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045、知らない人が沢山います


 リシューと二人でどこに行くか悩んでいたら、通りすがりの生徒さんからパンフレットをもらえました。それを見ながら、まずはお兄様、お姉様のクラスに行く事にしました。





「お嬢さん、僕達がこの学園を案内しましょうか?」


 お嬢さんって私の事?急に声をかけられて、思わず足を止めて振り向いた。そこにいたのは知らない男の人が3人だった。


「リシュー、知ってる人?」

「ううん、知らない」


 こそっとリシューに聞いてみたけれど、リシューもどうやらこの3人を知らないみたいだ。


「二人ともここの生徒に知り合いがいるの?連れて行ってあげようか?俺、顔広いから多分知ってると思うよ?」

「えっと、あの…」


 今度は別の人に話かけられてしまった。正直断りたい。だって、知らない人に案内されるなんて緊張するし。それになんだか、自信があるみただけれど、なんだか頭悪そう…。


「あれ?二人とも服お揃い?めっちゃ可愛いじゃん!」


 また別の人に話しかけられてしまった。うぅ。お揃いを可愛いって言ってくれるのは嬉しいんだけれど、素直に喜べないのは何でだろう。この人達が知らない人だからかな?それとも、この人達が本気でそう思っていないような感じがするからかな?……多分、どっちもだ。

 

「どこ行きたいの?連れていくよ?」


 ふぇ~。この人たちしつこいね、リシュー。


「あの、リシューともう行くところ決めてるので……」

「あ、そうなの?じゃあ、そこまで一緒に行くよ?」

「え…」


 ど、どうしよう、リシュー!


「私はリシューと二人がいいのに……」


 思わずぼそっと呟いてしまった。3人に聞こえていないといいけれど……、と思って3人を見てみる。どうやら聞こえていないみたいだ。いや、この場合聞こえてくれた方がよかったのかな?

 でも、私の手を握っていたリシューにはしっかりと聞こえたみたいだ。私の手を握る力が少し強くなったから。


 でも知らない人と一緒にいるのは絶対いや。


「申し訳ありませんが案内は結構です。」

「は?」


 リシューがはっきりと断ってくれたけれど、その言葉を聞いた男子生徒さん3人は目を鋭くしてリシューを睨む。ひぇ、5歳以上年上の人とにらみ合っているなんて、リシュー凄い。


「こっちは親切で言っているんだぞ。断るのか?」

「はい。案内は結構です。」

「このっ!」


 うわぁ!お、怒ってるよ!大丈夫なのリシュー?!


「伯爵家の次男である俺の誘いを断っていいと思っているのか?!」


 え、この人たち貴族だったの?全然貴族っぽく見えなかった。だこの学園にいるっていう事は少なくとも15歳以上なのに、リシューの方がずっと大人っぽいよ。しかも、貴族って身分を自分からひけらかしたらいけないんじゃないの?……なんかこの人たち単純に格好悪い。頭悪そう。

 それに身分なら……、


「私はクロード公爵家長男、リシュハルト。そして、こちらの令嬢はフィオーネ公爵家次女、シルフィーです。何か言いたいことはありますか?」


 私達の方が上だしね。相手が身分をひけらかしたのだから、こっちだって言いますよ!…言ったのリシューだけれどね!


「クロード公爵家って、第一王子の婚約者の…!」


 それはディアナお姉様の事だね。そう言えば、さっき見かけたきりだな。もう少し学園内をうろうろしていたら会えるかな?


「それにフィオーネ公爵家の次女って言ったら双子と第二王子が散々言ってた、あの……!」

「や、やべぇ…!」

「こ、殺されるぞ!」


 えっと…、お兄様とお姉様とアル様は私の事を皆にどう言っていたのですか?何を話したのですか?まさか、私の恥ずかしい話とかしていないですよね?ただの妹自慢ならいいのだけれど。いや、よくないけど。

 あと、殺されるって誰に?


 私がぼんやりそんな事を考えているうちに3人の生徒さんはいなくなっていた。


「年下だと思ってなめてかかるからだよ」

「リシュー、かっこいい!ありがとう!」

「まぁね。これくらいしないと僕がアルにぃに殺されるからね」


 あれ、今度はリシューが殺されちゃうの?





