075、出し物は劇以外でお願いします
「そういえば、今年の生徒会の出し物は何かするんですか?」
生徒会のお仕事中だけど、気になったからルートお兄様に尋ねる。
アル様に会いたいなぁ、と、ふと思って。アル様は王子様だから忙しいもんなぁと思って。アル様は劇でも王子様だったもんなぁと思って。そういえば今年も生徒会で何かするのかなぁと思ったからこその質問だ。
「うん、今年も要望が来てるよ」
「ふぇー、今年は何をするんですか?」
劇じゃないといいなぁ。
「ふふ、劇じゃないといいなぁって顔してる」
「……」
ばれてますか。
「げ、劇じゃないですよね…?」
「ふふ」
え、笑顔が怖い。劇じゃないですよね…?え?嫌ですよ劇なんて!あんな大勢の前にでるなんて信じられない!……あ、前も言ったけど、出ないといけない時は出ますよ?でも、できれば避けたいと思うのは悪くないと思う。思うだけなら勝手だもん。
「ごめんごめん」
私をからかったルートお兄様は私に謝りながら全員に目を向ける。
「今日は丁度その話をしようと思ってたんだ」
「あらあら、シルフィーをからかうのやめてあげなさいよ。シルフィーがむくれてるわよ」
「むぅ」
「はは、ごめんて」
謝っているようで謝ってないけど、今はお仕事中なので我慢してあげます。
「今年の要望は…………、くだらないのが多いかな」
「え」
急にルートお兄様の目が怖くなった。
「ど、どうしたのルートにぃ…?」
「いや、」
ルートお兄様は眉をよせたままその要望紙をソフィアに渡す。そしてその紙をみたソフィアも……、盛大に眉をしかめた。
「劇、サイン会、握手会……、はまだまともね」
ソフィアさん。サイン会や握手会はまともですか?そして今年も劇が候補に挙がっているのですか?
「そして、シルフィー様コスプレ会」
「ふぇ?」
「シルフィー様絵画モデル会」
「へ…」
「シルフィー様花配り歩き会」
「ん?」
「シルフィー様と話そう会」
「ひ、ひぇ」
い、意味が分からない!確かにこれを見たらサイン会や握手会がまともに見えてくる。
「絶対あれだね」
「あれですね」
「あれね」
「あれよね」
「「「「シルフィー様の笑顔を守り隊」」」」
うわぁ、皆が遠い目をしてるぅ。
でも、こんなの私がメインの活動じゃん。生徒会メインじゃないじゃん。目立つじゃん!却下です。
でも、そうなると、一番まともなのが劇なんだよなぁ。でも、劇かぁ…。
「劇かぁ」
「ふふ、劇になるね。ここままだと」
「このままだと……?」
ルートお兄様がなんか黒い笑顔で笑ってるぅ。
「ねぇ、シルフィー」
「は、はい!」
「生徒会って、生徒の要望に応えることが仕事だよね」
「お、おっしゃる通りです!」
「でもね、いくら生徒会でも出来る事とそうでない事があると思わない?」
「そ、その通りです!」
「うわぁ、ルートにぃが何か思いついた顔してるぅ」
「なんかシルフィーかわいそうね」
「そうね」
リシュー、ソフィア、リリーお姉様、そう思うなら助けてください!あと、ルートお兄様、何で私に言うんですか!怖いです!
「どうすればいいと思う?」
「ふぇ?!えー、えーっと…、」
「シルフィーはできれば劇には出たくないんだよね」
「は、はい!」
「じゃあ、『シルフィー様の笑顔を守り隊』の要望に応えないとね。どうすればいいかなぁ」
「わ、私が頑張りますか…?」
「そうだね。勿論、シルフィー一人に押し付けたりしないよ。これは生徒会の出し物だからね」
「は、はい……?」
結局どんなものをするのかはまだ教えてくれないみたいです。当日のお楽しみ。……楽しみになるといいな。
「結局、劇じゃないんですよね……?」
「そうだね、劇じゃないね」
「じゃあ頑張ります!」
やる気…!は、出てこないけど頑張ります!
