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041、皆で遊んだほうが楽しいです


 どうも、シルフィー・ミル・フィオーネでございます。元気です。あれから一切悪夢を見ていません。安眠です。

 怖いのが、犯人が捕まっていないという事。皆に、「犯人の顔を見た?」って聞かれたけれど、本当に誰も見ていない。

 

 でも、私はどこかで人間の仕業じゃないって思っている。黒いもやもやしたものがやった事だと思っている。あのもやもやは人が作りだしたものじゃない。作りだしていいものじゃない。もっと、もっと邪悪な……、悪魔の様な…。


 でもこれは誰にも言っていない。余計混乱するだけだろうし、私の勘だから分からない。私を気に入らない人間がやった可能性も十分あるからね。


 でも、その時以外誰一人、私に今回の事を聞いてこなかった。あんな状態になった私にこれ以上の負担をかけさせたくないと感じているのだろう。でも、正直有難かった。だって、本当に何も分からないし、話せる事も無い。気が付いたらあそこにいて、閉じ込められて縛られていた。矢を射られていた。誰の企みなのかも分からない。


 あの部屋にいたこと以外、本当に何も分からない。


 だから私個人が考えることは何もないなぁって自分で結論を出した。そんな暗いことを考えているくらいなら、私はケーキの事を考える。

 その方が幸せだもん。それに、私が暗い顔をしていると落ち込む人がいっぱいいるんだもん。私は何も覚えていないように、忘れたように元気に過ごせばいいんだ。その方が私も幸せ。





 ところで、私、今どこにいると思いますか?





 正解はメルヘンランドでございます。アル様のお部屋のお隣の私のお部屋です!


 今日はアル様からのお茶のお誘いがあって来たのだけれど、アル様は仕事が終わらなくてもう少し待って欲しいって申し訳なさそうな顔で言ってきました。だから、「じゃあ、私、お部屋にいます!るぅと遊んでます!」ってわくわくしながら言ったらアル様が落ち込んじゃいました。……私ももっと寂しがった方がよかったのかな?


 それはともかく、時は金なり。お部屋の探検だぁ!





「るぅ見て!るぅのお洋服もいっぱいあるよ!」

『本当だ!シルフィー、私、このお洋服がいい!今シルフィーが着ているのとそっくりよ!』

「本当だ!じゃあ、るぅお着替えね!」

『うん!』 


 私はるぅの服を脱がせ、新しいドレスを着せる。……え、何でるぅが喋っているのかって、そんなの私が喋っているに決まっているじゃないですか。だってアル様がいないと暇なんだもん。流石にメイドさんに遊んでもらう訳にもいかないし。…ぬいぐるみと喋っている私はこの部屋に控えているメイドさん達に微笑ましそうな笑顔で見守られているけれど、気にしません。私は今5歳。問題ないです。





「はい、お紅茶ですよ」

『ありがとう!あとね、お砂糖欲しい!』

『僕はクッキーも欲しいなぁ』

『私はマドレーヌ!』

「はーい、ちょっとまってね!」


 私は猫のぬいぐるみのお紅茶に砂糖を入れて、犬のぬいぐるみにはクッキーを、るぅにはマドレーヌを用意する。

 ……色々突っ込みたいよね。これはおままごとです。じつはこのお部屋、おままごとセット常備です。だから、るぅとおままごとをしていたんだけれど、途中で、メイドさんが来て、一緒に遊んでくれたのです!猫さんと犬さんのぬいぐるみをもってね!だから、今回は一人二役じゃなくて、4人で一人一役です!

 

 小学生(前世)になってまでおままごとって……、って最初は私も思ったよ?でもね、すーっごく楽しいの!


 まず、紅茶!ポットからティーカップへ本当に液体が出てくるの!でも、魔法がかかっていて飲むことは出来ないし、零れることもない。

 次に焼き菓子!これはね、オーブンに入れると、本当に焼き色が付いたみたいになる。しかも、裏についている小さいボタンを押すと、焼く前の色に戻るから、何度でもオーブンに入れて焼くことを楽しめる。

 オーブンだって、本当にあったかくなるんだよ!でも火傷しないように、あったかいと言っても人肌程度。


 私こんな最先端のおままごと知らない。こんなすごいおままごとセット、こんな所に置いていていいの?え、楽しんでくれるならおもちゃも嬉しい?……遠慮なく遊ばせていただきます!





 楽しすぎて私を迎えに来てくれたアル様に「やぁ!まだ遊ぶの!」なんて言ってしまいました。5歳児か。ごめんなさい、アル様。

 でも、そこは流石アル様。「そっかぁ。じゃあ、シルフィーのケーキ、私が食べちゃうね」って言葉で私を吊り上げました。

 まぁでも、お菓子がとられちゃうって聞いて思わず瞳が潤みました。泣く直前で、メイドさんがあやしてくれましたとも。……私は本当の5歳児か!ご迷惑をおかけしました。









「はい、あーん」

「あーん!」

「美味しい?」

「はい!」


 見て分かる様に私はアル様にケーキを食べさせられています。けーき、うまうま。


 アル様の溺愛がひどくなりました。今日、私フォーク持っていません。それに、ずーっとアル様のお膝の上です。……どうか、アル様にロリコンの称号を与えられませんように!……え、もう手遅れ?ど、どんまい。


「アル様、あーん」


 私は口を開けて次のケーキを催促します。羞恥心?いつも言っているけれど、そんなものありません。重要なのはそんなものじゃなくて、ケーキが食べられるかどうか。

 それに慣れもあります。食べさせてもらうのは、いつも通りだし。

 ……ハッ!だめだめまっしぐら!立派な淑女になるという目標はどこに行ったの?!


「シルフィー、リンゴタルトだよ。あーん」

「あーん。もぐもぐ」


 うまうま。じゃない!自分で食べないと!せっかくテーブルマナーとかも勉強しているんだから、ここでやらないでいつ使うの?!


「もう一口、あーん」

「あーん。もぐもぐ。うまうま」


 うまうま~。


「次はチョコレートケーキだよ。あーん」

「あーん。」


 美味しすぎて、頬がふにゃぁっと緩む。


 ……明日から、頑張ればいっかぁ。






「ふふ、やっぱり、シルフィーは可愛いなぁ。」


 って黒い笑顔でつぶやいていたのをシルフィーは知らない。

 実はこれこそアルフォンスの作戦だった。名付けて『シルフィーを甘やかして甘やかして甘やかそう作戦』甘やかして、シルフィーの思考を溶かす。……お菓子を使って!正直いつもの二人とあんまり変わらない。


 アルフォンスはこの先何年、何十年とシルフィーへの「あーん」をやめるつもりはない。


「だから、私の前では淑女ではなくて『シルフィー』でいてね」





 


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