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058、制服は可愛いです


 シルフィー・ミルフィオーネ、15歳です。もう一度言います、15歳です!


 ということは、シナリオが始まる時期です。学園に通う時期です。

 私は今日からナイア学園の生徒になります。


 この5年間は本当に濃い5年だった。まず、お姉様とトーリお兄様、ディアナお姉様とレオンお兄様が結婚した。二組は結婚した時期はバラバラだったけれど、それぞれで結婚して皆幸せそう。

 お姉様がトーリお兄様の所にお嫁に行ってしまって、少しさびしい。けど、お姉様は頻繁に帰ってきてくれるから、思ったより寂しくないかも。その代わりと言っては何だけれど、お兄様のお嫁さんのマリーお姉様が沢山遊んでくれる。

 お兄様とマリーお姉様の結婚式はもうすぐ。マリーお姉様は今、嫁入りの為にしばらくフィオーネ公爵家で暮らしている。マリーお姉様が私のお家で暮らすようになってから、リシューも頻繁にフィオーネ公爵家を訪ねてくれるようになった。リシューはマリーお姉様が大好きだったから、さびしいんだね、きっと。本人は恥ずかしがって否定しているけれど、ここにきている時点で否定しきれていない。私とリシュー、マリーお姉様、お兄様が揃ったら、いつも楽しいお話。最近は主に学園のお話。私とリシューはこれから通うから、聞いておきたいことが沢山あったからね。たまにそこにアル様も交ざって、脱線してしまうけれど、楽しい。

 

 



 さて、前置きはこのへんにして、お着替えですよ。





 今日は学園の入学式なのです!この季節は桜がとても綺麗で大好きな季節。あの時のお城に植えられていた桜はまだ一部だけれど、この国にも浸透してきている。とても綺麗で人気はあるけれど、やっぱりまだ数が揃っていないから国中には行き届かない。こればっかりは仕方がない。


 ナイア学園は、才能さえあれば平民でも通える。才能というより学力かな。平民の為に開かれた受験があって、そこで良い成績を出せば通えるようになっている。けれど、平民は貴族のように勉強する機会が多くある訳では無い。勉強に馴染みがない中、良い成績をたたきだせる人なんて極わずかだ。つまり、実質ナイア学園は貴族学校。貴族社会の縮図だ。


 そして、貴族も入学前には試験がある。貴族の場合は入学できるかどうかを試験する訳では無い。貴族の場合は、クラスを決める為の試験だ。平民の子の成績も合わせて成績が良かった順にAクラスから振り分けられる。

 その成績及びクラスは当日までは分からない。当日のクラス発表の時に発表される。でも、中には早く確認したいからと学園を脅すものや、更に言うと、成績に自信が無いけれど良いクラスに居たいという人はお金を積んでAクラスに移動しようとする。勿論そんな事は出来ない。だって、この学園のトップは国王陛下だから。つまり、不正が出来る訳が無い。

 

 クラスは一年の終わりに実力テストがあるから、それによってクラスの再編成がある。つまり、クラスが上がる人もいれば、下がる人もいるのだ。学園に入学したからと言って、のんびりしてもいられない。


 でも、私は自信ありますよ!なんたって、前世は小学5年生までの勉強はやっていたから、基礎は出来ていた。しかもこの世界の学力水準は低い。今回の試験は日本でいうと年齢的に高校受験みたいなものだけれど、学力的には小学生でも解けるような問題。つまり、私にとっては余裕!基礎が出来ていた私は家庭教師からは天才扱いされていたもんね!でも、そんな私より、リシューの方がはるかに頭がよかったのは納得いかない!……もしかしてリシューも人生2回目?なんて疑いたくなるのも仕方が無いと思う。


 勉強は得意だけれど、歴史が大変だったな。だって日本で覚えたものが全く役に立たないんだもん。一から覚えないといけない。後は魔法学も大変。初めての学びが沢山あったけれど、やっぱり楽しかったな。





「お嬢様、制服をお持ちしました」


 アンナが私の制服を持って来てくれる。


「ありがとう」


 アンナから制服を受け取り袖を通す。


 ナイア学園の制服は可愛い。基本は赤いチェックのワンピースに、黒の上着。そして赤いリボン。この制服は指定されているけれど、カスタムは自由。基本の型を崩し過ぎなければ多少はいじっても大丈夫。

 試験が終わってからお兄様とお姉様と一緒に注文しに行った。私はこのままの制服が可愛いと思ったからいじらずに行こうと思ったけれど、お兄様とお姉様曰く、多少はいじるのがマナーらしい。でも、センスが無いから、結局お兄様とお姉様にお任せした。お姉様なんかお嫁に行っていたのに、わざわざ帰ってきてくれた。もう本当に優しくて好き。


 



 そうして出来上がった私の制服は、スカートや袖の襟にふわふわのフリルが付いており、胸元のリボンには、宝石があしらわれている。思ったより派手にならず、しかも可愛いというお兄様達の素晴らしいセンスが伺える。


「さすがお嬢様、お似合いです」


 アンナも絶賛してくれている。自分でもよく似合っていると思う。


「髪型はどうしましょう?」

「うーん」


 二つぐくりだと子どもっぽいし、でも下ろしているよりはアップの方が制服に似合っていると思う。

 小説のシルフィーってどんな髪型していたっけ?……、あ、カチューシャか。髪の毛を下ろしてカチューシャを着けていた気がする。


 ……だめだ、決めきれない。


「アンナが選んでくれる?」

「私が決めてもいいのですか?でしたらサイドを編み込んで後ろは下ろす方がお嬢様に似合うと思いますよ」


 流石アンナ。私はアップの方がいいかなと思ったけれど、普段から私の髪型をしてくれているアンナが言うのだから間違いない。




 

