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159、お寝坊さんです


「目が、覚めていない?」


 朝、アル様と一緒に朝食を食べに来た。そこでルートお兄様にソフィアの様子を聞いた。そして、ルートお兄様から、ソフィアがまだ目が覚めていないという言葉を聞いた。


「目が覚めていないって、どういう事ですか?夜中に起きなかったのですか?」


 昨日のお昼頃から寝ているのだから、夜中に目を覚ますものだと思っていたけれど、今までずっと寝ていたという事?


「夜中に目を覚まさなかったのか?」

「分からない。ただ、目が覚めたような動きはなかったと思う。」


 ルートお兄様は昨晩、ソフィアと一緒に寝ていたけれど、ソフィアが起きたらすぐに気が付けるように深くは眠りに入っていなかったみたいだ。けれども、1度もソフィアが起きたような動きはなかったという。


「もう少ししたら起きるかなぁ」

「そうだと、私も思っている。だが、さすがに朝食は食べ方がいいと思って起こそうとしてみたけれど、何をしても起きないんだ。」

「何をしても…。」

「ああ、何をしても」


 この「何をしても」っていうのが気になるけれど、もう少し待ったら起きるのではないだろうか。やっぱり朝は眠たいもんね。


「もう少し寝かせてみて、朝食後にもう一度起こしてみるつもりだよ」


 っていうか、ソフィアにしては珍しく寝すぎだよね。いつも私より早く起きているみたいなのに。

 昨日のお昼あたりからずっと寝てるという事ですよね?もうすぐ睡眠時間が24時間になっちゃいますよ?本当に珍しい。


「熱とかはなさそうなのですか?」


「あぁ、それは大丈夫だったよ。多分、今はゆっくり寝てるだけだね。もしかしたら昨日一睡もできなかったんじゃないかな、これだけ寝てるってことは。」


 確かにそうかもしれない。そう思ったらソフィアが今ぐっすり眠れてるという事は、ここが安心出来る場所っていう事だよね?変な夢も見ずに、このままゆっくり眠ってくれていたらいいな。

 でも、起きてくれないとソフィアとお話できないから、つまんない。起きて欲しいっていう気持ちの方が大きい。


「じゃあ、朝ごはん食べたら、私も一緒にソフィアのところに行きます!」

「私も一緒に行くよ」


 私の言葉にアル様も同意してくれた。


 と、ここで。


 私はふとある予感が頭によぎった。本当にふとそんな気がしたのだ。


「ルートお兄様」

「ん?どうしたの?」

「まさかとは思うのですが」

「うん?」

「ソフィアの寝顔を撮ったりしていないですよね?」


 私がそう言うと、ルートお兄様はすーっと私から目をそらした。これはもしや確定ですか?本当になんとなく、たまたまそんな気がしたのですが、まさかの当たりですか?


「ルートお兄様」

「……っ」


 私に責められると分かっているのか、珍しく肩を震わせ、再び私から目をそらした。


「ひどいです!寝ている姿を撮るなんてひどいです!」

「だって」

「だって、じゃありません!ずるいです!私も欲しかったのに!」

「えっ、そっち?」


 あ、違う違う。間違えました。だめだ、思わず本音が漏れてしまった。本音は一旦置いておいて。


「女の子の寝ている姿を撮るなんて、ひどいです!せめて起きている時にしてください!ソフィアもきっと怒りますよ!私だって撮られたら怒りますからね!」

「えっ、だってアル兄上も、」

「ルート。」

 

 ルートお兄様がアル様の方を見て、何か言いかけていたけれど、アル様がルートお兄様に声をかけるとルートお兄様は口をつぐんでしまった。


「シルフィー、よく分かったね。ルートが企んでいたって」

「だって、ソフィアが、「最近殿下が私の事を撮ってくる」って言ってたのです!」

「ああ、なるほどね。シルフィーのファンクラブが使ってる例のあれね。」


 アル様も納得したように、ルートお兄様の方を見た。


「ルートお兄様、ソフィアの姿を撮るのはいいと思うのです、むしろ私も欲しいです。けれど、寝顔はずるいと思うのです!女の子は寝てる時が一番無防備なのですよ!ソフィアだって一番可愛い姿をルートお兄様に撮って欲しいに決まってます!」


 私がそう宣言すると、ルートお兄様は微妙な顔をした。


「……まさか、シルフィーに女心を諭されるとは」


 どういう意味ですか!


