042、適正検査に行きます
誤字報告ありがとうございます!
シルフィー・ミル・フィオーネです!元気です!
なんと先日10歳になりました!でも、身長はあんまり伸びていません。15歳になったアル様と頭1個分以上の差があります……。
私は特に好き嫌いもないし、ミルクだって沢山飲んでいるのに、相変わらず小さい。同じ年のリシュハルトよりもすっごく小さいもん。
私以外の皆小さくなってしまえ~、なんて呪いをかけたいと本気で考えている悩めるお年頃です。
そうそう、私が10歳って事は、アル様も15歳。ということは、アル様はナイア学園に通うようになりました。勿論、アル様より一つ年上のお兄様、お姉様、レオンお兄様も学園に通っています。
正直、アル様を学園に取られた気がしてすっごい落ち込みました。……10歳だから泣いたりはしませんよ?ちょっと拗ねただけです。あの時のアル様の慌てようは忘れません。寮生活ではないみたいだから、全然会えない事はないけれどね。
でも、もっとショックなことは、アル様は私の5歳年上だから、一緒に学園生活が送れないという事。学園は3年制だから仕方がない。アル様と一緒に放課後デートとか、一緒にお昼とかしたかったのに。
アル様と言えば、生徒会に所属しているみたい。レオンお兄様が生徒会長で、アル様が生徒副会長。あと、お兄様が会計で、お姉様が書記。学年よりは成績と身分で決まったらしい。あと、もう一人、特待生で入学してきた平民の子が雑務をしているみたい。アル様と同い年で、成績もいいみたいだから生徒会に入るように勧誘されたとかなんとか。
凄いなぁ。私は勉強は嫌いじゃないけれど、私の知識は小学5年生までしかないんだよなぁ。……アル様の婚約者として、頑張ろう。成績下の方とか格好悪いもんね。
あれから、変わらない…、いや、もっとひどくなった事と言えば、アル様の溺愛。正直、これ以上ひどくなる事はないだろうとか考えていた5歳の頃の自分を殴りたい。
「シルフィー、あーん」
私は今、アル様にケーキを食べさせて貰っています。ここまではね、いつもと一緒なんだよ?でも、問題はここから。
「あーん」
ケーキうまうま。思わず頬が緩む。
「シルフィー、ついてるよ」
そう言って、アル様は私の頬についたケーキをとってくれました。…アル様の舌で!つまり、アル様になめとられたって事です!しかも、唇に限りなく近い所を!今まではハンカチとかでそっと拭いてくれていたのに! でも、まぁ、正直慣れてきちゃいました。今では笑って「ありがとうございます」って言えるようになったよ。私って食べるのへたくそなのかな?
だけど、不思議な事にキスをされたことは一度もない。アル様曰く「約束を破ったら後が面倒そうだから、もう少し我慢するよ」だそうです。誰との約束だろうね。
「そういえば、シルフィー、そろそろ適性検査の時期だよね」
「はい!」
適正検査は10歳になった子ども達が教会で行うもの。検査では自分が水、火、風、地、緑のどの魔力を扱えるのかが分かる。私はもう風の魔法が使えるって分かっているけれど、魔力が少ない子ども達は、魔法を使えない場合もある。だから、どの魔法に適正があるかだけでもここで確かめたいっていう理由で来る。ここは無料でして貰えるから、平民の子どもも来る。私はリシューと一緒に行こうと思っているけれど、もしかしたらヒロインも来るかもね。ヒロインは確かライト―ル伯爵家のソフィア様。ヒロインって平民な事が多いから、貴族って新鮮。
あ、そうそう。適性検査では、自身の魔力量も知ることが出来るから多いといいなぁ。少なくても、今くらい魔法を使えたら楽しいから満足だけれどね。
魔力は生まれてから徐々に大きくなっていくけれど、だいたい10歳頃に限界が来る。それ以降は、ほとんど魔力は伸びないから10歳で適正検査をする。
そういえばヒロインってどうなるんだろう。光の魔力って検査しないみたいだもんね。もしかして何も属性がない、なんて判定になるのかな?
「本当は一緒に行きたかったんだけれど、学園があるからついていけないんだ…」
私の頭を撫でながら、アル様は寂しそうに言う。
「大丈夫です!リシューと一緒に行きますから!」
「…他の男と一緒に行くのを大丈夫と言われるのは少し嫌だけれど、リシュハルトは信用できる。気をつけていってきてね。」
「はい!」
という訳で、適正検査です!
「楽しみだね、リシュー!」
「うん、そうだね!シルフィー!」
相変わらずリシューは可愛い。癒し。…身長は私より大分大きいけれど。でも、本当に可愛い。
「えへへ、リシュー可愛い」
「ありがとう。シルフィーも可愛いね」
こんなやり取りもいつもの事。
「リシューは、火の魔法だよね?」
「うん。シルフィーは風だよね?」
「うん」
という事は二人とも魔力量を確かめるだけだね。ヒロインにも会えるかなぁ。怖いけど楽しみ!