 それから、他にも時々、「案内するよ」って言ってくれる親切な男子生徒さんが何人かいたのですが、人見知りとしては遠慮したいです。リシューが断ってくれてよかったです。そもそもパンフレットがあるから、案内とかいらないしね。その為のパンフレットだもん。





 リシューと一緒にお兄様、お姉様のクラスに向かっていると、


「ぬいぐるみを作ってみませんか?お子様でも簡単にお作りできますよ~」


 って言って子ども連れの親子を勧誘しているお姉さんがいた。


「リシュー、見て!あっちでぬいぐるみ作れるんだって!」


 ふらふらとそっちの方に行こうとすると、リシューと繋いでいる手をぎゅっと引っ張られた。


「だめ。まずはスティラにぃとシリアねぇの所に行くんでしょ?迷子になるよ?」

「それはや!」

「それに二人とも、シルフィーが来るの楽しみにしているんじゃないの?来なかったら悲しむよ?」

「それはもっとだめぇ」

「じゃあ、行こうか」

「うん!」

 

 何だか私、本当に子どもみたい…?もっとしっかりしないと。





「お兄様とお姉様のクラスはこの上?」

「うん。階段上がってすぐの所みたいだよ。」


 この学校は貴族が沢山通っているだけあって、本当に広い。広いのはいいのだけれど、移動が凄く大変。





 沢山歩いてやっとお兄様とお姉様の教室についた。教室の入り口には大きく『喫茶店』と書かれていた。という事は、ここはケーキとかケーキとかケーキが出てくるって事だね!


「シルフィー開けていい?」


 目をきらきらさせていたであろう私の頭を撫でながらリシューは聞いてくれる。私達同い年…。


「うん!」


 リシューがそっと扉を開いてくれる。すると、


「「いらっしゃいませ」」


 声をそろえたお兄様とお姉様がお出迎えしてくれた。


「お兄様、お姉様!」

「シルフィー来てくれたのね!」

「お姉様!とっても素敵です!」


 お姉様はロング丈のメイド服を着ていた。


「よく来たな、シルフィー、リシュハルト。」

「お兄様、とーってもかっこいいです!」


 お兄様は燕尾服を着ていた。二人ともとーっても素敵。私、この二人の妹って本当に贅沢過ぎない?

 あと、私ってシスコン、ブラコンなのかもしれない。というか、自分で言うのもなんだけれど、こんなに仲の良い兄妹っていないんじゃないかな?お兄様とお姉様はたまに喧嘩するけれど、お兄様はお姉様の事も大好きだし。

 そんな二人に可愛がられている私って本当に贅沢。


 …なんだか、私も妹か弟が欲しくなってきた。私より下の年齢の子って身近にいないんだよなぁ。


「ねぇ、リシュー」

「なぁに、シルフィー?」

「リシュー、私の弟か妹にならない?」

「質問が唐突過ぎて意味がよく分からないし、性別を無視してるし、もっとも、僕とシルフィーだとどう考えてもシルフィーの方が妹だと思うよ?同い年だけど。それに、シルフィーって末っ子気質じゃん。姉とか向いてないよ?諦めな?」

「えー」


 下が欲しかったのにぃ。リシューが悉く希望をつぶしてくる…。


「シルフィーはスティラにぃとシリアねぇの妹なんだから諦めよう?もし別の家で生まれてたら二人の妹じゃなかったんだよ?」

「ふぇ~、それはやぁ…!」

「じゃあ、このまま妹でもいいよね?」

「うん!お兄様とお姉様がいないのはいや!」


 何だか話をずらされた気がしないでもないけれど、いいや。二人の妹で幸せなことは変わらないし。


「「流石リシュハルト」」


 とお兄様とお姉様は感動していたけれど、一体何の事だろう?





「スティラ、その子達は?」

「あぁ、俺の妹、シルフィーと、クロード公爵家の長男、リシュハルトだ。」

「へぇ!二人とも可愛いな!」

「だろう!」


 私達の会話に突如入ってきたのは燕尾服を着た人だった。お兄様の事を『スティラ』と呼ぶその人はお兄様のクラスメイトだろう。赤い髪の人は元気そうで、明るいっていうイメージがする。どうやらその通りのようだけれど。


 でも、リシューの事を当然のように可愛いって言っている。普段から言っている私は人の事言えないけれど、男の子に可愛いって嬉しくないんじゃいの?……あ、私に言われ過ぎて慣れているって?それは良かった。……良かった、のかな?


