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069、聞いてないです



 割愛しますが、学園に入学して1週間がたちました。毎日は平穏に過ぎていってます。勉強も凄く楽しくて学園が楽しい。学食も美味しいし。

 そして今日は初めての生徒会です。本当は授業初日から行こうと思ったんだけど、ルートお兄様とリリー様に「取り敢えず学園生活に慣れるまではいい」って言われたので、リシューもソフィアも初めての生徒会です。


「じゃあ行こう!」

「うん」

「ええ」


 授業終わりにリシューとソフィアの手を握って教室を出ようとすると、背筋がぞくっとするような感覚がした。

 

(まただ…)


 視線を感じた方を向いても誰もいない。最近、変な視線を感じる。何だか怖い。ずっと監視されているような……………。


「どうしたの?」

「悩み事?」


 急に歩みを止めた私を不審に思ったのか、二人は私に問いかけた。


「ううん、何でもない!行こ!」


 一体何なんだろう。授業初日の翌日からだから、かれこれ6日目。はぁ、早く収まらないかなぁ。折角学園に入学して楽しい学園生活を送れると思ったのに……。いや、学園生活は楽しいのよ?リシューとソフィアもいるし、変に絡まれる事もないし。でも、たまにさっきみたいな視線を感じる。多分、生徒の中に見ている人が居ると思うんだけどなぁ。視線を感じる場所はばらばら。今みたいに教室だったり、食堂だったり。どんな人が犯人か全く見当もつかない。





「いらっしゃい」

「待ってたわ」


 生徒会室に入った私達を待っていたのは、机に大量の書類を積み重ねたルートお兄様とリリー様だった。


「えっと、こんにちは。その、書類は…?」


 挨拶も大事だけど、どっちかというと書類に目がいってしまう。これは私だけじゃないようで、リシューとソフィアも書類を見ている。


「あぁ、気付いちゃった?」


 ルートお兄様がとぼけたように言うけれど、気が付かない方がどうかしていると思います。だって、机の上の書類の量凄いもん。この二人に限って、仕事をせずに遊んでいたっていう事は無いと思うから、単純に仕事量が多いのだろう。いや、多すぎだ。


「これっていつまでですか?」


 だよねソフィア。私もそれは気になったよ。流石に今日じゃないと思うけど、期限はそう長くないだろう。なら早めに取り掛からないと。本当に終わらなくなっちゃう。多分、数日あれば終わるだろうし。


「え、今日だよ?」

「………」


 ん?


「ねぇ、リシュー、ソフィア。私疲れているのかな?幻聴が聞こえてきたよ?」

「偶然だね。僕も同じ事考えてた」

「奇遇ね。私もよ」


「今日だよ」

「今日よ」


 ルートお兄様に加えてリリー様まで残酷な現実を突きつけてきた。


「ちょっ!それ急がないと間に合わないですよね?!」

「うん。だから今日3人とも来てくれて助かったよ」

「~~っ!」


 色々と言いたい事はある。5人じゃ今日中に終わる訳ないとか、それなら昨日とかも呼んでくれたら来たのにとか、何で2人はそんなに余裕な表情をしているのだとか。諸々と。


 でも、取り敢えずは


「やりましょう」

「うん…」

「そうだね…」


 やるしかないよね。


 初生徒会でこの仕事量は予想しいていなかった。私達はまだ学園の事あまり知らないから処理出来る書類とそうでない書類がある。と、ここは流石ルートお兄様とリリー様で、私達が処理出来るものとそうでないものを分けてくれていたみたい。分けられた所でその書類の多さは変わらないけどね。

 私達が処理出来るものをルートお兄様とリリー様にやり方を聞きながら処理していく。

 ……流石は慣れているルートお兄様とリリー様。処理スピードが凄かったことをここに報告しておきます。









「お、おわりましたぁ……」


 結果。終わりました。本当に奇跡だと思う。ずっと書類にサインしていた右手が痛い。リシューとソフィアも手をぶらぶらさせていたから私と同じ状態だと思う。だから、


「お疲れ様。いやぁ、助かったよ」

「本当、流石ね。頼りになるわぁ」


 こんなに余裕な二人がおかしいと思う。


「あの、もしかしてなんですけど…、これっていつもの事なんですか?」


 これがいつもの事だったら、私達の手が死んじゃう……。だって、お二人ともこの書類の量に慣れた様子だったし。


「あぁ、大丈夫だよ。新学期が始まったからちょっと立て込んでてね」

「そうよ、普段はそんなに書類仕事はないから大丈夫よ」


 よ、よかったぁ。思わず、リシューとソフィアと一緒に安堵のため息を吐く。思わず生徒会をやめようかと思ったよ…。




 

 そして私は忘れてはいませんよ!


