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006、お姉様とお歌を歌います

「おねーしゃま、おはようございます……」

「おはよう。あらあら、まだ眠そうね。」

「あい……」


 私は目を擦りながらお姉様に挨拶をする。お兄様の膝ではなくお姉様の膝の上で目を覚ました私は少し混乱していた。


「おにーしゃまは?」

「スティラなら、家庭教師が来たから授業中よ。私達が帰って来た時に、ちょうどテイラーが来たから、私がスティラと変わったの。」


 お兄様、今日は家庭教師が来る日だったのか……。起こしてくれても良かったのに……。でも、お姉様にお膝貸してくれたお礼は言わないと。


「おねーしゃま、おひざかしてくれてありがとうございます!」

「……っ! まぁまぁまぁ! なんて可愛いのかしら! そんな風にお礼言われたら嬉しすぎて心が溶けそうだわっ!」


 お姉様がそう言いながら、ギューッと抱きしめてくる。でも、心が溶けそうっていう表現はよく分からないなぁ。もしかして、お姉様の心がドロドロに溶けちゃうの?


「おねーしゃま……、こころとけちゃうの?」

「あ、違うのよ! それくらい幸せってこと! 本当には溶けないから泣かないで~っ!」


 それでも一度、心というか、心臓が溶けてしまう想像をしたら怖くなってきて、自然と涙が溢れてくる。やっぱり心が体に影響されてるなぁ、なんてどこか冷静な自分もいた。


「よしよし、泣かないでシルフィー。そうだわ、お歌を歌ってあげましょう」

「おうた?」

「ええ、随分前に外国からこの国に伝わってきた歌なんだけど、私は大好きなの」

「なんていううたですか?」

「『 空の月夜 』っていう曲だった気がするわ。」


 『 空の月夜 』?聞いたことがない。そもそも、この世界の曲は正直、子守唄と手遊び歌しか知らない。たぶんこの世界独自の歌な気がする。だって、前世では聞いたことない曲名だったから。


 お姉様は歌い出す。


~♪

夜の空に 美しく光る月

星がきらめく 暗闇

鳥が飛び立つ 夜明け前


~♪


「これ…」


 知ってる。


 お姉様が歌ったのは日本の曲だった。


『空の月夜』

 

 小さい時、少しだけ覚えている前世の父と母が、眠る時に歌ってくれた曲。養護施設のお昼のチャイムの曲。教室で、皆で練習した曲。どうしてこの世界にこの曲があるのか。他にも日本の曲があるのか。知りたいことは沢山あった。どうして曲名を忘れていたんだろう。大好きな歌なのに。


 でも今は、ただ、嬉しかった。もう一度この曲が聞けて。そう思ったら、余計に涙が止まらなくなった。それほど、この曲は私にとって馴染みの深い曲だった。


「もしかして、この曲、嫌いだった?」

「……っ! ち、ちがいます! おねーしゃまのうたごえが、とってもすてきだっただけです!」


 お姉様の歌声は本当に素敵だった。


「それなら、次はシルフィーも一緒に歌ってみましょう」

「わたしもですか?」

「ええ、そうすれば、もっと元気になるわ」


 そう言って、お姉様は再び歌い出す。お姉様が歌うのに合わせて私も口ずさむ。歌っていくうちに、やっぱりこの曲好きだなぁ、と感じる。幸せが体から溢れてくる気持ちになる。


『とっても素敵な歌!』

『素敵!』

『私達も一緒に歌うわ!』

『歌う!』


 突然可愛らしい声が聞こえた。子どものような声だった。ついお姉様と顔を合わせる。


「おねーしゃま、こえがきこえました……」

「ええ、なんの声かしら?」


 辺りを見渡しても誰かがいる気配はない。


『ここだよ、ここ!』

『すぐそばだよ!』

『ここ!』

『ちがうよ、人間にはボク達の姿は見えないんだよ!』

『あ、そっか!』

『えっと、ちょっと待ってね!』


 たくさんの声が聞こえた。男の子の声も女の子の声も聞こえる。けれど、姿は見えない。ちょっと待ってねって言われたけど、どういうことだろう。でも、気になるのは、人間にはボク達の姿は見えないという言葉。人間には見えない。つまり幽霊ということ……?そう考えたら背筋がゾワーっとなった。


『できたー!』


 その声が聞こえてきたのと、目の前に青、赤、水色、茶、緑の服を着た手のひらサイズの小さな子達が現れたのは同時だった。


「ふわあ!!!」

「あらあら」


 私の驚いた声とは違って、お姉様は冷静だった。


『あのね、ボク達、本当は人間の前にはめったに姿を現さないんだよ!』

『でもね、シルフィーは特別なんだよ!』

『そうそう!とってもキレイな魔力を持っているからね!』

『あとね、シルフィーのお姉ちゃんも素敵なの!』

『とっても素敵な歌声を持ってるの!』


 驚きすぎて声も出ない。えっと、何だろう、この可愛い子達は。こんなの、小説の中に出てきたっけ?あ、お姉様も気に入られている。流石お姉様。


『シルフィー、びっくりしてるの!』


 いや、びっくりしますよ?だって、小さな人なんて初めて見たから。さすがファンタジーの世界。


「シルフィー、大丈夫?」

「え、えーと、だいじょうぶじゃないです…」

「この子達は精霊よ」

「精霊?」


 精霊ってあれだよね。ファンタジー小説とかによく出てくるやつ。確かに小さいから精霊っぽいかも。でもどちらかというと、妖精みたい。

 

『そうだよ!』


「おねーしゃまはおどろかないのですか?」

「ええ、私は精霊を見たことがあるのよ。」

「え、でも、にんげんにはみえないって……」

「あぁ、あれはね、魔力の循環を終えていない人には見えないってことよ。循環を終えるか、大人になれば自然と見えるようになるわ。といっても、皆が見える訳ではなくて、一定以上の魔力を持っていて、精霊に認められて親和性が高い人しか見えないけれどね」


 おぉ、意外と条件が多いですね。


「じゃあ、おねーしゃまは、じゅんかんをおえたのですか?」

「ええ、5歳の時に。」


 5歳かぁ。あと、2年もある。あれ、どうして私には見えるのだろう。魔力の循環を終えていないのに。


『あのね、ボク達がシルフィーの魔力を循環しといたよ!』


 え?循環ってなに?循環ってそんな簡単に出来るものなの?


「まぁ、良かったわね、シルフィー。あれはだいたい1日かかるのよ。自分の中で魔力を循環させるのってとっても大変なのよ。長いし、気分も悪くなるし。でも、あれをやらないと魔法を使えないからやるしかないんだけどね」

「え、えー……」


 もうついていけない。お姉様はどうしてそんなに冷静なのですか。


『ねぇねぇ!さっきのお歌うたってよ!』

『あ、ボクももう1回聞きたい!』

『ボクも!』


「いいわよ。じゃあ、今度は皆で歌いましょうか。」


『いいの!やったぁ!』


 だから、どうして、お姉様はそんなに順応が早いのですか。


「じゃあ、シルフィーも歌いましょう!」

「は、はい」


 とりあえず、今は身を流れに任せましょう。それから皆で何度も歌ったため、最後あたりには少し声が枯れていた。

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