 そうして小説の挿絵で出てきた悪役令嬢のシルフィーとは少し髪型が違う私が出来上がりました。





「お父様―!お着替え終わりましたよー!」


 着替えが終わった私は、アンナと一緒にお父様たちが待っているサロンに向かう。なんと、朝早くからアル様も来てくれているそうなのだ。学園をもう卒業しているのに、わざわざ来てくれるなんて。婚約者だからお見送りに来てくれたのかな?あと、お姉様も来てくれるみたい。


 大きい声を出したのに、誰も私を怒る気配はない。こうやって甘やかされて悪役令嬢が出来上がっていくのかな。


「失礼します!」


 コンコンとノックを鳴らしながら、返事も待たないうちにサロンに入る。


「シルフィー、お邪魔して……!」


 私の視界に一番に飛び込んできたのはアル様でした。でも、アル様は、私に何か言いかけて途中で止めてしまった。


「アル様?」


 アル様に呼びかけても、全然返事が無い。


「て…」


 て?手がどうかしたのだろうか?アル様が何を伝えたいのか分からない。助けを求めようと、お父様、お母様、お兄様、お姉様、マリーお姉様の方を見ると、いつものように顔を手で覆って蹲っている。あ、いつものやつですね。もう見慣れましたよ。


 という訳で家族には頼れそうにありません。


「あるさまー?」


 て、と言ったきりとしないアル様に話しかける。だって、ロバート達の方を向いても、首を横に振るだけで、誰も私を助けてくれない。つまり、私がアル様に話しかけるしかない。


「て…」

「て?」


 アル様の語彙が「て」のみになりました。


「て、天使が舞い降りた……っ!」


 とうとうアル様はそう呟いて崩れ落ちてしまった。


 「て」って、手じゃなくて天使の「て」だったんだ。流石に思いつかなかったな。それに、このセリフって、7年くらい前にお父様も言ってなかったっけ?

 今日は天使みたいな恰好じゃなくてただの制服なのに。多少フリルとかはついて可愛くなってはいるけれど。アル様は学園に通っていたから見慣れているはずなのにね。あ、これはお兄様にも当てはまるか。お姉様に至っては自分で着ていたしね。


 それに、天使と妖精とか今までに沢山言われてきたから、これくらいじゃ動揺しない自分がいる。本当にこういうのに慣れて悪役令嬢が出来上がっていくんだね。

 ……気をつけよう。





 その後、やや遅れてやってきたお兄様の侍従のロビンが素早く状況を察してくれ、お兄様を復活させてくれた。方法に関しては黙秘します。取り合えず、怖かったとだけ言っておきます。

 でもアル様が復活しない事には学校にいけない。リシューと一緒に行こうと約束しているから、そろそろお迎えに来ると思うんだけれど。

 お兄様に相談すると、


「殿下の耳元で猫の鳴き声をしてみろ」


 とのアドバイスをいただきました。正直意味が分からない。何で猫?お兄様、猫が好きなの?うちにはディーがいるのに…。


 理由を聞いても、お兄様は「いいから、やってみろ。俺を信じろ」としか言わない。


 ……他に方法も無いからここはお兄様を信じます。


「アル様…」


 耳元で呼びかけてみても反応が無い。目を開けたまま気絶しているみたい。


「……にゃぁ」


 あ、これ思ったより恥ずかしい!というか、本当になんで猫の鳴き声なの。


「ふふっ」


 あ、お兄様、肩を震わせて笑っている?!お兄様がやれって言ったのに!……もしかして冗談だったの?私が本当にやるとは思わなかったって?

 もう!お兄様の意地悪!ほら、マリーお姉様の方を見てよ!お兄様の事呆れた目線で見てるよ!


 肝心のアル様は…、え、無表情?!さっきまでの放心状態はどこにいったの?!もしかしてなんかダメだった?!……猫の鳴き声変だった?それとも無表情になっちゃうくらい可愛くなかった…?


「可愛い可愛い。え、何。私のシルフィー、可愛すぎて怖いんだけれど。無理。学園になんて通わせられない。これは攫われる。間違いない。寧ろ私がさらう。閉じ込めて、誰にも合わせないように閉じ込めて、一生可愛がる。」


「……」


 ふぇー!なんかアル様が怖いよ!ノーリアクションと同じくらい怖いよ!何だか壊れたみたいにぶつぶつ言ってる!王子様に壊れたとか不敬だけれど、本当にアル様が壊れた!

 私、アル様に攫われるの?閉じ込められるの?それこそもう飼い猫だよ!?そして、心のどこかでアル様になら飼われてもいいかもと思い始めている自分が一番怖い!





 その数分後、リシューが迎えに来てくれたので、私はリシューと一緒に学園に向かいました。……アル様は私のお家でまだ放心していると思います。だって、迎えに来たリシューが、「……大体状況は分かったよ。アルにぃがシルフィーの可愛さにやられたんだね。シルフィーは可愛いからこうなるのも分かるけれど、取り敢えず放っておこう」って言ったんだもん。私は悪くない。









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