「ルートお兄様!ご褒美が欲しいです!」


 そう、ルートお兄様はここでは「あれ」が出てくるって言いましたよね!私は今日この為に来たんですから!…………間違えました、一番の目的は生徒会のお仕事です。


「ふふ、大丈夫だよ。ちゃんと用意してるから。……リリーが」


 まさかのリリー様に丸投げ?!でも、貰えるものは貰いますよ!


「リリーさま、ごほーび…」


 おねだりは心得ておりますよ!今までに何度もやって来たからね!


「あらあらあら……」


 でも、反応は予想と違いました。リリー様は「あらあら」と呟いてそのまま私を抱きしめて…、お持ち帰りをしようとしたぁ?!


 あれ、何が起こったの?!私、いつの間にかリリー様に抱き上げられていますよ?抱っこされていますよ?確かに私は小さいけれど、そんなに軽々と抱き上げられるなんて驚き!


「あ、あの?」

「シルフィー、あなた、私の妹にならない?」

「ふぇ?」


 い、妹?


「だって、こんなに可愛い妹がいたら毎日幸せだと思わなくて?」

「そ、そうですね?」


 あ、あれ?これは本気でお持ち帰りされる?!


「る、ルートお兄様!たすけて!」


 思わず涙目でルートお兄様を見上げる。だってここで帰ったらご褒美をもらえない!


「ふぇ、ごほうび……」


 ケーキの為に頑張ったのに……。


「リリー、シルフィーが泣きそうだからおろしてあげて。そして至急ケーキを」


 ルートお兄様、すき。ルートお兄様の言葉でリリー様はしぶしぶ私を下した。そして、私達にごほうびという名のケーキを用意してくれる。リリー様があーんをしてくれようとしたけれど、流石に恥ずかしい。私、15歳。子どもじゃない。


「けーき!」


 やっと食べれるよ!朝からずっとこれを楽しみにしてたんだから!生徒会=ケーキなんだよ、私の中では!


「ふにゅう、しあわせ」


 ケーキはめちゃうまうま。



「…っ!!」


 ケーキを食べて幸せな気持ちでいたのに、またあの怖いのが来た。視線の方を向いても、リリー様、ソフィア、リシューしかいない。


「ふぇ…」


 なんか、本当に怖くなってきた。


「どうしたの?」


 私が声をあげたのにルートお兄様が気付いてくれた。この人達には言っても大丈夫だよね…?


「あの、」


 でも、もしかして私の命を狙っているような人だったら?私は公爵家の令嬢で第二王子の婚約者。それが面白くない人だってきっと沢山いると思う。もし、危険な事だったらこの人たちを巻き込んでもいいのかな。

 いや、アル様だって周りを頼れって言ってたもんね。


「あのね、最近、ずっと誰かに見られている気がして……」

「誰かに?」

「何だか、怖くて…」


 ここまで言って皆の顔を見る。

 私は、一大決心をして打ち明けたのに、何故か皆はそっと目をそらした。


「あの…?」


 リシューもルートお兄様ですら目を合わせてくれない。


「もしかして、私が知らない方がいいことですか…?」


 敵対勢力をおびき出す為の罠に私が使われているのかもしれない。それなら皆がこんな表情をしている事に納得がいく。


「いや、まぁ、いつかは知る事になるか…」

「そうね。知るなら早い方がいいかしら…」


 ルートお兄様とリリー様が真剣な表情でそういう。


「私もそう思います。シルフィーには話しておいた方がいいと思います。シルフィーの為に」

「それに、知らない事でこんなに怖がってますし…」

 