「今日は二人とも洋服お揃いなんだな。可愛いじゃん!これあれだろ、絶対スティラとシリアの趣味だろ?」


 あ、お姉様の事も呼び捨てなんだね。でも、この人の『可愛い』はさっきまでの人と違って全然嫌じゃない。寧ろ嬉しい。でもね、これはお兄様とお姉様だけじゃないんだよ。


「ふっふっふ!残念!これはシルフィーの婚約者であるアルフォンス様の趣味も入ってるのよ!」


 って、私とリシューを後ろから抱きしめながらお姉様がどや顔する。


「ま、まじかぁ。殿下の溺愛って本当だったのか」

「いやいやいや。こんなの溺愛の内に入らないって。実際はもっとひどいから、あの人」


 アル様は別に酷くないよ??優しいよ??


 よく分からない。







 


「ここに来るまで大変だったでしょう?何もなかった?」


 ようやく席に案内された私とリシューにお姉様が問いかけた。


「何か…」


 あれはあったというのだろうか?


「知らない人だけど、お兄様とお姉様の知り合いにいっぱい話しかけられたくらいかなぁ。」


 でもあれは結局全部リシューが対処してくれたから、私はぼーっとしていただけだし。


「「話しかけられた??」」


 ふぁっ!さっきまでお客さんに接客していたお兄様までいつの間にかこっちに来ていた!しかも二人とも目が笑ってないよぅ!


「り、リシュー…」


 助けて…!と目線を送ると、頷いてくれた。流石リシュー。こういう時に裏切らない所、好きだよ。


「伯爵家の次男を筆頭に、シルフィーを案内しようと話かけてきた男子生徒が多数いたけれど、二人とアルにぃの話を出したら皆逃げていったよ?」

「そう、なら良かったわ。」

「普段から散々シルフィーの事を自慢して脅しておいてよかったな。」

「とりあえず、そいつらには話し合いが必要ね」

「そうだな」


 ……色々突っ込みたいけれど、自慢って?脅すって?いったい何を話したのですか?悪口は言っていないと信じています。


「でもね、ぜーんぶリシューが何とかしてくれました!年上の人にズバッと言っていたからすっごく恰好良かったです!」


 私がそういうと、お兄様達がよくやったってリシューの頭を撫でた。あ、リシューが嬉しそうにちょっと照れている。リシュー、可愛いなぁ。

 いいな、わたしの頭もなでなでして~!





「でも、それより大変な事が沢山あってさ…」


 お兄様達からのなでなでが終わってから急にリシューが深刻な表情でお兄様とお姉様の方を見る。大変な事って何かあったかな?話かけられたこと以外に何もなかったと思うけれど?


「『レオンにぃがいる』と知ればそっちにふらーっと、『ぬいぐるみを作れる』と聞いたらそっちにふらーっと寄っていき、『うさぎの着ぐるみ』にもふらーっと寄っていき、更には『あっちにアル様がいる気がする』ってふらーっと来た道を戻ろうとする。あげくの果てには何もない所で転びそうになるし、あれ、僕今3歳児と来てるっけ?って何度も自分に問いかけたもん。」


 みぎゃぁ!!ばらさないでぇ!!!


「「……」」


お兄様とお姉様が揃ってこっちを見てくるけれど、私は何も言えない。私そんなにふらふらしていないって思っていたけれど、全部身に覚えがある。


「で、でも!ちゃんとリシューと手繋いでたもん!」


 そう、だから怒られる理由はない!


「なんか、それ、手を繋ぐって言うか犬のリードみたいだな」


 お兄様が失礼な事言った!私犬じゃないもん!それにうちのディーは賢いからリードなんてしないし!……あれ、私ディー以下?!


「アルにぃが『今日のシルフィーはいつも以上にふわふわしている』って言っていたけれど、その意味を身をもって実感したよ。」


 …お願いリシュー、もう何も言わないで!私が悪かったから!


「まぁ、それがシルフィーの可愛い所だから」


 ってお兄様がフォローしてくれるけれど、今回ばかりはそれが刺さる……。

 ごめんなさい。今度からちゃんと周りを見ます。そして、私の面倒を見てくれたリシュー、リシューに忠告をしてくれたアル様本当にありがとうございます。





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