043、お友達が欲しいです
あの適性検査は不思議だった。ソフィア様は本当に私と同じ風の適性を持っているの?
でも、あの光を放った水晶が間違っているとは思えない。
ソフィア様も、検査が終わった時に「風の属性で間違いない」って言う表情していたからもしかしたら、本当に風の属性なのかもしれない。でも、そうしたらこの物語のヒロインの役割って何だろう?というか、この小説で、ヒロインが光の魔法を使って何かしたかな?実際に、今は光の精霊もいない訳だから、どうやったって、光の魔法は使えないよね?うーん、分からない!
ソフィア様が光の魔力を持っている事が皆に証明されていないという事は、アル様達王族がソフィア様に興味を持つ可能性も減ったって事だよね?あの魔力量を知っているなら可能性はゼロではないけれど、でも少しは安心してもいいよね?
ぼーっとしている私を気遣って、リシューは私をお家まで送ってくれた。迷惑をかけてごめんね、リシュー。
私を送ってくれたリシューと一緒に家に入り、庭に行くと、
「お帰り、シルフィー」
と手を振り、紅茶を飲みながら我が家のようにくつろぐアル様がいた。
「アル様!ただいま帰りました!」
アル様に飛びつくように抱き着くと、危なげなく抱きしめ返してくれた。ついでに頭なでなでというオプション付き。はぅ、幸せ。
「わぁ、すごいや、アルにぃ。シルフィーが元気になった」
なんて言っているリシューの言葉は聞こえません。
それにしても、びっくりしたぁ。アル様学園に行ってるはずなのに。
「アル様、学園はどうしたのですか?」
「教師を脅……、説得してホームルームを短縮して貰ったんだ」
「……」
アル様、それもう脅すって言っちゃってますからね。
アル様は私を膝の上に乗せて、更に頭をなでなでしてくれる。こんなので騙されませんから……、だまさ…、だ…、はうぅ~、幸せ。
「犯罪臭がするのは僕だけかな?」
なーんていってるリシューの声は聞こえません。アル様はロリコンなんかじゃないもん。…たぶん。
「おーい、シルフィー。俺たちもいるぞー。」
というお兄様の声で、お兄様とお姉様と、リシューのお姉様でありお兄様の婚約者であるマリーお姉様もいた事にやっと気づきました。
「あ、お兄様、お姉様!ただいま帰りました!マリーお姉様、お久しぶりです!」
「ふふ、シルフィーは相変わらず甘えん坊ね」
マリーお姉様がそういってくる。私って甘えん坊だったのかな?…そうかも。じゃあ、甘えん坊らしく。
「マリーお姉様、ぎゅー」
と言って、マリーお姉様に抱き着く。私が膝から降りた事で、アル様が少し寂しそうな表情をしたけれど、我慢してください。またあとで甘えに行きます。
「あらあら、可愛いわね」
「えへへ」
「シルフィー、あなたうちの子になりなさいな。そうすれば、リシューと双子になるものね。さぁ、シルフィー。私達のお家に帰りましょうね。」
そういってマリーお姉様は私とリシューの手を引いて、クロード公爵家へ帰ろうとする。
「まてまてまて!」
あぁ、良かった。お兄様が止めてくれた。危うく別のおうちの子になるところでした。リシューのお父様とお母様も好きだけどね。最近は肩車してくれるし。……令嬢としてはだめだとは思うけど楽しいんだもん。
「ふふ、冗談よ」
いいえ、お姉様。お姉様の目は本気でした。止める人が居なかったら、確実に私をお持ち帰りしていましたよね?でもね、
「マリーお姉様はお兄様のお嫁さんになるんだから、私と一緒に暮らせますよ?」
私がお嫁に行くまでの数年の間ですけれど。
「あら、ふふ。それもそうね。スティラ様の婚約者で良かったわ。」
マリーお姉様、こんな事でお兄様の婚約者で良かったと喜ぶのはどうかと思います。お兄様も複雑なんじゃないですか?……あれ、なんか納得したように頷いている?…お二人がそれでいいならいいです。
「そうだ。1週間後に、ナイア学園で学園祭があるんだ。シルフィー、良かったらリシュハルトとおいでよ。」
「学園祭!」
なんて素敵な響き。学園祭ってあれでしょう?出店があったり、劇があったり……、ごめんなさい、私の文化祭に関する知識はこんなものです。
でも、とにかく行きたい!異世界の学園祭なんて余計に気になる。それに、自分達が入学してからどんなことをするかの参考にもなりそうだしね。
「リシュー、一緒に行こ?」
あ、でもリシューは忙しいかな?でも、私はリシューに断られても絶対行きますよ!と、友達はいないから一人で行くしかないけれど……。あ、まって、それすっごく寂しい。やっぱり、リシュー、一緒にいこぉ!
