ルルの花束
ある所にルルというお姫様がおりました。
ルルはとても美しく、国中の人気者です。しかし、ルルは悩みを抱えていました。それは、王様が結婚を急かしてくることです。自分で結婚相手を決めないと、王様が決めた人と結婚することになっています。結婚相手は自分で決めたい。好きな人と結婚したい。
その為、ルルは必死に結婚相手を探しますが、結婚したい人は中々見つかりません。
何故なら、ルルは好きという感情を理解出来なかったからです。
ルルは必死に探します。貴族の家に訪問してみたり、街を歩いてみたり。色々なところでたくさんの人と出会います。もちろんその中に好ましい人はいました。けれどそれは友情です。ルルはどうしてもその人に愛を抱く事が出来ませんでした。
そして、とうとうルルは隣国の王子と結婚する事が決まりました。それはルルが自分から望んだ結婚ではありません。王様と、隣国の王子が決めた結婚でした。
王子とは結婚式の日に初めて会いました。王子はとても格好良く、優しい人でした。
ルルが望んだ結婚ではないけれど、ルルは幸せでした。王子はルルの事を大切にしてくれていたからです。
王子は結婚式の時にルルに花束を贈りました。王子は結婚してからもルルに様々な贈り物をしましたが、ルルが一番嬉しかったのがこの花束でした。
王子はルルを好きになりました。ルルも優しい王子を好きになりました。
2人はとても幸せに暮らしていました。お互いを大切にし、いつだって笑顔が溢れていました。
でも、そんなある時、王子は感じてしまったのです。ルルと王子の気持ちは全く同じではないということを。
王子はルルを愛していました。ルルを大切にし、いつだって愛の言葉を囁きました。
ルルは王子の事が好きでした。けれど、それは愛ではありませんでした。
ルルは自分の事を大切にして、可愛がってくれる王子の事を兄のように思っていました。
王子はそれでも構いませんでした。たとえ自分の事を兄のように思っていたとしても、自分はそれを受け入れるべきであり、自分と同じような気持ちをルルに強要するわけにはいかないと分かっていたからです。
けれどルルは王子と自分に気持ちの差がある事を感じ、段々と苦しくなっていきました。
ルルは王子の事が本当に好きでした。王子に愛を囁かれる事が本当に嬉しかったのです。
だからこそ、苦しかったのです。ルルは王子がルルにくれる気持ちと同じものを返す事が出来なかったからです。いつだって贈り物のようにもらってばかりです。
そんな時、ルルの心は神に囚われていると知りました。夢で神様が教えてくれたのです。
ルルは神様に願いました。心が欲しいと。自分の心で王子に同じ気持ちを返したい。一緒にいるだけじゃなくて、もっと心で触れ合い、寄り添いたいと感じたのです。
誰かを愛する気持ちを知りたい
そう強く願ったルルは、王子から貰った花束の中から1本花を抜き取り、天に掲げました。
途端に、様々な感情が流れ込んできました。
苦しくて、辛くて、温かくて、………幸せな気持ち。
恋は綺麗な気持ちだけじゃない。嫉妬や苛立ち、そんな負の感情が沢山渦巻く中で見つけた小さな幸せ。
まるで天からの贈り物のようでした。
王子はルルの事を愛していました。
ルルは王子の事が好きでした。けれど、それは愛ではありませんでした。しかし、それは愛になりました。
「愛してる」
ルルが王子にそう告げた時、王子は幸せそうに笑いました。今までの優しい笑顔とは違う。ルルを喜ばせるための笑顔とは違います。王子自身が喜んでいる笑顔でした。
神々の祝福によって、ルルは『心』を取り戻し、王子と幸せに暮らしました。
今までお付き合いありがとうございました!これにて完結です!
この後は番外編などを書けたらなぁと思っております!
誤字、脱字があればどんどんお願いします……!
本当にありがとうございました!




