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121.半年とデート



 今日は彼女の家に来ている。というのも付き合ってから半年が明日の日曜日だから、記念のお祝いと併せて泊まりに来ないかと誘われたのだ。


「いらっしゃい友也くん!」

「あぁ、お邪魔します」


 家へ入りそのまま彼女の部屋へと通される。


 しかし提案された時は嬉しさからか二つ返事で答えてしまったが、泊まりなんだよな……。今になって変に意識してしまう自分がいる。



「その……色々とわがまま言っちゃってごめんね」


 部屋に入るなり開口一番そんなことを言われた。


「え?」

「この前言った時は良いかもって思って、友也くんも賛成してくれたけど、ちょっと勝手すぎたかもなって……」


 今まで親に甘えることも少なかった上に、誰かにしてあげることが多かった彼女だからこそ、わがままを言ったり甘えたりするのに慣れていないのだろう。

 最近になって少しずつ慣れてきたかと思ったが、こればかりはゆっくり考えを変えていくしかないな……


 そんなことを考えつつ彼女に返事をする。


「そんなことないよ。甘えてくれたり頼ってくれるのは嬉しいから、これからも遠慮せずに言ってくれ。それに難しいお願いだったらその時はちゃんと断るからさ」

「うん……ありがとっ!」

「おう」


 しかしどうして彼女は今になって改めてこんなことを考えたのだろうか……


「もしかしてだけど、緊張しているのか?」

「っ!」

「そうか、良かった……」


 そんな言葉が口をついて出ていた。


「えっ?」

「あっ、いや……なんていうか、俺も似たような物だからさ。俺ばっかり意識して緊張しているんじゃないかって思ってな」

「っ! わ、私だって凄く緊張してるし、泊まりって考えただけでいっぱいになっちゃって……」

「……誘ったこと、後悔してるか?」

「そっ、そんなことないよ! でも、ちょっと恥ずかしいし、友也くんは嫌じゃなかったかなって考えるとさっきみたいに心配になったりもするし……」

「嫌なわけないだろ? 好きな子の家に泊まりに行くんだ。緊張や嬉しさはあるけど、嫌だなんて少しも思わないよ」

「そ、そっか……」

「お、おう……」


 つい勢いで色々と言ってしまったが凄く恥ずかしい。この長い沈黙はかなり身に堪える。話題をなにか振ろうとして、彼女と同時に声を上げる。


「「あの!」」

「あ、先に言ってくれ」

「あっ、大事な話じゃないから友也くんから先に」

「いや、俺も大した話じゃないよ」

「ううん、私の方が……」

「……」

「……」

「ははっ!」

「ふふっ!」


 どうしてだろう。彼女にみっともない姿を見せたくなくて緊張するくせに、なんだかんだで彼女と話していると落ち着くし嬉しい気持ちになる。

 ……いや、答えなんてわかってるか。他の人じゃこうはいかない。彼女だからこそだろう。


「そういえば、泊まりって言っても旅行の時は同じ部屋だったな」

「うん、そうだねっ。それにお互いの部屋には何度も行ってる」

「緊張してても時間が勿体ないか」

「だね! それなら早速あれ、着てみない?」

「了解だ」



 そうして俺は一階のリビングで、彼女は部屋で買っていた衣装に着替える。今回の泊まりは半年のお祝いはもちろんのこと、これのチェックも目的のひとつだ。


 着替えを済ませて少し待っていると、彼女から部屋に入ってくれと連絡が来た。



「入るぞ」

「うん……!」


 部屋に入ると、そこにはフリフリのメイド服を着た彼女がいた。


「お、お帰りなさいませ、ご主人様っ!」

「……」


 恥ずかしそうに上目遣いでそんなことを言う彼女。思わぬ出来事に俺は唖然とする。


「と、友也くんっ、なにか反応してくれないと恥ずかしいよぅ……」

「っ!」


 彼女は追い討ちをかけるようにそう言ってくる。もう死んでもいいや、とすら一瞬思わせるほどの魅力、破壊力。


「か……」

「か?」

「可愛いし、凄い似合ってるよ」

「っ、あ、ありがとう……」


 何とか反応しないとと思い、それだけ絞り出す。未だ頭は全然回っていない。というかこんなに可愛いメイドがいる喫茶店なら少なくとも俺は通うと思う。



 しばらくして俺も成実も元に戻り、逆に執事服に身を包む俺が彼女から褒めちぎられてまたお互い照れるのは別の話だ。



「それにしても本当に付けてくれたんだな」

「あ、あはは……まだこればっかりはかなり恥ずかしいよ」


 彼女は前に言った通り、猫耳を付けている。自分の恥ずかしい過去の克服と、それから俺のために……いや、思い上がるな。俺はあくまで協力するために……


「……ありがとね、友也くん」

「ん……?」

「猫耳の事、それからもう一つのお願いの事」

「いや、俺の方こそだよ。少し特別な方がいいかもって言ったのは俺だしな」


 今回、文化祭で使う衣装は元はレンタルにしようかと考えといた。しかし、文化祭はあと二回しかないのだから記念にという理由と、来月のハロウィンの際に必要だからだ。


「それに思ったよりも安いのに、しっかりと作られていたからな」

「そうだね。ん〜、それにしても来月のデート、楽しみだなぁ!」

「はは、気が早いな」

「そうかもだけど〜!」


 彼女から先日誘われた内容だが、今日の泊まりの件と来月のハロウィンに遊園地へデートをしに行こうというものだ。


 しかも仮装していれば入場無料との事なので、レンタルでなく購入に踏切ったのだ。


「まぁ、俺も楽しみにしてるけど、今はこの時間を楽しみたいかな」

「うん、そうだね! もうちょっとしたら料理を作って、夜は二人で沢山遊んで……! まだまだ半年記念はこれからだよね!」

「あぁ、一緒に満足いくまで楽しもうか!」

「うん!」


 彼女の言うように、泊まりなんだから時間はたっぷりある。

 付き合ってから半年、今日を思い出に残る日にしたいと思う俺たちであった。




 今回もお読みいただきありがとうございますっ


 今後はできる限り週一更新目指してやっていきます。ただ、生活の方の忙しさで多少前後するかもしれませんが……


 今後も頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。それではまた次の更新でお会いしましょう!

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