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076、ある日森の中に行きました





 今日はアル様と放課後デートに来ています。今日の目的は私の好きな小説家が新作を出したのでそれを買う事です。本当は一人で買いに来るつもりだったけど、アル様も来てくれました。


「アル様、ついてきてくれてありがとうございました」

「どういたしまして。私もシルフィーと一緒に居られて嬉しいからね」

「私も嬉しいです!」


 私の用事はあっさり済んでしまったので、今は街をぶらぶらしています。そして買った本はアル様が持ってくれています。王子様に持たせていいのかなって疑問はゴミ箱に捨てて下さい。アル様は私に持たせてくれないんです。


「この前、スティラと馬で泉に行ったんだ。とても綺麗だったよ。シルフィーも今度一緒に行こうね」


 いいなぁ。私は森とかあんまり行った事ないかも。最近はお兄様とお出かけした覚えもない。だって、お兄様、気が付いたらマリーお姉様とお出かけしてるんだもん。遊んでくれないなんて拗ねるよ?でもいいもん。私はアル様が遊んでくれるもん。

 あれ、でも……


「そういえば私、馬に乗った事ないです」


 自分でもびっくり。


「え、一度も?」


 ほら。アル様も驚いてる。アル様とのお出かけはいつも馬車とか徒歩だったもんね。


「はい」

「スティラに乗せて貰った事ないの?」

「はい。危ないからって」


 お兄様にお願いした事はあったんだよ?でもね、いつも、「今日は危ないからだめ」とか「今日は学園の友人と遊びに行くからだめ」とか。………一回も乗せて貰った事なかったんです。自分で乗れるように乗馬を習いたいってお父様にお願いした事もあるんだよ?でも、ダメって言われたの。私やればできる子なのに、その機会をくれないなんてひどいと思いませんか??


「じゃあ、明日良ければ一緒に馬にのってお出かけしてみる?」


 是非!馬に乗るなんて楽しみすぎる!あ、でも……


「明日ですか…?」

「うん、あ、もしかして予定入ってた…?」

「あ、いえ。私は大丈夫なんですけど、アル様は大丈夫ですか?お仕事…」


 私は明日学園が休みだから予定はないけど、アル様はいつもお仕事が忙しい。大丈夫なのかな。


「大丈夫。その為のアランだから」

「……ふぇ~」


 アラン様、アル様がごめんなさい。アラン様はいつもアル様の無茶振りに耐えていると噂の超出来る人です。そしてその無茶振りは半分くらい私関連だと聞きました。私のせいではないけどごめんなさい。





 という訳で、馬でアル様とお出かけです。


「こんにちは、シルフィー」

「おまたせしま……、ふわぁ!!」


 アル様から動やすい服装で、という指定を受けたので、今日は比較的動きやすいドレスです。……、これはいいんです。それよりも、目の前にいる大きなお馬さん!


 アル様が来たというので、急いでお出迎えに行ったら、目の前に大きな馬がいました!


「おっきー!!」


 

「ふふ、シルフィーの横にいると余計に大きさが際立つね」

「……」


 え、それって遠回しに私の事小さいって言ってますよね?もう慣れましたけど、傷つかない訳じゃないんですよ?仕方ないけど!私が小さいのは本当だもん。同年齢の子ども達より小さいもん。


 馬の近くに来てみるとその大きさが際立つ。普段遠くで見ている時や、馬車を引いてくれている馬を見ても特に何とも思わなかったけれど、自分が馬に乗るとなると、その大きさに圧倒される。


 それにしても、アル様の馬を初めて見た。学園を卒業時にやっと自分専用の馬を貰えたと言っていたけれど。というよりは、アル様が『この子』と感じる馬となかなか出会えなかったみたい。


「私の愛馬のロットだよ」

「ろっと…」


 なんて言うんだろうね。この馬を一言で表すと『気高い』。黒い毛並みはアル様の瞳を思い浮かべるように透き通っている。とても綺麗。


 

「かっこいいねぇ……」


 ふふ、ロットがどや顔してる。私の言葉、分かってるのかな?何だか、可愛く思えてきた。


「ロット、今日一日よろしくね」


 私がそういうと、ロットは、「ブルル」って鳴いた。え、本当に私の言葉分かってる?


「ロット、かわいいねぇ」


 可愛いし、かっこいい。ロット最強!


「アル様、行こ!」


 早く行きたい!ロットに乗りたい!


「ふふ、うん。行こうか」


 アル様はさっと馬に飛び乗って上から私を見おろした。何だかこう見ると、余計に高く見える。


「シルフィー、手を」


 アル様は私に向かって手を差し出した。馬上から微笑んで手を差し出した。私の名前を呼んで手を差し出した。


 王子様か!!!


 いや、王子様なんだけど!多分、分かってくれる人いるんじゃないかな?!白馬の王子様ってこんな感じだと思う!白馬じゃないけど!かっこいい!!!


 こ、この動揺をどう表せばいいの?!