「私に女心を諭されるのはおかしいということですか!私だって女の子です!ルートお兄様よりソフィアの気持ちは分かってるはずですよ!」

「でも、だって」


 ルートお兄様は下を向きながら言い訳のように言葉を繰り返す。


「だって。だって、仕方ないじゃないか!ソフィアが可愛すぎるんだから!」


 まさかの逆ギレです。ルートお兄様のこんな姿は初めてです。思わずびっくりして口に含んでいた紅茶を吹き出すところでした。これは惚気ですね。

 気持ちはすっごく分かりますけれど、拳を握りながら眉をしかめて言う事ですか?


「寝てる時のあの無防備な顔だってすごく可愛いんだから!」

「ああ、それは分かる。」

「だろう!」


 あれ、まさかのアル様もルートお兄様の味方ですか?まぁ、確かにソフィアは可愛いもんね!ソフィアの寝顔をアル様が可愛いって思うのも当然なことなのですよ!だって、ソフィアは可愛いもん!


 アル様にそう言うと、アル様に「そういう意味じゃない」と言われてしまった。可愛いのはソフィアの寝顔じゃないって事ですか?どういうことだろう?


「類は友を呼ぶって、こういう事を言うんだなって、なんとなく分かったよ」

「ああ。シルフィーとソフィア嬢が友人なのも、ある意味それだからね。」

「?」


 意味が分からないのですよ。私とソフィアは確かに友達だけれど、どういう所が類は友を呼ぶのだろうか。ソフィアは私と違って可愛いし格好いいし、しっかりしているし、優しいし、私よりずっとずっと素敵な人間なのですよ。


「なんていうか、もう幸せでいてくれたらそれでいいなって思う」

「ああ、わかる。」

「なんていうか、もうこれは信仰に近いよね。」

「わかる。」


 私は全然意味が分からないのですよ!2人で会話しないでください!食堂にいる他の人達は何となく理解してるように頷いているけれど、本当に私だけ意味が分かっていない感じなのです。なんだかよく分からないので悔しいです。





「よし、じゃあ戻ろうか。」


 朝食を食べ終わったので一緒にルートお兄様の部屋に行く事にした。ルートお兄様についていくのは私とアル様だけのはずだったけれど、レオン兄様とディアナお姉様も心配してくれていて、一緒に行くことになった。


「最近シルフィーと遊べてないから寂しいわ」


 ディアナお姉様の言葉に、私も確かにそうだなと思う。ディアナお姉様は私とは違って第1王子の婚約者として活躍している。もうどこにお嫁に出しても恥ずかしくない立派な令嬢だ。もうお嫁には行っちゃっているけれどね。

 だから私が暇でも、ディアナお姉様はいつも忙しいのです。よくレオンお兄様について視察とかに行っているしね。

 私も学園を卒業したらそんな生活が待っているのだろうか。楽しみだけれど忙しいのはあんまり好きじゃありません。私は出来る事なら、毎日ぐうたらと過ごしたいのですよ。目指せ、ダメ人間。


「今度一緒にお茶をしましょう!ソフィアも一緒に!」

「ええ、是非!」


 レオンお兄様も「いいなぁ」と呟いてるけれど、「女子会だから、あなたはダメよ」と、ティアナお姉様にバッサリ切られていました。なんだか可哀想だけど、女子会は楽しみです。


「女子会なら、お義母様も呼びましょう!」


 私の言葉に、ディアナお姉様は「いいわね」と同意してくれた。


 女子会って、どんなお話をするのだろう?実は女子会ってしたことがないんだよね。女子同士でお茶をしていても、大体は他の人が混じっているから。例えばアル様とかルートお兄様とかリシューとか。


 楽しいおしゃべりをしていると、あっという間にルートお兄様のお部屋についた。





 もしかしたら今頃ソフィアはもう起きているかもしれない。


 なんていう希望は打ち砕かれてしまい、私達が行った時にはソフィアまだ寝ているとメイドさんが教えてくれた。


「ソフィア……」


 小さく声をかけながら、ルートお兄様の部屋に入ると、私はその瞬間、息を飲んだ。


「なに…、これ……」


 なに、これ。



 ドアとベッドは少し離れているけれど、ここからでも分かる。


 どうして、

 なんで、









 どうしてソフィアに黒い靄が巻き付いているの?






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