 リシューもソフィアもお二人の意見に同意する。本当に私だけが知らなくて皆知っている。またまた疎外感。


「教えてください!私ばかり守られているのは嫌です!」


 私だって、皆のおもりになるだけじゃなくて役に立ちたい。作戦を知らせておいてくれた方が私だって動きやすい。


「そうだな、シルフィーには知っておいて貰おう」


 ルートお兄様が腕を組んで私に向き直る。


「はい」


 覚悟はできてます。


「今までの視線の正体は、恐らく…、いや、確実にこの学園の生徒だ」

「はい」


 やっぱりね。何となくそんな気はしていた。この学園は部外者がそう簡単には入れる所じゃない。入れても生徒は基本制服を着ているから、それを着ていない部外者は目立ってしまう。


「そして、その背後にいるのが…」


 背後にいるのが…?


「『シルフィー様の笑顔を守り隊』だ」






 …………………………………ん?






 幻聴かな?やっぱり今日は耳の調子がおかしいみたい。ルートお兄様の口から変な言葉が聞こえてきた。


「えーと、背後にいる黒幕って誰でしたっけ?」


 ちゃんともう一度聞こう。


「『シルフィー様の笑顔を守り隊』だ」

「……」


 あれ?聞き間違いじゃない?


「あ、あの。『シルフィー様の笑顔を守り隊』って何ですか…?」


 何だか自分で言ってて恥ずかしい。しかも様って……、


「シルフィーのファンクラブよ」


 今度はリリー様が答えてくれる。


「ふあんくらぶ…?」


 え、何それ?!


「ちょ、え、あの…っ!えー?!」


 もう言葉が出てこない!


「そ、ソフィアとリシューも知ってたの?」

「知ってるわよ」

「知ってるよ」


 え、ソフィアたちも知ってるの?!


「だって、私も会員だもの」

「僕も」


 …………………?!


「な、え?!」


「聞いてないよ?!」

「だって言ってないからね」

「言ってないものね」


 言って?!友達が自分のファンクラブに知らないうちに入ってるなんて驚き以外の何ものでもない。


「だ、誰がこんなのを?!」

「あー、立ち上げようとしたのは一般生徒だけど、許可したのは僕だ」

 

 ルートお兄様?!まずは私に許可をとって下さい!


「本当はソフィア嬢が会長になるはずだったんだが、まとめる都合で僕が会長になった」


 ?!


 生徒会長が私のファンクラブ会長も兼任してるの?!


「あ、副会長は私よ」


 り、リリー様?!あなたもですか?!


「解散!今すぐ解散してくださいそんなの!」

「無理よ?」

「うん。無理だろうね」

「うーん、難しいわね」

「難しいね」

「な、なんで?!」

「だって発足から何日経ったと思ってるの?」


 何日って1週間くらいでしょ?


「そう。1週間『も』たってるんだよ」


 1週間「しか」でしょ!


「この学園の何人が『シルフィー様の笑顔を守り隊』に入ってると思ってるの?」

「え、まだ数人くらいでしょ?」

「え、何言ってんの?この学園の8割は入ってるよ?」


 8割…?って何人だ…?少なくとも1000人は超えてるって事?


 な、何でそんな事に?!


「シルフィーのせいだよ?シルフィーがやらかすから」

「え、私何もしてない!普通に過ごしてただけ!」


「普通ねぇ…」

「なにその目!」


 リシューひどい!出来の悪い妹を見る目を向けてくる。


「だってさ、背が低くて板書が届かなくてひょこひょこするし、平気でソフィアに抱き着いて『好き』とかいうし、美味しいケーキ食べながら腑抜けた顔するし」


 それもういっそ悪口では?!


「それに、」


 まだあるの?!も、もうお腹いっぱいです。今は突っ込み疲れたのでいいです……。


 とりあえずその後、何度も解散の要求をしてみたけれど、聞き入れてくれませんでした。だって、将来アル様のお嫁さんになるんだから味方は多い方がいいとか言われたら、「あ、そうなんだ」ってなるよね?!

 つまりは、どういうことかというと、丸め込まれました……。



 もう、好きにして下さい……。


 そういえば、アル様はこの事知ってるのかな?あ、報告済み?そうですか……。






もしよければ☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえると嬉しいです!作者のやる気に繋がります!

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