「だめ…?」
「も、もちろんいいよ」
「やった!リシュー、約束だよ!」
シルフィーは知らない。その時リシューは四方八方からシルフィーの誘いを断るわけないよね…?という鋭い目を向けられていた事を。
知らぬが仏。
それから、リシューはマリーお姉様と一緒に帰っていき、お兄様とお姉様は、アル様によって庭から追い出された……。ここ、アル様のお家だったかな?
お兄様とお姉様は散々アル様を睨んでいたけれど。でも、アル様が二人の耳元で何かをこそっと言うと、二人はしぶしぶ庭から出ていった。何を言ったんだろう。気になる。
「さてと」
二人っきりになった所でアル様は再び、当然のように私を膝の上に乗せた。そうするとアル様の綺麗な顔が目の前に来る。はぁ。アル様本当に格好いいなぁ。髪もサラサラ。なでてもいいかなぁ。許可をとらずに、勝手にアル様の銀色の髪に手を伸ばす。
「ふわぁ、さらさら!」
これは、どんな手入れをしているんだろう。……今度メイドさん達にアル様の使っているシャンプーとか、オイルとか聞いておこう!
「ふふ、くすぐったいよ」
そう言って、アル様も私の髪を触る。というか、これは普通になでなでですね。ただのご褒美だ。
「それで、シルフィーはどうして考え込んでたんだい?」
アル様が急にそんな事を言うから、ついアル様の髪を撫でていた手をとめてしまう。
「気づいてたんですか?」
「勿論。帰ってきた時、リシュハルトが心配そうにシルフィーを見ていたからね」
「…!」
そっかぁ。リシュー、そんなに心配してくれてたんだ。アル様の観察力もすごいなぁ。流石、王子様。
でも、どうやって言おうかな。流石に「ソフィア様は光の魔力を持っている」なんて言えないし。
「あ、あのね、えーっと」
ど、どうしよう。アル様をそーっと伺いみると、とってもいい笑顔をしていた。
(あ、これ。何でもないってごまかせないやつだ。)
な、何か言わないと。あぁ、もう!こうなったら出まかせだ!
「あ、あの。私、お友達いないなぁって」
そうして口から出たのはただの自虐だった……。
「あ、えっと、リシューがいてくれるけど、女の子のお友達が欲しいなぁって…」
でも、この気持ちは本当。今日だって、何人も女の子が来ていたけれど、私には一人も同年齢の友達がいなかった。しらない人に話かける勇気も私にはないし。
「シルフィーは友達が欲しいの?公爵に言えば、用意してくれると思うけれど。」
そう言われると分からない。
欲しい。けれど、親が用意してくれた友達ってなんか違う気がする。
「私も学園にはいったら、お友達出来ますか?」
私がそういうと、アル様も私の気持ちを理解してくれた。
「勿論。ちゃんとシルフィーを見てくれる友達が出来るよ。何ならその査定は同じ学園に通うリシュハルトに任せておけばいいさ」
おぉう、いつのまにかリシューに重大な役目が。でもお願いします。あと、このままソフィア様に光の属性が無いままだったら、お友達になりたいなぁ。光の属性でないのなら、アル様の婚約者候補になる事も、私が悪役令嬢になる事もないだろうし。
「あのね、アル様」
「ん?」
「本当は、お友達になりたい子がいるの。」
「そっか。誰?私の知っている子?」
「……内緒。でも学園で会えるかもしれないから、それまでお楽しみなの。」
あと5年もある。先は長い。それまでに光の属性を持っている事が広まらなければ、物語は大きく変わっていっているという事だと思うから、その時は本当にお友達になりたいな。
「そっか。友達になれるといいね」
「はい!」