「ふふ、でもシルフィーの演技も見てみたかったわ」
「緊張してセリフが出てこないに一票」
「同じく」
み、皆失礼だと思います!私だってそれくらい出来るもん!小学校の劇でちゃんとセリフ言った事あるもん!
「でも、皆さんの演技も見てみたかった気持ちはあります…」
私は出来るだけやりたくないけれど、皆の演技は見てみたかった。思い出すのは5年前の劇。レオンお兄様、アル様、スティラお兄様、シリアお姉様も出てた。後、ノア様。あれ以来ノア様の話全く聞かないなぁ。私が興味なかったって事もあるんだけどね。
「そうね、たしかにあの時の劇は素敵だったものね」
「はい!」
そっか、リリーお姉様もあの時の劇を見たって言ってたもんね。アル様も本当にかっこよかったし、レオンお兄様の王様も格好よかった。そして何より素敵だったのが私のお兄様とお姉様の魔法使い!お兄様達を見ていると、私も双子だったらなぁって思っちゃう。後単純に、弟、妹が欲しい。いっつも子ども扱いばっかりされるもん。何度も言うけど私15歳なのに。
「主役のアルフォンス殿下、凄く人気だったみたいね」
ソフィアはあの時の劇は見ていなかったって言っていたけれど、やっぱり噂は聞いたみたいだね。
「うん!そうなの!すっごくすっごくかっこよかったの!」
アル様はもともと格好いいっていう事もあったけれど、主役って事も相まって余計に人気者になった。自分の婚約者が人気者ってなんか嬉しいね。アル様は凄いんだよって私が自慢して歩いて言いふらしたいかも。
「……ここは嫉妬するところじゃないの?」
「嫉妬?なんで?」
「なんでって……」
どうして皆同じような事を聞くのだろう?前にも聞かれた気がする。前はディアナお姉様だったかな。アル様が人気出るって寧ろ喜ぶところじゃないの?だって、アル様は将来王弟になるんだよ?人気があるに越したことはないと思う。レオンお兄様と対立しているなら人気が出る事は困るかもしれないけれどそうじゃない。王家の兄弟は三人とも仲良しだし、対立はしていない。レオンお兄様を支える臣下として人気があるのはとても望ましい。
「シルフィーってアルフォンス殿下の事好きなのよね?」
「うん!大好き!」
何で分かり切った事を聞かれているのだろう?
「なら、他の人に取られたら嫌って思わないの?」
「?」
とられる?それって、ヒロインであるソフィアの事?でも、今この質問をしてきているのはそのソフィアだし。他に誰に?
「アル様とられるの?」
「え、いや、あくまで可能性の話で…」
「でも、私達って婚約者だから、解消されない限りは離れることはないよ?」
「そうだけど…」
特に今回は陛下の命令って事になっているから、陛下が許可しないと婚約破棄できない。アル様が他の人を好きになっても、すぐに婚約破棄されるとは限らない。小説では私の悪行であんな事になってるけど。
「ねぇ、シルフィー……」
「なぁに?」
なんか今度は恐る恐る聞いてきた?
「アルフォンス殿下に好きになって欲しいと思う?」
「え、アル様、私の事好きって言ってくれているよ?だから私もアル様の事好きなんだもん」
アル様は私の事いっぱい抱きしめて頭を撫でてくれるから大好き。何より私の事を大好きって言ってくれるから私も大好き。
「アルフォンス殿下に愛されたいって思わないの?」
なんか、さっき以上に恐る恐る聞いてきた。でも、こんなの分かり切っているよね?
「だって、アル様が本当に私の事愛してくれる訳ないよ」
私は悪役令嬢になるつもりは一切ないけれど、アル様は王子様だもん。私だけを見ているわけにはいかない。アル様は私だけって言っていたけれど、私との間に子どもが出来なければ、側室をとらないといけなくなる。『私だけを』なんて望んでいい訳が無い。
それに、愛ってよく分からない。
もし、少しでもこの小説をいいなぁって感じたら、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらてると、すっごく嬉しいです!