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閑話 幼馴染と過去



 昔は自分の思いを正直に伝えることが苦手だった。


 幼い頃から家の方針で多くの習い事を受けさせられ、服装や立ち振る舞いも母親に言われるがままだった。


 当時はそれが当たり前だと思っていたし、どこの家の子もそうだと思っていた。父親からは「無理してないか?」と聞かれてもそれが無理だとは知らなかった。


 だからこそ最初は興味から見るようになったのだろう。晃といういつも明るく楽しそうにしている少年のことを。



 彼が私の視線に気付き少しずつ話をしたり小学校で遊ぶようになった。そうして彼と関わりを持ってから少し経って、互いのことを話す機会があった。


「えっ、それってつまらなくないか!?」


 その時晃からそんなことを言われたが、今思えば随分とハッキリと家の事について悪口を言われたと思う。でも何故か納得出来たし、自分もそう思ってることを理解した。



 家に帰って父母とある程度の雑談――一日の報告と言った方が正しいかもしれない――はしていたのだが、その日のことを話して、自分の家の事が普通と違うのかと正直に聞いてしまった。


 その時答えは得られず、母からその少年とは関わるなと言われた為、初めて親に反抗した。そうですか、と一言告げて立ち去った母の背には失望や怒りが含まれていたと幼いながらに感じた記憶がある。


 母が立ち去った後、父が疑問に答えてくれた。厳しい母とは裏腹に心配性で優しい父だった。


 家が昔からの名家であること、父は入婿であること、母はその血を誇りに思い娘である私にもちゃんとして欲しいと思っていること。

 理解しきれなかった部分もあるが、概ねそのような感じだ。母の考えは分かった。そして父は私の意見も尊重してくれるという。



「私は子供だけど所有物じゃない!」


 小学生にしては大人びていたし語彙もあったけど、心がまだ幼かった。感情的になってそう言い、次の日から母とは話さないようになった。


 そこから小学、中学と母とは揉めてお互い素直になれずに時間が経った。そうして高校に入った頃にようやく母と和解するに至った。


 小学生の時から晃に愚痴を言ったり、中学の頃には諭されたりと迷惑をかけっぱなしである。見た目だと私の方が真面目で大人っぽく見られるが、本当は逆だと思っている。


 ちなみに小学生の時、家の空気が悪いのを気にかけた父が気分転換にと私と二人でで少し遠出をした時に晃の家族と偶然出会い、父同士が意気投合したことで合同で旅行に行くようになった。



 話が脱線した。というか家のことなんて終わったことだし、正直どうでもいい。いつも晃が隣にいて、時に導いてくれたと言いたいだけだ。彼のおかげで私は変わった。

 それに母と和解した際に私からは自由に生きると、そして母からは家のことは気にしなくていいと許可を得ている。




 晃への想いに気付いたのは中学の頃だ。


 親と揉めていた事でピリピリしていたり、見た目が冷たい印象だった上に、初対面だと人見知りをして冷たく対応してしまう。


 そのため小学生の頃から晃と、晃がその頃から仲良くしていたもう一人のピリピリした少年の友也とだけ関わっていた。

 友也もこの頃家で色々とあり、態度が悪かったのも仕方がないが、彼と私のせいで三人は見事に孤立していた。



 つい気になって、どうしてこんな二人と関わるのかと晃に尋ねた時は、「友也とは前から友達だったし、華はいつも独りぼっちだったから話しかけただけだぞ!」なんて言われた。


 これで会話を終えれば良いものの私は続けて面倒くさくないのかと聞いた。返事は「家にもっと面倒くさくて変わった人がいるから全然!」とのこと。

 多分香織さんだろう……まぁ、今は大人っぽくなっているから昔のことは忘れよう。



 それで中学に上がり、同小の生徒もいたが別のところの生徒もいた。少し考えが大人びたり多少は受け入れたことで、私も友也も人を寄せ付けなかった雰囲気を出さなくなった。


 それによって私や晃はたまに告白されたり、関わりを持とうとする生徒も増えた。しかし私の冷たい対応や、女子の牽制のしあいなどでこの三人の輪に新たに加わる人はしばらくの間はいなかった。

 それに成実とも同じ学校だったからというのもあるだろう。私は同じクラスにならなかったから関わらなかったが、彼女とグループを作ろうとした女子も多かったらしい。



 中三に上がった頃、私だけが二人とクラスが分かれて、とある一人の女子生徒と話すようになった。プライドが高く成績も常に上位の子で、私も話し相手がいなかったから関わるようになった。


 そうしてしばらく経ってから彼女から、「和泉くんのこと好きなの?」って聞かれた。その時は違うと答えて、彼女は晃のことが好きだと言う。

 「応援しててね」なんて、今考えたら牽制のようなことも言われたけど、そんなことよりも自分の心の中に何かしこりのような物が残ったことが気になった。


 友也と以上に晃とは仲が良かったため、付き合っていると疑われたこともある。だからこそ、その女子は確認として私に話しかけたのだろう。


 放課後、晃を呼び出した後、泣きながら立ち去っている彼女の姿を見てしまう。

 この頃は三人で帰るのが常だったため残っていたのだが、偶然彼女と目が合って非難するような目を向けられる。初めての経験で、何も返事をすることが出来ずに彼女と別れた。

 それにもしかすると彼女が振られたのを見て、私は無意識のうちにホッとした表情でもしていたのかもしれない。


 翌日には彼女と話すことは無くなり、更に翌日には私が嘘をついただのと妙な噂が立っていた。クラス内では孤立したが、元々晃たちと以外とは深く関わりを持っていなかったから対して気にはしなかった。



 教室では自習をするか、自分の気持ちについて考えるかしかすることがなかった。そして、晃への気持ちに気付くのにそう時間はかからなかった。


 自覚してからはすぅっと胸が透き通る感じがした。気付かないだけで本当はずっと好きだったからかもしれない。妙にこの想いは心地が良くて、それでいて少し苦いような気もした。


 一緒にいるのが当たり前で、この気持ちもいつからそうなのか分からないくらい当たり前なものだったから気付くのが遅くなったけど、高校に上がってもなお想いは変わることもなかった。むしろどんどん強まっていくほどだ。




 自覚してから二年。晃が自覚したのはつい最近。でも二人とも何年も前から同じ気持ちだし、これからもずっと変わらないと思う。


「ははっ、でも待たせすぎだ」

「……?」


 随分と正直に物事を言えるようになったものだ。


 今隣にいる彼とは昨日までは幼馴染、そして今日からは恋人。関係が変わったとしても変わらないものもある。むしろ変わらないものの方が多い気がする。

 変わったことも、そして変わらないものも大切にして、二人でずっと一緒に歩んでいきたいと思う。



 でも、まずはこの二人の時間を楽しんで、近いうちに互いの両親に改めて報告にでもいこうか。




 モノローグ的な回なので会話はほとんど無しでした。短くまとめられない……


 ちなみに最後に互いの両親って言ってるので分かると思いますが、白雪は母とはすっかり仲良くなってます。

 それから幼馴染ですので、互いの両親と既知ですし仲も良い設定です。幼馴染……優しい幼馴染が一人欲しかった人生。



 失礼しました。

 次回、夏休み最終話です(多分)。ありがとうございました。それではまた次話もよろしくお願いします。

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