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116.線香花火



『上手くいったぞ!』


 夏祭りから一夜明けて晃から連絡が来る。昨夜のうちは音沙汰が無かったため、もしかしたらなんて思ってしまったがなんてことは無かった。


『いやぁ、実感湧かなくてなぁ。寝て覚めても現実だったから本当に成功したんだって分かってな……』

「はぁ、無駄に心配かけやがって」

『あははっ、悪いな! それから協力ありがとな!』


 失敗するとは思ってなくとも心配にはなる。何はともあれ、成功して良かった。



『そういえば今回の感謝と夏の終わりに四人で思い出でも作らないかって華が言ってたんだが』

「思い出?」

『おう。華の親父さんたちの知り合いから手持ち花火を沢山貰ったらしいんだが、結局今の今まで忘れてたみたいなんだ』

「まぁ、白雪は晃の告白とか晃の課題とか色々とあったからな」

『うっ……い、いや確かに反論のしようもないが……』

「ははっ、冗談だ。白雪に限って忘れて使わなかった訳じゃないだろうし、元々誘う予定だったんじゃないか?」

『そうだな、俺もそう思う。まぁ、そういう訳だから最終日って空いてるか?』

「あぁ、問題ない」

『よし、友也も参加だ!』

『了解だよ』


 ……? 晃と電話で話しているのに白雪の声も聞こえた。まさか……


「今、白雪といるのか? それと俺もってことは成実もか?」

『ま、まぁ、そうなるのかな……?』


 歯切れの悪い晃の後ろから白雪が答える。


『やましいことなんてしてないんだから、そうだ、とハッキリと言えばいいだろう。成実には今さっき私が連絡を入れて許可を貰ったよ』

「了解だ。とりあえずまた今度な」

『あぁ、また当日に』

『ま、またな!』


 そうして通話を終える。


 確かに付き合いたては現実味もなくて浮かれた気分になったし、できるだけ一緒にいたいと思っていた。

 恐らくどちらかの家に集まって、二人で今回の件の話をしつつ仲良くしていたのだろう。


「今度会う時が楽しみだな」


 白雪は比較的落ち着いていたが、少しだけ声が高かった気がする。晃に関しては言わずもがな。


 一応俺も二人の幼馴染だ。普段と違って浮かれている姿を見るのは楽しいだろう。そうでなくても、晃の色々と悩んでた表情が晴れてスッキリしているだろうし、親友たちが嬉しそうにしているのはこちらも嬉しい。


 そんな風に思いながら、夏休みの最終日まで過ごして行った。




 そして当日。今日は白雪家で昼過ぎに集まって、日が暮れてから花火を始める。


「わぁ……! ちらっと見えただけだったけど、傍で見ると広くて綺麗なお家だね!」

「始めて見る時は俺も思ったよ。門も大きいし、敷地も凄く広い」


 約束の時間ピッタリに家に着くと、成実も同じタイミングでやって来た。


 呼び鈴を鳴らすと、白雪が出迎えてくれた。


「二人ともいらっしゃい」

「あぁ、お邪魔します」

「お邪魔しますっ」


 門をくぐって少し歩いた所に家の入口がある。ここに来るのも随分と久しぶりな気がする。



 久しぶりな俺と初めての成実のために家の中を案内してもらう。普通の一軒家が少なくとも四つは入りそうな広さだ。


「でも、こんなに広いと掃除とか大変そうだね?」

「そうだね。たまに人を雇って掃除はしてもらうよ。でも基本は私と母でどうにかしているよ」

「おぉ〜、凄いね!」

「そんなことないよ。っと、話している間に着いたね」


 話をしているうちに白雪の部屋の前へと辿り着く。


「それじゃ、夕暮れ時まではゆっくりしてくれ。私はお茶を取ってくるよ」

「あっ、私も行くよ?」

「いや、二人は友人であると同時に客人だ。手伝わせることなんてできないよ」

「そっか、分かったよっ」


 そうして白雪がお茶を取りに行き、俺と成実は部屋へと入る。



「えっ?」

「……は?」


 彼女が扉を開くなり驚きの声をあげたので、俺も覗き込むと晃が幸せそうな顔をしてぼけっとしていた。ここまで浮かれていたか……いや、俺も人のことを言えないかもしれない。