教会まで行くと、そこにはたくさんの子ども達がいた。
「ふわぁ、すごいね、」
「うん、王都中の10歳の子どもが集まっているからね」
「はぐれないようにしないとなぁ。」
ヒロインに会えたらなぁって思ったけれど、これは見つけられなさそう。でも、同い年の子どもなんてリシュー以外で初めて会ったかも!……初めて会ったからこそわかる。
(私、小さい!)
同い年の子どもよりずっとずっとずーーっと小さいなんてショック!
「ふぇ~、リシュー…」
「だ、大丈夫だよ。女の子はきっとこれから大きくなるよ!……たぶん」
たぶんはいらない!
「だといいなぁ…」
このままだとアル様にロリコンの称号が与えられてしまう…。し、身長はまぁいい。でも問題はお胸がこのまま小さいままかもしれないって事。
小説の挿絵ではシルフィーはぺたんこでは無かったから大丈夫だよね…?私は信じているよ。フィオーネ公爵家の遺伝子を!
教会に用意されていた椅子に二人で揃って座る。検査では祭壇の所にある水晶に手をかざすみたい。そこから光が出てきて、その光の色によって自身の属性、光の強さによって魔力量が分かるみたい。
二人で、他の子ども達が呼ばれて検査しているのを見ていく。面白いなぁ。色んな属性の子がいる。あ、あの子。この間街で見かけた子だ!あ、あの子も!
アル様と街にお出かけした時に見かけた子が何人かいる!見かけただけで話した事はないから、話しかける勇気はないけれどね!
そんな事を考えていたら先にリシューが呼ばれた。
「リシュハルト・ミル・クロード様、前へ。」
「はい!」
「頑張ってね、リシュー!」
「うん!」
祭壇の前に行って水晶に手をかざすとそこから赤い光が出て来た。
「リシュハルト様の属性は火ですね」
リシューの魔力量は平均より少し多いくらいだった。
「お帰り!」
「うん、ただいま!」
「緊張した…?」
「え、ううん。人前に出るのは慣れてるから」
さ、流石リシュー。貴族っぽい!貴族だけど。
「ではシルフィー・ミル・フィオーネ様、前へ」
「は、はい!」
よ、呼ばれた!私って引きこもりだから人前に出るのに慣れてないんだよぉ。そろーりと歩いて祭壇に向かう。でも、ちゃんと歩かないとね!貴族っぽく!
祭壇に行くと、水晶が置いてあった。そこに手をかざすと、そこから水色の光が出てきた。
「シルフィー様の属性は風です。」
やっぱりね。そしてわたしの魔力量もリシューと同じくらいだった。ふぅ。終わったぁ。
「ただいまぁ」
「うん、お帰り。…緊張したみたいだね」
「とっても!」
それから私とリシューはおしゃべりをしながら他の人が終わるのを見ていた。終わった人は帰ってもいいみたいなんだけれど、私達は最後まで残っている。何でも、「関心を持っているという事を知らせる必要がある」との事らしい。
すると、聞き覚えのある名前が聞こえてきた。
「ソフィア・リア・ライト―ル様、前へ」
「はい」
え、ソフィアって…、ヒロイン?!
ヒロインは薄水色の髪に瞳。今日は黄色いドレスをきている。え、めちゃくちゃ可愛いじゃん!
「ふわぁ~―」
思わず声が出ちゃうのも仕方がないよね。きっとリシューも好きになっちゃう。
「見て、リシュー。可愛い子だよ」
「そうだね。でも、シルフィーの方が可愛いよ」
…リシュー。それは身内贔屓ですよ?
ヒロインのソフィア様は祭壇の方へ向かっていく。私と違って全然緊張していないみたい。
ソフィア様がそっと手を水晶にかざす。その水晶からは光が出てきた。
「え…?」
私は思わず疑問を漏らす。しかし、その瞬間周りから大きな歓声が上がった。理由はその光がとても強い力だったからだ。思わず目を覆ってしまう程の。
しかし、私が驚いたのはそこではない。その水晶が発した光は、光属性の白色ではなく私と同じ水色。ソフィア様は風の属性だった。
光属性は検査しないと聞いていた。だけれど、私はそれでも検査するのかと思っていた。だって、この場でないと、ヒロインが光属性を持っている事を皆に広める事が出来ないから。そうでないと、学園入学までにヒロインが光属性を持つものとして有名になれるはずがないから。
もしくはヒロインが手をかざした水晶は何も光らないと思っていた。だって、ヒロインは水、火、風、地、緑の属性を持っていないから。この世界の人は魔力を全く持たない人はいない。何も光らなかったからこそ、教会の人たちは水、火、風、地、緑以外の属性、つまり光の属性を疑う。そうして光の魔力も検査するのだとどこかで思っていた。
だって、そうしないと物語との辻褄が合わないから。
ヒロインの使う魔法の属性は光では無かった。
ソフィア様はその後、教会や魔法省から勧誘を受けたりしていたが、お父様と相談する必要があるとすべて断っていた。私はその光景を呆然と眺めていた。
私は訳が分からず、しばらく言葉を発する事が出来なかった。




