126.文化祭開門!
朝、目覚ましのアラーム音で目を覚ました。
目が完全には開ききらないまま手探りで目覚ましを止め、ゆっくりと立ち上がり体を伸ばす。
「んー……。ふぁ……」
連日での追い込みの作業に加え、放課後に残って委員としての仕事もあったため、少し疲れが残っているのか若干体が重く感じる。
「とりあえず顔でも洗うか……」
まだ外は暗く――朝のランニングのために早起きはしていたが――仕込みのために普段よりもさらに早く起きているので、洗面所で顔を洗ってから軽い朝食を取っているというのに欠伸が止まらない。
「ふわぁ……あ、おはよー、お兄ちゃん」
「ん? おう、おはよう瑠璃。早いな」
「もちろんだよっ。今日明日で全部を出し切るつもりでやるから、眠気なんかに負けてられないよー! ……っていうか、お兄ちゃんの方が早くに起きてたじゃん……」
「はは、まぁな……クラス委員、それから料理担当として2日とも早朝に仕込みに行くんだよ」
「あっ、うちのクラスもだよ! まぁ、私の場合は接客だけでいいって言われてるのに料理もやりたいって自分から言ったんだけどねー」
「そうだったのか。偉いな」
「えへへ〜………って! 話し込んじゃってたけど私も軽く何か食べてから行くんだった!」
妹の瑠璃は早朝なのに、元気に忙しなく動いている。若いっていいな、などと脳が考えているのはまだ寝ぼけているのか、そんな調子で朝食を食べ終えた。
改めて、今日は文化祭だ。ここ2ヶ月の間、クラス一丸となって作り上げてきた。
2日間という短い間だけど、全てを出し切るつもりで頑張る。そういう思いで当日の朝、学校へと登校した。
歩いてくる途中で目は完全に覚めており、今はもう文化祭へのやる気で充ちている。
ちなみに料理担当の方は初日と2日目でシフトは組んでも早朝の仕込みも必要なので、家が近くの人で協力してやることになっている。接客のメンバーの方も最終チェック等が必要なので普段よりは早くに来るらしい。
「一番乗りか……とりあえず準備しよう」
学校へ着くと自分たちのクラスではまだ誰もおらず、ひとまず1人でできる範囲での作業を開始する。
文化祭ということで学校は生徒に対していつもより早くに開門している。というのも、前日に作ると食中毒であったりの問題があるため基本的には事前に学校への申請を通した物で、当日に作ったものを出さなければならない。
大きな冷蔵庫のある食堂の調理場で、時間のかかる少し煮込む必要がある料理から進めていると、少しずつ生徒が集まってきた。その中には瑠璃もいる。
うちの学校は私学の、しかも近所ではかなり大きな学校なので、商店街の人たちや近いうち受験に来る人が見学しに来ることもある。
そのため売れる時はかなり売れるので、ある程度は量を作っておかなければならない。
まぁ、その点に関しては料理の方は手伝えないからと白雪と晃が詳しく過去の模擬店の売上等を調べてくれたので、それに従った量の食材を発注したため問題は無いと思う。
そういえばクラス費から装飾や食材費、安価のお皿やカラトリーセットなどを購入したのだが、売上の方の一部は2年生は打ち上げなどで使っていいらしいのだ。
妙に去年以上にやる気になっていた生徒がいたがそういうことみたいだ。過去に生徒会が文化祭への生徒のやる気を上げるためにやったことが今まで続いてるとのこと。
ちなみに2年生だけなのは、3年生は受験が近く、1年生もこの制度を入れると模擬店だけの文化祭になってしまうことが懸念されたからだと後から聞いた。
不公平が少なくなるようにお化け屋敷や縁日などでも少額必要だったり、そういう所は学校から経費を貰ってたりするらしい。
そんなこんなで調理もある程度終わったので、一旦教室へ戻ることになった。
そして教室に戻ると彼女が猫の耳を付けてメイド服に身を包んでいた……
「――え?」
「……へ? あっ、友也くん……それに皆も……」
いや、正確には今日の朝にシフトがある人全員が既にいたが、あまりの可愛さに目を奪われたのだ。事前に見たことがあってもこれは仕方がないと思う。料理担当の男子たちなんかは後ろで完全に呆けているし。
「えっと……おはよう?」
いくらかの恥ずかしさと、俺たちが呆けていたことへの困惑が入り交じったような表情の成実から声をかけられて、ようやく我に返った。
「あ、あぁ、おはよう……」
「あっ、もしかして顔とか髪に何か付いてる?」
「い、いや、そんなことはないよ。ただ……」
「ただ?」
「その……よく似合ってるな、と思ってな」
「! そ、そっか? 良かった……」
「とはいえ前にも見せてもらったから似合うのは分かってたな」
「そうだけど……当日になってちょっと不安だったから、そう言って貰えて嬉しいよ!」
そう言ってにこっと笑顔を見せてくれる彼女。不意の笑顔に思わず胸が大きく鼓動した。不意打ちはずるい。
思わず目を逸らして教室の他の方へと視線を向けると、厄介なのもとい幼なじみ組2人と目が合った。
「照れてんな?」
「照れてるね?」
「……うるさい」
和風メイドとでもいうのだろうか。そんな感じの衣装に身を包む白雪と、和服――白雪から借りたのだろう――姿の晃からニヤケ顔でからかわれる。
「というか晃こそチラチラ白雪のこと見てるのバレてるぞ」
「あ、おい……!」
「……へぇ? そうだ。晃、どうかな? 似合っているかい?」
そう言ってからかうような、でも昔から知ってるこちらから見たら少し不安と期待の織り交じったような表情で晃に問いかける白雪。
「っ! ま、まぁ、似合ってるんじゃないか?」
動揺して目を逸らしながら晃はそう答えた。そんな様子だと……
「ははっ、凄い動揺してるね? 告白してくれた時は堂々と『大好きだ! お前のことは一生離さない!』なんて言ってくれたのにね?」
「なっ! そんなこと言って――っ!?」
「ようやくこっちを見てくれたね?」
白雪は顔を近づけて、少し背の高い晃を覗き込むように見つめていた。振り返った晃の目と鼻の先に白雪の顔が来たため、さらなる動揺で固まってしまった。
「改めて……どう、かな?」
「あぁ、すっごい可愛いし似合ってるよ……」
「ふふっ、ありがとう」
なんだか朝から胸がいっぱいになってしまった。というか先程作っていた甘い物の味見は控えていたのに口の中が凄く甘い。思わず俺は、いやクラスの多くの生徒が暖かい視線を彼らへと向ける。
……ふと思ったのだが、たまに晃たちからそんな視線を向けられていたけど、俺の方はここまでじゃないよな? ない、よな……?
新たにそんな疑惑が生まれつつも内装と料理の最終チェックを終え、ようやく開門の時間となったのだった。
えー、お久しぶりでございます……
冬休みに課題と塾とに追われて投稿できなかった弱者とは私のことです……
あ、特に大切なことは書かないのであとがきは読まないでも大丈夫です! ありがとうございました!
それでまず、凄く期間が空いてしまったために文章の書き方や語尾が少し違っているかもしれません。前の話等も確認しましたが、もし違かったら優しくスルーしていただくか誤字報告を入れてもらえると助かります。
それから売上の事なのですが、以前に何か別の用途を書いたやもしれませんが、打ち上げで使えると言うのが予定してたものですので、間違えの書いてある話について心当たりがあれば教えていただけると幸いです。
最後に、今後はできる限り期間が空きすぎないように頑張りますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。
それでは今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。