 ひとまず晃に近づいて軽く頭にチョップを落とす。


「あいたっ……って友也!? それに神崎さんも!?」

「今さっき着いたんだ」

「あっ、和泉くん。こんにちは」

「お、おう。こんにちは神崎さん」

「ん? 成実は晃に驚いたんじゃないのか?」

「へ? ……あっ、ううん。さっきはこれを見てびっくりしたんだよ」


 そう言って彼女が指を指す先には最新のPC、個人の部屋にあるには大きめなテレビ、それから棚に並べてある様々なゲーム。


「なっ……」


 それを見て、俺も思わず声を出してしまう。


「し、白雪ってこんなにゲーム好きだったか……?」

「あぁ、好きだよ」

「うおっ!?」


 突然後ろから本人の声が聞こえて、肩が跳ね上がる。


「まぁ、本格的にハマったのは中学の頃だね。友也に勧められた銀の世界と晃のやっていたFPSから入って、PCゲームはもちろんテレビゲームやハードを購入したりもしたよ」

「華はめっちゃ上手いんだぞ!」

「あはは、晃よりも操作が上手いかもね。それと当時は親や家に反抗するっていう点もあったけど、今じゃすっかり一ゲーム好きだよ」


 意外だった。というかやっていたなら一緒に遊べたかもしれなかったな。

 そんなことを考えていると成実が……打ち震えてる?


「……華ちゃん!」

「うん、何かな?」

「銀の世界やってたの!?」

「あぁ。というか一人で出来るゲームは幅広く触れてきたよ」

「そうなんだ! ち、ちなみに、いつまでやってたの?」

「一応サービスの最後までは触れていたよ」

「っ、そうなんだ!」


 今まで俺以外のプレイヤーとは会ったことが無かった成実だ。家族で出来るタイプのパーティーゲームを除けば、初めてやったゲームがこれだ。色々と思い入れがあるのだろう。



 そうして女子がゲーム談議をしている間に俺の方は晃から夏祭りで別れた後のことや付き合ってからのことを詳しく聞く。


 言いたくないことがあれば言わなくても良いとは言ったものの、途中から何かスイッチが入ったようで、すっかり惚気話へと変わっていった。

 まぁ、他のカップルが普通は何をするのかなんて知らなかったので、参考になったと思う。




 そうして日が暮れた頃、男女それぞれの会話が一段落したので本来の目的へと移る。



 パチパチッと音を立て暗くなった世界を煌びやかに照らす。


「綺麗……」


 手に持った線香花火を恍惚とした表情で見る彼女。


「あっ……消えちゃったね」

「そうだな……」


 美しい花火は決して長くは続かない。一時だけ魅せるからこそ綺麗に映るのかもしれない。


「えへへ……今度はさっきよりも長く持たせてみせるよ!」


 隣で花のような明るい笑顔を見せる彼女。月光が後ろからその姿を照らす。


「月が綺麗だな……」

「へ?」

「おや、友也。プロポーズかい?」

「え……? あ、いや、そういう訳じゃ! す、すまん、成実!」

「あっ、ううん! 大丈夫だよ!」


 俺は漱石のようにロマンチックな思考も持ち合わせていないし、今回のことも深く考えずに発言した。


 俺がいつかプロポーズをした時、彼女はなんて返してくれるのだろうか。遠回しな言い方も風情があっていいかもしれないが、それでも自分の想いはハッキリと伝えたいと思う。


「やった! さっきよりも五秒くらい伸びたよ!」


 まぁ、未来のことはその時に考えればいいか。


「ははっ、やったな」

「うんっ!」


 人生は長いが、今こうして彼女や親友たちと遊べる時間は線香花火のように短い。だからこそ、この一瞬を無駄にしないように過ごしていきたいと思った。







 人生って短いですよね。いや、書いていて本当にそう思いまして……


 一日が48時間ならとか、たくさんのお金があれば実質時間も買えるようなものではなんて俗的な考えも良くしちゃいます……笑


 何が言いたいのかと言いますと、毎日投稿どころか一日おきも厳しいかもです。できる限り隔日投稿にはしたいですが、一応不定期更新ということでご理解頂きたく思います。



 それでは今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。

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