ひい婆ちゃんと黒猫と僕
夜の黒猫
金色の目
影に潜んで
覗いている
台所の隅
冷たい床
電気は消されて
リビングだけ
明かりがもれる
笑い声
裏側にいる
黒い毛並み
ツヤツヤと
暗い天井
押し黙る
動かずにいる
時間が止まる
どこかで
サイレン
赤い光
夜の台所
息をひそめる
黒猫の
みつめる先
変わりはしない
閉められた扉
宛ても無く
呼吸を止めて
みつめている
電話の音
鳴り響く
消える音
時計の秒針
コツコツコツ
冷たい廊下
鳴り響く
振り子時計
昭和の文字
真夜中の
向かいの鏡
1時間置き
振り子の音
玄関に
首から上
鹿の剥製
トイレに子ども
そろりそろり
軋ませる
床の音
ヒンヤリと
裸足
隙間から
裸電球
明かりがもれる
和式トイレ
眩しいタイル
芳香剤
刺激臭
ぶら下がる
ハエ取り紙
ぶるっと震える
大きな音
流れる音
納屋の2階
木の梯子
天井から
床まで届く
電気のヒモ
ひい婆ちゃんが
出る…
噂話
ひとり眠る
ひい婆ちゃん
天井みつめて
目を閉じる
黒猫が
ニャーと鳴く
今夜は
ここで
ひとり眠る