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034、疑問が残ります



 突然だけれど、私は季節の中では春が一番好き。だって、春は桜が咲く。私の前世の名前と同じ名前の花。私は前世の両親の事をあまり覚えていない。だから、この『桜』という名前は私と両親を繋ぐ本当に大切な名前だった。

 

 今は『シルフィー・ミル・フィオーネ』だけれど、『桜』という名前も私の中でずっと生き続けている。

 でも、この国に桜が無いのは本当に残念だと思う。まるで、この世界に『桜』が受け入れられないように感じる。

 でも、『桜』を受け入れてもらえなくても、『シルフィー』なら受け入れてもらえている。だって、『シルフィー』を好きでいてくれる家族がいるんだもん。それはつまり、『私』を受け入れてくれるという事。


 そして、私は段々と元の世界の事を忘れてきている。当たり前だよね、小さい頃の記憶を完璧に覚えている人なんていない。大事なことは覚えているけれど、細かい所は忘れてきている。

 そんな時にふと思い出す人が居る。


(前世で仲が良かった悠里ちゃん、元気かなぁ。)


 悠里ちゃんは私と同じ小学校に通っていた同級生で親友。この世界の小説『ソフィアと恋の物語』を紹介してくれた。悠里ちゃんがこの小説を勧めてくれたおかげで悪役令嬢にならないように頑張れる。本当にありがとう、悠里ちゃん。





 小説では私が処刑されるのは15歳の時。あと10年もある。何度も言うけれど、このままいくとアル様の性格上、私を処刑するようには思えない。それに、アル様の婚約者になってしまったけれど、今のところ嫉妬でヒロインをいじめるようなことはしないと思う。だって、アル様はすっごく私の事を可愛がってくれているもん。だから、アル様に他に好きな人が出来たら、私にアル様をつなぎとめるだけの魅力が無かったって事でしょう?恋に落ちるのは仕方がない。だって私達は政略結婚だもん。いくらアル様がお願いしたからと言って、全く政略の要素が無いかと言ったら嘘になるだろう。だから、アル様に本当に心から一緒に居たいと思える人が出来たら私は諦める。


 けれど、シナリオの強制力は侮れない。この先アル様の事をもっと好きになってしまったら嫉妬していじめてしまうこともあるのだろうか?それが分かるのはヒロインとアル様が出会ってから。

 小説の中の私がヒロインに出会ったのは15歳の学園入学時だった。その時には光の魔力を持っているって分かっていたから、皆から注目されていたんだよね。伯爵令嬢だったから、よくある平民いじめも起きないしね。……まぁ、『シルフィー』がいじめていたけれど。


 あれ、私はヒロインの事をいじめてたのって、アル様との仲に嫉妬してだったよね?もしかしたら、光の魔力を持っていた事も理由にあったのかな?


 ……あれ、ちょっと待って?おかしいよね?私達は15歳になったら学園に通う。それはいいよね。私とヒロインは同い年だから、同じ時期に学園に通う。これもいい。

 でも学園は3年制。私とアル様は5歳差。当然同じ時期に学園に通えない。ということは、ヒロインとアル様は同じ時期に学園に通えない。

 ……アル様とヒロインの接点どこ?私どのタイミングで嫉妬すればいいの?どうしよう。そこのところの記憶が無い。ちゃんと覚えておいてよ!ここ大事な所!私のポンコツ!

 冷静に考えよう。多分、光の魔力を持っていたから、王家の人に気にかけて貰えたのかな?そこで接点が生じた。きっとそう。それしか思い浮かばない。


 ………って、そうじゃん!なんで忘れていたの私!

 ヒロインであるソフィアはこの国で一人しかいない光の魔法の使い手。国に留めておくためにアル様の婚約者は私よりソフィアの方が相応しいって囁かれるんだよね。レオンお兄様は私が15歳の時にはディアナお姉様と既に結婚してるから、私の代わりにソフィアをって言う流れだよね。それで、アル様と段々と仲良くなっていくソフィアに嫉妬して、私はソフィアを虐める。そして、光の魔法の使い手を陥れた罪でアル様に処刑される。

 

 何で忘れていたの!この世界で記憶がよみがえった時は覚えていたのに!

 でも少し疑問が残る。レオンお兄様は私が15歳の時には結婚していたから、ソフィアの相手としての選択肢から除外されるのは分かる。でも、何でアル様?ルートお兄様もいるのに。ルートお兄様には婚約者がいないし、好きな人がいるという事も聞いていない。ソフィアの相手がルートお兄様でも、何の問題もないように思える。


 というかそもそもルートお兄様って小説で出てきたっけ?私の記憶では出てきてないように思える。ただでさえこの小説って登場人物が少ないんだから、出てきた人は覚えているはずなんだけれど。それとも私がまだルートお兄様が出てくる所まで読めていないだけかな?

 うぅ~。死ぬ前に全部読んでおけばよかった!





 そもそもヒロインってどんな子だろうなぁ。一応小説の挿絵でも見たけれど、瞳や髪の色は曖昧。瞳も髪も薄い色だった気がするなぁ。

 もしかしたら公表していないだけで、もう光の魔力を持っている事に気付いているかもしれないね。私は勝手に10歳の適正検査で光の魔力を持っている事が分かるんだと思っていたけれど、光は検査しないみたいだから、いつ分かるのかは私も分からない。


 学園入学が待ち遠しいような、避けたいような……。ヒロインも私と同じ転生者説ないかな?よくある展開だよね、これ。そして、『ソフィアと恋の物語』という小説を知っている可能性もある。でもそうなったら、どっちに転ぶか分からない。常識のある子なら、小説に縛られずにこの世界を現実のものとして行動してくれると思うけれど、脳内お花畑の子だったら……、考えるだけでも怖い。


 ……わたし5さい。むずかしいことはわからない。あと10ねんあるから、もうすこしおおきくなってからかんがえます。





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