066、私は頑張ります
ケーキ屋さんでソフィアと別れた私とリシューは、行きと同じように一緒の馬車に乗って帰る事になっている。何故なら、リシューのお姉様のディアナお姉様が私のお家で私達を待っていてくれるから。それに、マリーお姉様が私の家にいるからね。でも、リシューと一緒に帰るのは多分今日まで。流石に明日からは別々かな。
「またソフィアも誘って遊びに行きたいなぁ」
「そうだね。次は買い物とかでも楽しいかも」
リシューの凄い所が、こうやって私達が好きそうなものを提案して、嫌な顔せずに付き合ってくれる所。
普通男性って、女性の買い物は面倒臭いものじゃないの?あ、でも、そういえばアル様もお出かけした時に私が好きそうな所に連れて行ってくれる。……この世界の男性って凄い。私の周りが素敵な男性が多いだけかな?
「楽しかったね!」
「そうだね。流石に生徒会は驚いたけど」
「ねー」
忙しくなりそうだなぁ。暇よりは全然いいけれど。この先の学園生活も楽しくなりそう!クラスだって、皆一緒だったし、ソフィアとも友達になれたし。
「ふふ、良かった」
「リシュー?」
わくわくしていた私を見て、リシューは安堵のため息を吐いていた。
「シルフィー、行きの馬車では、少し緊張してたでしょ?でも、今は本当に楽しいって顔してるから」
どうして、私の幼馴染はこんなに優しいのだろう。リシューだって少しは緊張していたはずなのに、私の事ばっかり気にしてくれる。この事だけじゃない。いくらアル様に頼まれたからって、リシューはずっと私と一緒に居る事なんかない。だって、アル様は優しいから、リシューを私に縛り付ける様な言い方はしていないと思う。でも、リシューはリシューの意思で私と一緒に居てくれる。リシューにだって友達がいるだろうに。
「リシュー、ありがとう」
こんな素敵な幼馴染が幸せになれるように、私は何が出来るのだろうか。
馬車から降りてリシューと一緒に玄関に入っていく。恐らく皆はサロンで話しているだろうから、玄関は素通りして、まっすぐサロンに向かう。
ちゃんと手を握って私を連れて行ってくれるリシュー、流石です。決して、はしゃいでいる私が転ばないように繋いでいるとは思いたくない。私子どもじゃないもん。
予想通り、サロンに近づいていくと皆の話し声が聞こえてきた。
「ただいま帰りました!」
「お邪魔します」
案の定、皆はここでお話をしていた。リシューと一緒にバーンと扉を開けて、挨拶をすると、皆驚いたような顔をした後、私達を出迎えてくれた。ごめんなさい。ノックしようと思ったんだけど、忘れていました。……嘘です。驚かせたかったんです。え、私の足音で何となく来ているのには気付いていた?……ちゃんと静かに歩きます。
「おかえりなさい」
一番近くにいたお姉様とマリーお姉様が抱きしめてくれる。
「はぅ…」
しあわせ。シリアお姉様とマリーお姉様はどちらも綺麗に美しく成長しました。いいにおいもします。二人の旦那様が羨ましいです。そして、私の顔の目のお前にはお二人のお胸が……。く、悔しくないもん!わ、私だって2人みたいに大きくなるもん!…ぐすん。
私がうっとりしている間、スティラお兄様と、トーリお兄様、レオンお兄様はリシューの頭を撫でまわしていたとさ。だって、リシューかわいいもんね。撫でたくなる気持ちわかります。
そういえば、うっとりしてたけど、トーリお兄様、シリアお姉様、ディアナお姉様、レオンお兄様も来てくれていたんだね。わざわざどうしたんだろう。もしかして、私とリシューの制服姿を見る為に…?ま、まさかね。その為だけに来るほど暇じゃないよね?……そうだよね?
「おかえり」
そして最後に出迎えてくれたのはアル様だった。奥の方に居たから気付かなかった!ごめんなさい!
アル様が私に向けて手を広げる。これはぎゅーの合図ですね!思わず走り寄ってアル様にぎゅーって抱き着く。これはもう条件反射です。洗脳済みです。
そしてそんな私を抱き上げて椅子に座る。私?勿論、アル様のお膝の上ですよ?いつものことです。
「アル様!わざわざもう一度来てくれたんですか?!」
それならもっと早く帰って来たのに…。はぅう…、頭なでなでが追加された。幸せ。
「うん、朝にシルフィーの制服姿を目に焼き付けれなかったから」
……ふぇ、朝のあれじゃダメなんですか?ほら、皆も「えー…」っていう顔でアル様を見てますよ?!
「というのは半分冗談で」
本当に冗談ですか…?しかも、半分は本当なんですね。
「学園はどうかなと思って。朝はずいぶん緊張していたみたいだから」
それでわざわざきてくれたんだ。
「とっても、楽しいです!明日からもきっと楽しい気がします!」
「ふふ、それなら良かった」
おでこにちゅってされる。今の流れでなんで?ってなるけど、でも、嬉しいからおでこを抑えてふにゃって笑っちゃう。
「へへ」
「「「んん゛っ!」」」
アル様だけじゃなくて色んな所から変な音が聞こえたけど気にしない。
「あ、そういえば、私、初めて女の子のお友達が出来ました!」
「あぁ、ソフィア嬢だったかな?」
あれ、私、ソフィアの名前言ったかな?
「適性検査の後、友達になりたがっていたってリシュハルトから聞いてね」
なるほど!リシューってば口が軽いんだから!いいけど!
「とっても素敵な子なんですよ!今日も一緒にケーキを食べに行ったのです!」
「楽しかったみたいで良かったね」
「はい!」
アル様に良かったねって言って貰えると嬉しい。これからの学園楽しくなるといいな。アル様とソフィアの接触が無ければ私は断罪される事もないだろうし、接触しても、私が断罪される未来は今の所思い浮かばない。
これからが楽しみで笑っていた私は、
「前もってソフィア嬢の調査をしていたからね。シルフィー友達は誰でもいい訳じゃない。シルフィーに悪影響を与える相手は排除しないと」
と、アル様が小さな声で呟いたのには気付かなかった。
とりあえず、これからの私は、アル様の婚約者としてふさわしいように、今まで以上に頑張らないと!勉強は勿論、音楽とか美術とかも!センスを磨かないと!あ、そうなってくるとファッションセンスもだ!「シルフィー様、センスないですね」なんて言われたらへこむ。泣きたくなる。
「アル様、私頑張りますね!」
「う、うん?よく分からないけど、ほどほどにね?」
「はい!」
「あーあ、また変な方に暴走してるなぁ」
ってお兄様が呟いたけれど、知りません!私は頑張るんです。
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