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054、アンナとお買い物です


 今日は街に来ています。でも、今日この場にアル様はいません。一緒にお出かけをしてくれているのはメイドのアンナです。


「お嬢様、何を贈りたいか決まりましたか?」

「うーん。まだ……」


 実は、今日街に来た目的はアル様にプレゼントを贈る為です。アル様はいつも私に贈り物をしてくれるけれど(主にケーキとかケーキとかケーキとか……)、私は何も返せていない。アル様が見返りを求めてやっている訳ではないと分かってはいるけれど、それでも私もアル様に何かしたい。

 本当は一人で来ようと思ったんだけれど、私はこれでも公爵令嬢。誰もそんなことを許してくれませんでした。だから今日はアンナと、隠れて護衛が何人かついてきてくれているみたい。





「あちらに雑貨屋がありますよ?」

「じゃあ、そこに行ってみる!」


 私もアンナもよく街に遊びに来ている。だから街には詳しくなってきているから迷うことなく目的のお店をピックアップしてそこへ向かう。


 その雑貨屋とは私にとってはとってもお馴染みのお店。そう、かつて「るぅ」を売っていたお店です。


「こんにちは~!」


 このお店はよく来ているからおじさんとはすっかりお友達。だから、いつものように元気よく入っていく。


「おや、お嬢さん。いらっしゃい」

「おじさん、お邪魔します!」


 正直、お店じゃなくてお友達のお家に遊びに来た感覚。


「お嬢さん、うさぎの新作入っているよ」

「え、本当ですか?!」


 おじさんはるぅと同じ種類の雑貨が入荷したらいつも取り置きをしておいてくれる。最初は取り置きとかしていなかったんだけれど、私がいつもるぅ関連の雑貨ばかり買うからおじさんが私の事を覚えてくれたみたい。


「ほら」


 おじさんがそう言って出してくれたものはるぅのマグカップ。


「かわいい!」


 色は勿論るぅの色。それで下の方が膨らんでいるような可愛い形。取手はふんわりハート形。カップの縁からぴょこんとうさ耳が伸びている。これはもう、買うしかない!


「おじさん、これください!」

「はいよ」


 ふふ。今日は帰ってからこのカップでミルクティーを飲もう。きっといつも以上に幸せになれる。


 ……は、ダメだ!ふわふわしている場合じゃない!


「お代はいつものように、公爵家へ請求してください」


 ってアンナがおじさんに言ってくれているのを聞きながら、私はアル様に何をあげるかを真剣に考えていた。





 ……だめだ。思いつかない。正直、この雑貨屋さんは女の子向けで、アル様みたいな15歳の男の子が貰ったら嬉しそうなものは少ない。


 このお店で探すのは難しいだろう。でも一応、


「おじさん、おじさんなら年下の女の子に何を貰ったら嬉しいですか?」


 おじさんにも聞いてみよう。


「ん?お嬢さんは誰かにプレゼントをするのか?うーん、何歳くらいだ?」

「15歳です!」

「15、か……」


 おじさんは腕を組んでうなって、お店を見渡す。


「……流石に、この店に15歳の男の子が欲しがるようなものはないかもなぁ。」

「ですよね……」


「15歳の男の子って言ったら、文房具とかはどうだ?いくらあっても困らんだろう?」


 確かに、アル様は今学園に通っているから、ペンやノートなどはいくらあっても困らないだろう。でも、アル様は王族だから、それなりにいいものを普段から使っていて馴染んでいると思う。私がプレゼントしたら、アル様は喜んで使てくれるかもしれないけれど、こんな所で気を使わせたくない。

 それに、せっかくだから、もっと残っていくものを送りたい。アル様がいつも使えるような何かがあればいいんだけれど。


 とりあえず、街をぶらぶらして考えてみることにする。


「そうか、役に立てなくて済まないな」

「いえ、ありがとうございました!」





「うーん。やっぱり難しいですね」

「ねー」


 他に何があるかな…。腕時計とかも持っていた気がするし、香水……、はあげたくない。だって、アル様の匂いが好きなんだもん。アル様は私が香水をあげたら、どんな匂いでもきっと使ってくれる。多分頻繁に。でも、そんな事をしたら、アル様自身の匂いを嗅ぐ機会が減ってしまう。香水は好きだけれど、アル様の匂いが減るのは許せない。

 ……やっぱり何だか変態みたい。でも好きなんだから仕方がない。





「ケーキを作られるのは?」

「あ、その手もあるね!」


 それなら、私にもできる!手作りって思いがこもっているし、アル様も喜んでくれそう!アル様も、私が作ったお菓子をいつも喜んでくれるし!

 ……そう、いつも喜んでくれる。


「やっぱり、他のにしようかな」


 いつも喜んでくれるけれど、それではやっぱり特別感が無い。アル様は喜んでくれると思うけれど、私が満足出来ない。そう、これは私のただの自己満足。


「せっかく考えてくれたのに、ごめんね?」

「ふふ。いいんですよ?それだけお嬢様が真剣に考えているという事ですもの。私も嬉しいです」


 アンナのこの言葉を聞いて、私の心は何故かふわっと幸せになった。


「ありがとう、アンナ。」




 

 でも、正直ネタ切れです。送るより貰う方が多い貴族の令嬢が、男性への贈り物のレパートリーを多く持つはずがない。


「ふぇ~、何がいいのかわからないよぅ」


 アンナも一緒になって色々とアイデアを出してくれるけれど、これ!というものが無い。





「……殿下の御髪は長いですから、髪紐なんていかがですか?」

「髪紐?」


 髪紐ってアル様が髪を結ぶときに使っている紐だよね?この世界には髪ゴムなんてないから私も時々それを使って髪を結んでいる。


「それいい!」


 髪紐ならいつでもつけて貰えるし、実用性もある。アル様が使っている髪紐ってよく色とかが変わっていて、こだわりはないみたいだから送っても気を使わせることはないだろう。


 そうと決まれば、


「アンナ、髪紐ってどこで売っているの?」

「……髪紐を買われるのですか?」

「え、買ったらだめなの?」

「そうでは無くて、お嬢様が作られてはいかがですか?」

「え、私が?」


 というか、髪紐って作れるの?それすら知らなかったよ?


「絹糸を編んで作れるのですよ。私は作った事がありますから、よろしければお教えしますよ?一緒に作りましょう。」

「!!」


 アンナ、なんて素敵な提案を!


「それなら、お嬢様の好きな色の髪紐を送る事が出来ますし、殿下もお喜びになられると思いますよ?」


 そんな事言われたら、やるしかないよね!でも、好きな色に出来るなら私は、あの色がいい。


「あのね、金と青がいいの」


 私の髪と瞳の色。


「まぁ、ふふ。婚約者ですものね。」


 この世界では自分の色を相手に送る事は婚約者として相手を認めているという事になる。それを考えれば私達はもうお互いの色をしたペンダントを持っているけれど、そういったものはいくら送っても大丈夫だろう。

 何より日本人は基本皆黒髪だからこういう事をして楽しめないんだよね。出来る時にするべし!


 

 という訳で、アンナと手芸店に行って無事、金と青の絹糸を入手しました。




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