ドレミファぶ~
おならの音を自由自在に鳴らすことのできる男がいた。
おならが出続ける間だったら、簡単なメロディーが演奏できた。
素人投稿動画でも選ばれたことのある男だ。
そんな男に好きな女性ができた。同じ会社の女性だ。
おとなしく、優しい女性だった。
でも、おなら芸で有名な男は、恋愛の対象になんてなるわけないと思っていた。
そんな男が、ある日、決意をした。告白しようと思ったのだ。
まず、食事に誘う。
女性の元へ行き、「食事に行きませんか?」と言う。すると、案外すんなりとOKが出た。
そして、食事の日が来た。
その女性の私服姿は、また一段とかわいかった。
男は、今日は決めなきゃと意気込んでいた。
店も予約し、ちょっと高級な、品のあるお店だった。
静かな雰囲気で、食事も美味しかった。
いつもはおちゃらけている男も、今日は、一生懸命話しをしていた。
会話もそこそこ続いていた。
メインデッシュが来た頃だろうか、女性がそわそわしている。
どうやら、トイレに行きたいみたいだ。
男は、どうぞと言うと、女性は立ち上がった。その時だ。
「ぷ~」っと女性がおならをしてしまった。
静かな店内に響くくらいの音だ。まわりの人たちがこちらを向く。
男は、それに気づくと、得意のおなら芸で、
「ぷ~ぷぷぷ~♪」と女性のおならの音程から始まる一曲を鳴らし始めた。
静かだった店内は、ドッと笑いにつつまれる。
女性は、戸惑いながらトイレに向かった。
女性はトイレから出て、帰ってくると、こう言う。
「ごめんなさい、もう帰ろ?」
男は、気遣いでおなら芸をやったことが、逆に女性に恥ずかしい思いをさせてしまったと思い、すまないという気持ちでいっぱいだった。
そして、そのまま食事は終わった。
ふたりは、会話がなく、そのまま家に帰った。
男は家に入り、大きなため息をついた。
するとメールが鳴る。「ぷ~ぷぷ~」着信音もおならのメロディだ。
見てみると、さっきまで一緒にいた女性からだった。
さっきはごめんなさい。
あの対応、すごく嬉しかった。
また、改めて食事に行ってもらえませんか?
男は喜びに力が入った。
「ぶーー」
今度は、本当に無意識のでかいおならが出た。
喜びのおならだった。