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029、お勉強します


 とうとうこの日がやってきてしまいました。それはお勉強!5歳になったので、今日から本格的にお勉強が始まります。お兄様とお姉様も5歳からお勉強を始めたみたいだから一緒だね。

 前に魔法のお勉強をしたことがあるけれど、それはお勉強には入りません。だって、魔法のお勉強は楽しいもん。前世で魔法がなかった私からすると、魔法のお勉強はむしろご褒美。でも、今日から、本当の意味でのお勉強が始まる。

 前世でも勉強を始めたのは小学1年生だから年齢的には同じようなものかな。


「さあ、お嬢様。お勉強を始めましょうか。」

「はーい!」


 先生をしてくれるのは、魔法のお勉強と同じく、執事のロバート。ロバートは座学を教えてくれるけれど、マナーに関するのはメイド長のナタリーが教えてくれるみたい。

 え、家庭教師を雇うんじゃないのかって?私もそう思ってたよ。でもね、雇ってくれなかったんだよ。家族のみんなが。


 お父様曰く、


『だって、だって!その家庭教師がシルフィーの可愛さに気付いてへんな事をしでかさないとは限らないだろう?!若い男ならシルフィーに惚れられても困るし、逆にシルフィーが見とれるのも嫌だし。中年の男は変態に覚醒しないとも限らないじゃないか。え、女性ならって?そんなのシルフィーの可愛さに嫉妬しない訳ないじゃないか。』


 らしいです。


 でも、お父様。流石に言い過ぎだと思います。だって、さすがに変態はそんなに量産されませんし、したこともありません。それに、私はアル様の婚約者なんですから見とれたりしませんよ?


 正直、ロバートとナタリーが先生をしてくれると緊張しなくていいので嬉しい。二人とも頭いいし、作法も完璧だからこそお父様も2人を私の先生にしたのだと思うし。


「それでは、お嬢様はもう字を読めますので、今日は書く練習をしていきましょうね」

「はーい!」


 やったぁ。これで文字が書けるようになるはずだ。今までにも何回か練習をしたことがあったけれど、難しかったんだよね。


「それと、まだ早いかとは思いますが、フロイアン国の歴史についても学んでいかなければなりません。」

「歴史?」


 文字と歴史だけでいいの?算術とか外国語とかは?


 私の目線に気が付いたのか、ロバートは私に微笑みを向けてくれた。


「歴史と言っても詳しいことを学ぶのは他の科目と並行して行います。けれど、文字を習うと同時に、フロイアン国の建国にまつわるお話を最初に伝えるように旦那様に仰せつかりましたので。」

「お父様が?」

「はい」


 なるほど。お父様がいうのなら、それは私にとって必要な事だと思う。正直、お父様が何を思ってこれだけ先に教えるようにしているのかは分からないけれど。


「ロバート!私、建国の歴史読むから、本をみせて!」

「いえ、これは…」

「大丈夫!だって、もう文字読めるようになったもん!自分で読めるよ!」


 そうして私はロバートに貸してもらった本の建国の歴史を読もうとした。





 結果。読めなかった。


 フロイアン国の建国の歴史を読むのは難しかった。何故なら古代語で書かれていたから。この国の文字って日本語と違って1種類だけだと思ってた。だから読めると思ったけれど、流石に古代語は難しい。


「ろばーと…、やっぱり読んでください…」

「ふふ、分かりました」


 うぅ。笑わないでください…。自信満々だったくせにとか思っているんでしょう…。仕方ないじゃん。古代語って、私が今習っている文字以上にグネグネしてて分からないんだもん。


 ロバートは微笑みながら、ゆっくりと、私でも分かりやすいように話してくれた。





~フロイアン王国建国物語~


神々は天界に住んでいた。そこでは美しい花が咲き乱れ、神々は心穏やかに過ごしていた。


しかし、悪魔はそんな天界全体へ呪いをかけた。


自身の欲を最大限まで増長させる呪い。


神々は自身の欲を求めるようになった。そして、その欲を妨害するものは残らず排除した。それが、かつて仲間であった神であろうと関係なく。


しかし、神は死なない。


それ故、神々の戦いは徐々に激しくなり、やがて人間界へも影響が出た。神々の強すぎる力は、とうとう人間界を高密度の魔力で埋めつくした。人間達は無意識にその魔力を体内に取り込み、やがて狂っていった。


人間同士の殺し合い。


他人を殺すことに優越感を持つ者もいた。数億人いた人間達は、1人減り、2人減り、やがて最後の1人となった。最後の1人となった少女は、高密度の魔力を取り込みながらも何とか自我を保っていた。そんな少女は、自分一人しか残っていないという事実に絶望し、自身に取り込んでいた魔力を放出した。取り込んだ魔力を急激に放出することに少女の体は耐えられるはずもなく、少女の体は光となって消えてしまった。


しかし、その光は、神々にかけられた悪魔の呪いをも消し去った。


正気に戻った神々は、魔法によって起こる争いを恐れた。しかし、 神は人間界の監視者であるため、人間界を作らなければならない。それ故、神はあらたな大陸を作り、魔力を持たない人々を作った。





 ……ええーー。


 なんだか思ったより怖い。建国の歴史ってこんなにファンタジーなものなの?日本の歴史でもこんなにファンタジーじゃないよね。あれ、でもこの世界も魔法があってファンタジーみたいなものだからこんな歴史でも変じゃないのか…?というか、この世界普通に魔法あるよね?魔力を持たない人々を作ったってあるけれど、それなら魔法使えないはずだし…。分からない。


「昔の話ですから、おとぎ話のようなものですよ」

「……」


 で、ですよねー。だって、歴史通りなら…というか歴史を知っている人が生きているはずがないもんね。


「その時に初代国王となった人が代々王家を継いできました。けれど8代国王の失政により、一時期平民が国王になったので今はその家系が王家を継いでいるのですよ」

「え、平民が王様になったんですか?」


 あれ、そういえば。そんな話を昔アル様から聞いたような…。あ、9代目の王さまのリヒト様の事かな?


「ええ。と言っても、今ほど王と平民の身分差が無かったのと、その方が民に慕われていたので当時、問題は無かったのです。」

「ふぇー」


 何だか歴史って難しいね。でも、日本の総理大臣だって一般市民が選挙とかでなっているからそんなものかな。


「お嬢様、この話を聞いてどう思いましたか?」

「どうって……、そんなに慕われてた王様すごいなぁー…?」

「今の王家が由緒ある血筋ではなく平民の血を引いているのですよ?」

「え、うん。でも、どこの国も最初の王様はそういうものですよね…?」


 っていう事でいいのかな?それとも、建国の歴史ってなんか怖いなぁ…。っていえばいいのかな。どうっていわれてもアバウト過ぎて分からないよ。そういえば、アル様にリヒト国王には子どもがいなかったみたいだから養子をとったって聞いたけど、その養子の人も平民だったのかな?


 私が困っているのも我関せず、ロバートは微笑んだ。


「ロバート…?」

「ふふ、いえ。さすがお嬢様ですね」


 これは褒められている…?喜んでいいの?でも、どう思うって聞いてきたロバートは凄く真剣な顔をしていたけど、今は穏やかな顔をしているから私の答えは正解って事かな?


「そのまま穏やかに育ってくださいね」

「う、うん…?」


 何か諭された?


 それからロバートと文字のお勉強。ナタリーとマナーのお勉強をしました。私がスラスラと文字をかける日も近い!






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