「シルフィー…?」


 ふわぁ、アル様が私をみて微笑んでる。おうじさまだぁ。


「シルフィー、怖い…?」


 あ、そっか。アル様の手を取らないと…。


「アル様…」


 アル様に向けてそっと手を差し出す。と、アル様はその手をつかんでぐっと私を持ち上げた。


「ふわぁ!」


 びっくりしたぁ!気が付いたら馬の上。アル様の前にいた。手を引張られる時、全然いたくなかった。


「大丈夫?」

「ふぇ、ちょっと怖いです……」


 下から見るのと上から見るのは全然感覚が違う。高いし、安定しない。お兄様やお父様が危ないって言った意味が分かった。確かにこれは一人では怖い。後ろからアル様が支えてくれていないと落ちそう。


「大丈夫だよ。ロットを信じて」


 そこで「自分を信じて」って言わないアル様に思わず笑ってしまいました。怖さもちょっとどこかに行きました。


「じゃあ行こうか」

「はい!」


 



 馬で走りはじめて数分。怖さは全くいなくなりました。


「アル様、高いです!速いです!ロットかっこいいです!」

「かわいいなぁ」


 安全運転っていう感じで、全然怖く無い。こんな格好いい馬がいるなんてアル様いいなぁ。


 馬車ではしるよりも圧倒的に速い感じがする。風が直接感じられるからかな?多分、ロットが本気で走ったらもっと速い。今日は私がいるから最大限にゆっくり走ってくれているんだろうね。


 ロットの優しさが身にしみます。





 気が付いたら森に入っていました。ロットはよりゆっくり走ってくれている。お陰で景色とかもゆっくり見られるし、アル様とのお話も楽しめる。


「あ、アル様、私お弁当作って来たんです!」

「本当?それは凄く楽しみだな」


 ふっふっふ。楽しみにしてくれていいですよ!実は私、料理上達したんですもん!と言ってもお菓子だけだけどね。普通の料理は微妙。だから今日のお昼はデザートです。……意味が分からない?それはお昼のお楽しみです。


 それよりも、森って涼しいね。


「アル様ずるいです」

「え、急にどうしたの?」


 ですよね。急だもんね。アル様が焦っているのが伝わってくる。


「だって、アル様、いつもこんな素敵な森に来てるんだもん」

「ご、ごめん。今度から一緒にいこうね」

「約束ですよ!」

「うん」





 なんか森にいると歌を歌いたくなるよね。そう、日本人ならだれでも知っているあの曲。


 

 あるひ もりのなか

 くまさんに であった



 でもね、私は歌いたかっただけなの。本当に出会いたかったわけじゃないのよ?なのに、私の前にはおおきなくまさん。


「みぎゃぁ!!!」


 死ぬ!これは死ぬ!


「大きいクマだね」

「ふみゃぁ!!」


 何でアル様はそんなに余裕なの?!おまけに「怖がるシルフィーかわいいね」なんて言ってる。「かわいいね」じゃないよ!死ぬ!死にます!


 ほらあ!よだれたれてる!こっち向いてる!ロックオンされてる!!


「大丈夫だよ」

「だ、大丈夫だじゃないです!」


 食べられる!あぁ、私の今回の人生は15歳でおしまいですか。まあ、前世と比べたら長く生きた方ですね。

 なんていうと思いますか?!無理無理無理!死ぬ死ぬ死ぬ!怖いものは怖い!


 こんなに怖い状況なのに、アル様が私の頭を撫でてくれる手に心底安心する。


「アル様…?」

「本当に大丈夫だから」


 あぁ、何だか、本当に大丈夫な気がしてきた。


 私が落ち着くと、アル様はさっとロットから降りた。ロットはアル様がおりても全然動かない。クマに怯えるでもなく、逃げるわけでもない。なんてかっこいいんだろう。お陰で私もロットの上から落ちる心配をしていない。


 アル様は腰に下げている剣を抜くと、クマの方を向いた。怖いのに、安心する。きっと大丈夫っていう安心感がある。


「アル様…」


 きっと大丈夫。だってアル様は小説の登場人物だもん。こんな所で死ぬわけないもん。そう考えると、私だってそう。

 なんか、前もおんなじ事を思った気がする。そうだ、私が攫われた時。あの時は一人だった。でも、今回はアル様もいるし、アル様は絶対勝てるって信じてる。なら、私は死なない。


 アル様はクマに向かって走っていき、ひと振りで倒したあぁ?!


 え、うそでしょ?あるさま、こわい。


 そ、そりゃ、『シルフィー』の事も一瞬で殺せますよね。


「大丈夫、シルフィー?」


 そ、それ私のセリフです。


「アル様、大丈夫ですか?怪我してないですか?」

「うん、大丈夫だよ」


 格好いいけど怖い私の婚約者はやっぱり最強です。






もし、少しでもこの小説をいいなぁって感じたら、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらてると、すっごく嬉しいです!

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