99.旅行二日目 その一
「あら、成実ちゃん。何かいい事でもあったかしら?」
「えっ?」
「なんだか昨日よりも良い顔になっているからね」
「そ、そうですか?」
「そうだね、朝も友也とどこかに行っていたようだしね」
「は、華ちゃん! それは色々と話をしただけって伝えたよね!?」
「あはは、そうだったね」
「とりあえず朝食! 朝食に行かなきゃだよ!」
「あぁ、そうだな。白雪と香織さんも落ち着いてください」
「あぁ、分かったよ。すまないね」
「ごめんなさいね」
朝から元気な二人。と言っても香織さんを起こすのに疲れている瑠璃の様子を見ると何かあったのだろう。お疲れ様、君のことは忘れないよ。
冗談はさておき、今の時間は九時ジャスト。別に少し前後しても良いが、後ろ倒しだとその分遊べる時間が減ってしまうから食堂へ向かおう。
そして朝食を食べ、朝から食べすぎると動けなくなると思ったのか、全員比較的軽めだったのですぐに部屋に戻ってきた。
「それで今日は海で遊んで、昼食べた後は観光にするんだったか?」
「そうだね。まぁ、正直遊び足りなければ海で一日使っても良いとも思っているよ。臨機応変にいこう」
「あぁ、そうだな。まぁ、昼になったら確認でいいだろ」
「そうだねっ!」
「それじゃ、早速準備して行こうかしら」
「はーい!」
そうして昨日ぶりに海へとやってくる。
「「海だー!」」
「いや、昨日も来ただろ?」
「あはは〜、そういえば言ってなかったなぁって」
「せっかく海に来たんだからな!」
先に着替えを済ませた瑠璃と晃と共に、真っ青に広がる海を眺めつつ話をしていると他の三人もやって来た。
「友也くんっ!」
「三人とも来たか。……?」
「えへへ、どうかな?」
昨日もしたやり取り。しかし、昨日と違うのは成実の姿だろうか。いや、容姿は変わらず綺麗だが水着が昨日と違う。
純白のビキニ。女の子らしく可愛らしいフリルが少しついていて、昨日やプールで着ていたものと比べると露出が多くなっているが、清楚な雰囲気があるのは本人の魅力だろう。
そして、露出が増えているということはお腹部分はもちろん胸の谷間も……ってそんなことを考えるのは良くないな。
白くキメ細やかな肌に白い水着。もちろん似合わないはずもないが、驚きと可愛さに思わず口ごもる。
「えっと、似合ってない……? もしかして好みじゃなかったかな?」
「……あ、あぁ、いや似合ってる! 凄い可愛らしいよ」
「良かったぁ……ありがとね友也くん! それに……友也くんもかっこいいよ?」
「お、おう、ありがとう」
やはりかっこいいや好きと言われるのはいつになっても慣れない。嬉しいけど照れもあって、それでいて胸の奥が温まるようなそんな感じがする。
「あっ、成実さん、すっごく可愛い!」
「ふふっ、ありがとう瑠璃ちゃん」
瑠璃がこちらに振り返って、小走りで近寄ってきた。こうして同じ白い水着で、仲良さそうにしていると姉妹にも見えるな。
全員が集まったので早速遊び始める。昨日は時間も短かったため基本的には海で泳いだりくらいしかしてなかったから、今日は思う存分したいことをしよう。
「行くぞ、友也!」
「あぁ、来い!」
「オラァァ!!」
「くっ!」
暑さと晃の熱量にあてられ、俺も若干体育会系みたいな雰囲気になりつつビーチバレーをしたり……
「あはっ、今ならお兄ちゃんは自由に動けないし、何してもいいよね?」
「おい瑠璃、何をするつもり……あ、足の裏はやめろ……! ふふっ、あははっ! ちょっ、止め、止めてくれ成実っ!」
「あ、お兄ちゃんのそんな大笑い久しぶりに見たかも!」
「私は初めて見たよ……。ごめんね友也くん、あなたの犠牲は忘れないから……!」
「成実ぃ!!」
砂浜に体を埋められ、顔と足だけ出した状態で弄ばれたり……というかこれは悪ノリが酷すぎるな。
他にも白雪が器用にもかなり大掛かりなサンドアートを作ったり、体力が有り余った様子の女子全員でブイまで行って帰るのを競泳したりと、そんなこんなで昼頃まで遊び尽くした。
「はぁ〜、楽しかったぁ」
「そうだねっ」
「それにしても相変わらず香織さんは水泳もだけど、運動神経が凄いね」
「ふふっ、そうね。まだ華ちゃんたちには負けていられないわ」
小学中学の時の旅行でも泳ぎを競ったりしたが、その時にも香織さんが一番早かった記憶がある。それにこの人は他のスポーツや勉強もできる。というかここにいる女子がハイスペック過ぎる気がするなぁ。
そして海の家で昼食を食べ、全員満足そうということで着替えて次は観光へと移る。
「それで次はどこに行くんだ?」
「最後は神社だね。御神木は二千年以上生えていて、健康や長寿、あとは子孫繁栄にもご利益あるから、夫婦でもよく来られているらしいよ、友也」
「どうして俺に振る」
「ふふっ、なるほど」
「香織さんまでなんで納得を……って、まだ夫婦なんかじゃないですよ」
「まだ……?」
「……っ! 失言です、忘れてくださいっ……」
そうしていくつかこの辺に来たら行くべきというスポットに行き、高いところにあった日が段々と傾いてきた頃に最後の場所へと向かう。
道中いじられて、俺も成実も顔を真っ赤にするなんてこともあったが無事にたどり着いた。
そういえばこの神社では縁結びや恋愛運にもご利益があった気がするが、確か白雪が行きたいって言っていたよな……いや、考えすぎか。
「わぁ、大きいね!」
「おぉ……凄いな」
長い階段を登り切った先にあったのは見上げるほどの大きな御神木。それに太さも凄まじい。
「えっと、華さん。この御神木を一周したら寿命が伸びるとか、願い事を考えながら回ると叶うとか言われているんでしたっけ?」
「そうだね。まぁ、まずは黙って回ろうか」
各々が胸の内に願い事を描きながら、御神木の周りをゆっくりと回る。
俺はというと……
『成実とずっと二人で幸せでいられますように』
七夕の時にも似たような願い事をしたが、一番の願い事を聞かれたらこれしかないからな。
そうして全員が黙りながら一周して、終わってから少しして会話が再開する。
「お兄ちゃんは何を願ったの?」
「俺は……」
「友也、ここで口にしたらご利益が薄まりそうな気がしないかい?」
「あぁ、それもそうか。すまんな瑠璃」
「ううん、何となく想像できるからいいよっ」
「……そうか」
兄のことは理解しているんだぞ、なんて書いてありそうな顔で返事をする瑠璃。まぁ、俺の願いは分かりやすいし、これは本当に分かってそうだな。
「それにしても……」
「ん? 友也くん、どうかした?」
「あぁ、いや」
それにしても白雪が止めたのは少し意外だった。道中の穿った考えに引っ張られているのかもしれないが、話の流れで自分に飛び火するのを避けるためだろうか。
それに晃も何かしっかりと願っていたようにも見えたし……
そうして、二人が胸に何かしらの思いを秘めているように見えた静岡観光は幕を閉じたのだった。
え、次で100……? あ、閑話もどきを合わせたらもう超えてましたね。
旅行編あと二話か三話で終了ですっ。それから、タイトルがその〜とかいうのはつまらない気もするので後ほど修正する可能性が高いです。
それでは今回もありがとうございました。また次回もよろしくお願いします。




