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059、現実は現実です



 馬車の中。


「それにしても、シルフィー可愛いね。制服、凄く似合ってるよ」

「ありがとう!リシューもすっごく格好いい!」

「ありがとう」


 そう、リシューは凄く格好よくなった。5年前までは、まだ可愛いくて、平均的な身長だったのに、今はもう私より頭一つ分以上大きい。だから、もう可愛いなんて言えない。可愛いけれど、格好いいが勝ってしまう。


 そうして素直に「可愛い」って言うまっすぐな性格は変わっていない。それはとても嬉しい。でも、格好良くて、誉め言葉がスラスラと出てくる。……モテない訳が無いよね。

 こんなリシューと一緒に居たら、私恨みをかってしまわない?私大丈夫?でも、私には今の所リシューしか友達がいない。リシューに離れていかれたら、本当に困る。


「リシューと一緒のクラスだといいなぁ」


 本当に、切実に思う。


「大丈夫だよ。シルフィーは頭がいいから。シルフィーがAクラスじゃなかったら、僕も絶対にAクラスじゃないから。」

「ほんとう?」

「うん」


 リシューがそう言ってくれるなら心底安心した。確かに人生二回目の私より頭のいいリシューだけれど、成績は私もそこまでリシューと離れている訳では無い。寧ろ、計算問題は私の方が得意なくらい。少し安心。……問題は私がテストで失敗をしていないかだけれど、これは今考えても仕方がない。

 それはそうと、


「ねぇ、リシュー」

「なぁに?」

「お友達が出来ても、私にもちゃんと構ってね…」


 そう、私の心配はここ。リシューは私と違ってお茶会とかでお友達を既に沢山作っている。つまり、私よりはるかにコミュニケーション能力が高い。知り合いだってクラスに絶対一人はいる。結果、私ぼっち!

 ちゃんとお友達作れるかな。自分から知らない人に話しかけるのってあんまり得意じゃないのに。


「そこは心配ないよ」

「ふぇ?」

「あらゆる方面からシルフィーの事を頼まれているから」

「あ、あらゆる方面?」

「うん」


 それって、アル様とかお兄様達の事?……私15歳なのに!リシューと同い年なのに!皆私の事子ども扱いしてる!

 確かに身長はあんまり大きくならなかったけれど!初めての学園なんて緊張しすぎて手が震えそうだけれど!

 

 子どもじゃないのに!


「リシューは私の事、まだ子どもだと思う…?」

「うん」


 !!


 え!まさかの即答!


「シルフィーは子どもだよ。今はそれでいいよ。シルフィーは折角周りに頼れる人が沢山いるんだから、今は子どもでいいよ。いずれ、嫌でも大人にならないといけない日が来るから」

「リシュー……」


 ………ん?


 いいこと言っているけれど、結局リシューも私を子ども扱いしているってことね!同い年の癖に!


「むぅ」

「むくれないの」


 そう言ってリシューは私の頭をゆっくりと撫でる。こんなのでごまかされないよ!こんなので…………、今回は許してあげてもいいかな!今回だけだよ!





 リシューのエスコートで馬車を降りると、目の前にはもう学園があった。


「ふわぁ!!リシュー、学園だよ!」

「そうだね、何だか不思議な気分」

「ね!」


 私とリシューは去年まで学園祭にお邪魔していたから、学園自体は構造とか結構知っているのだけれど、自分が通うとなったらまた不思議な感覚だ。上手く表現できないけれど、一番近い感情と言えばわくわくかな?


 とりあえず必死にきょろきょろしたい気持ちを抑える。私は公爵令嬢。アル様の婚約者。恥はさらせない。ちょっと興奮と緊張でリシューの手を握る強さが強くなったのは許してね。


 いつか、学園の門のあたりに桜の木が満開の状態なのを見れるといいなぁ。









 リシューと一緒に門の中へ進んでいくと、大きい掲示板が見えてきた。そこに貼ってあったのは試験の結果に伴うクラスの振分けでした。





 クラス発表は以下のようでした!







Aクラス


1位 リシュハルト・ミル・クロード

2位 ソフィア・リア・ライト―ル

3位 シルフィー・ミル・フィオーネ






「あ!一緒!」

「うん、やっぱりね」


 私とリシューは予想通り一緒のクラスでした。一緒って思っていてもこうやってクラスを見ると安心。


 というか3位!私が3位!試験を受けた人全員の中で!予想より順位が上のほうで驚いた!私ってこんなに頭が良かったの?!そして更なる驚きがソフィア様も頭がいいという事!リシューは何となく私より上って分かっていたけれど、ソフィア様も同じくらい頭がいい!

 ……人生2回目の私より!ソフィア様もまさかの転生者??……まさかね。


 でも、人生2回目の私より、はるかに頭のいい人生1回目の人がいるという事が分かりました。


「ソフィア様も一緒……!」

「良かったね、シルフィー友達になりたいって言っていたもんね」

「うん!」

 

 リシューが言っているのは10歳の時の適正検査の時の事だろう。あの時はソフィア様が光の魔力じゃないという事が分かったからそう思っていた。この5年でソフィア様が光の魔力持ちとして有名になる事は無かった。つまり、私がソフィア様と友達になっても支障は全くないという事だ。


 ソフィア様は光の魔力を持っていないのだろうか。私はここが小説の世界だから、ヒロインはその設定どおり光の魔力を持っていると思っていた。けれど、今私が生きているこの世界と小説とではどことなく違う気がしてくる。

 第一に、私。私がシルフィーに転生した事で、私のまわりの環境は大きく変わっていると思う。悪役令嬢だった小説の私は、15歳の入学以前で恐らく性格は悪役令嬢だった。

 第二に、婚約の事。私とアル様は婚約しているが、これはアル様の方が提案したみたいだった。小説本来なら陛下がこの婚約を提案、決定をしていた。アル様が提案なんてしていなかったと思う。それに現実では小説より時期も早かったし。

 そしてヒロイン。私も詳しくは覚えていないけれど、小説では、15歳の学園入学時までにはヒロインが光の魔力を持っている事は公表されていた。しかし、今回は未だに発表されていない。だからこそ、もしかしたら、ソフィア様は小説と違って光の魔力を持っていないのかもしれない。


 

 兎に角は、私はソフィア様をいじめるつもりなんてこれっぽっちも無いから、変に身構える必要もないと思う。友達になっても問題ない。それに、仲がいい方がもし何かあっても疑われにくい。


 ヒロインと悪役令嬢の仲が良くなるのって、何だか面白い。

 

 私は転生したと自覚した当初、アル様にもソフィア様にも関わりたくないと思っていた。でも、今は違う。私なりにシルフィーである事を受け入れて、私らしいシルフィーになろうと思った。それでもまだ、自分が悪役令嬢だとか、ソフィア様がヒロインだとか考えてしまうけれどね。あと、小説の事も考えてしまう。


「お友達になれるといいな」

「なれるよ。いつものシルフィーみたいに話しかけたら大丈夫。大体の人は落ちるから」

「……」


 いつもみたいとは?落ちるとは?

 

 とりあえず、頑張って話しかけてみようかなと思います。





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