても凄い混んでるね?」
「おかげさまでな。瑠璃の方はどんな感じだ?」
「私たちの方も結構繁盛はしてるけど、ここよりかは列は短いよ」
「そうか。というかその服……」
「あっ、うん! お客さんが沢山来てくれてシフトズレちゃったから、少しだけ休憩貰ってるんだよ〜。この後は少ししたらまたお店に戻るよ!」
妹の方は普通のメイド・執事喫茶をやっているらしい。
「どう? 似合ってる?」
「あぁ、もちろんだ。ちゃんと似合ってるよ」
「えへへっ、ありがとっ! って、めっちゃ引き止めちゃっててごめんね?」
「いや、気にするな。俺の方は仕事に戻るけどゆっくりしていってくれ」
「うん! 頑張ってね!」
「あぁ!」
俺は再び接客へと戻り、また忙しく動き回っていった。
そしてその後も客足は衰えず、閉門の16時よりも1時間以上早くに完売した。
「ふぅ……」
「お、お疲れ様ー……!」
「完売だな!」
「最後までめっちゃ人並んでたな……」
「だね〜……」
結局午後のシフトの人達は交代することなく最後まで駆け抜けた。ありがたいことではあるが、もう疲労困憊だ。
「委員長〜、全部売れたら売り上げってどれくらいなの〜?」
「あっ、私も気になる!」
「今から改めて確認はするけど、売り上げは十数万、利益も数万にはなると思うよ」
「おぉ!! すごっ!」
「ちょ、一ノ瀬! 今のホントに!?」
来年の文化祭に使う分の予算の確保をしなければならないため、学校側へ一部渡るがそれでも結構な額になるだろう。
ただ問題があるとすれば……。成実も同様のことを考えているのか目が合った。
「喜んでるところ悪いんだが、少しだけ問題がある」
「うん、ちょっとみんなに相談があるの!」
「問題?」
「相談?」
そう言ってクラスメイトは皆首を傾げた。
「まず、今日はありがたいことにすごく沢山の人が来てくれたな」
「そうだな!」
「休む暇ないくらい混んでたよねー」
「問題っていうのはその事なんだ」
「その事?」
「あぁ。シフトが予定通りにいかなかっただろう? そこを今いない人ともRICEで話しながら決めたいと思う」
「あっ、なるほど〜」
「私も賛成ー」
そうしてRICEのグループ機能も使いつつ、不公平が無いように決めていった。
これで1つ目の問題点が解消された。
「それでまだあるんだが、初日の今日はありがたいことに作っていたものが全て売り切れたよな」
「それって凄いことなんじゃないの〜?」
「うんっ、とても凄いことだよ! だけど、最後のシフトに入ってたみんなは見てたと思うけど、列に並んでたのに食べられなかった人が沢山いたよね?」
「なるほど……」
「確かに……明日も同じような量じゃ二の舞になるってこと?」
「そういうことだ。それで申し訳ないんだけど、今から買い出しに行ける人って……」
「私行けるよ!」
「俺も!」
全員疲れているだろうに嫌な顔をせず率先して行こうとしてくれる。
「……あぁ、ありがとう。それから問題はもう1つあるんだが、人が教室に溢れたことで内装の一部が壊れているんだ」
「この後時間がある人だけでいいから、買い出しに行く班と内装を直す班に分かれて協力して欲しいんだ!」
「そういうことなら……」
「やらない理由がないな!」
「さっさとやっちゃおうぜ!」
そうしてやる気に溢れたクラスメイトと協力して1時間ほどでクラスメイトとすべき全ての作業が終わったので、解散することになった。
「まぁ、私たちはもうちょっと残らなきゃなんだけどね〜」
「ははっ、そうだな」
売り上げ金の使い道のことなどもあり、学校側から飲食店は当日の18時までに書類に書いてか、オンライン上で金額を提出しなければならない。
今はそのための作業を2人で行っている。
「でも、全員が協力してくれたおかげで早く終わったな」
「そうだね! みんながやる気になったのも友也くんの人望のおかげだねっ」
「いやいや、それを言うなら成実のだろ?」
「本当に友也くんのおかげだと思うんだけどなぁ〜」
「はは……まぁ、お世辞として受け取っておくよ」
「む〜………って、ごめんね。手が止まってたよ」
「いや、成実も疲れてるだろうし休んでてくれよ。仕事を分担してたのに結局付き合わせてるのは俺なんだからさ」
「そういう訳にはいかないよ! 分担で言えば私の方こそ手伝って貰いっぱなしだし、それに……」
「それに?」
「……大好きな彼が頑張ってるんだから、すぐ傍にいたいんだよ……。それでもだめ、かな?」
「――ッ! ……分かった、けど無理はしないって約束してくれ」
「うん、もちろんだよ!」
実を言うと自分も早朝から動きっぱなしで疲れていたが、彼女の笑顔だけでいくらでも働ける気がする。
そんなこんなで金額の確認もしばらくして終わり、お互いを労う言葉をかけ合いながら家へと帰宅していった。
家に帰ってからの記憶はあまりちゃんと覚えてはいない。
軽めの夕食と風呂に入ったことは記憶にあるが、その後はベッドに入ってからすぐ泥のように眠りについた。
文化祭部分をまとめて書き上げたいと思ってたら思いの外時間がかかってしまい、更新が遅れて申し訳ないです。
そもそも売上とかも自分のところの文化祭を参考にって思ったんですけど、去年から蔓延してるウイルスのせいで今年の文化祭でまともに出店できなかったんですよね……自分のせいじゃないのに悔しい……
できれば大学では満足いく生活を送りたいですね。
それでは今回もありがとうございました。次回更新は2月の4日か5日にはできると思いますので、またそこでお会いしましょう。それでは〜