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015、バラ園に行きます


「美味しかった?」

「はい!」


 沢山あったケーキは、流石に全部食べきる事は出来なかったけど、沢山の味を楽しめたので、大満足です。お義母様との面会が終わって、また私達はケーキを食べていた。美味しいけど、絶対2人で食べ切れるような量じゃない。でも、本当によく食べた。お腹がはち切れそう。前世でもこんなに食べたこと無かったよ。はぁ、太っちゃいそう。……太って、ないよね?まだ、大丈夫だよね?子どもだからきっと大丈夫。身長にいくはず……。


「あの、あるしゃま、ていえん、みてみたいです。」


 それでも、食後の運動は大事だよね?け、決してダイエットじゃないよ?ちょっと動きたいなぁって思っただけだよ?


「じゃあ、せっかくだから薔薇を見に行ってみる?王族しか入れないバラ園があるんだ」

「わたしがはいってもいいんですか?」

「うん、私と一緒だから入れるよ?それに、シルフィーは私と結婚するんだから、そのうち行くことになるしね」


 あ、そうか。私はアル様と結婚するんだ。……結婚、出来るかなぁ。アル様の事は結構好きだし、結婚相手としては全然申し分ない。でも、小説の流れがなぁ。15歳で婚約破棄と処刑をされる事になってるけど、今のアル様がそんな事をするとはあまり思えない。小説ばっかり気にしないで現実のアル様を見ようと思ったけど、やっぱり気になるなぁ。


「じゃあ、行こうか。」

「はい!」


 元気よく返事をして、差し出されたアル様の手を取りぎゅっと握る。しかし、アル様は一向に歩き出す気配がない。


「あるしゃま? いかないんですか?」

「ううん、ちょっと待ってね」


 すると、突然私達の足元が光った。え、魔法陣?!よく分からないけど、何か怖い!こんな魔法初めて見た。


「や、こわいっ」


 思わずアル様にぎゅっと抱きつく。


「大丈夫だよ」


 アル様がそう言いながら私の頭を撫でてくれる。それでも怖いものは怖い!何か更に光ってる!もうやだぁ……。怖すぎて涙が出てくる……。


「ごめん、もう少しだから、怖かったら目を瞑ってて?」

「はい……っ」


 あれ、でもアル様が落ち着いてるってことは、アル様が発動したって事だよね?そう思ったら、何だか平気になってきた気がする。


「ついたよ」

「ふぇ?」

「ごめんね、びっくりしたね。最初に転移するって言えばよかった。泣かせるつもりは無かったんだ。」


 そう言いながら、アル様は指で私の涙を拭う。目を開けると、知らない景色が広がっていた。視界いっぱいに真っ赤な薔薇が沢山飛び込んでくる。きっとアル様の言ってたバラ園だよね?とっても広い。こんなところがあったなんて。人間って本当に綺麗なものを見ると言葉が出ないんだね。


「シルフィー、大丈夫?」


 そんなことを考えていると、アル様から声をかけられる。きっと、私が黙っていたから戸惑ったのだろう。


「あのね、あるしゃま。いきなりひかってこわかったの」

「うん、ごめんね」


 アル様が本当に申し訳なさそうな顔で謝ってくる。


「でも、あるしゃまがいっしょだったから、だいじょうぶです」


 そう言うと、アル様は不思議そうな顔をして、ふわって笑った。先程の言葉は私の本心だ。いきなりの魔法の行使には驚いたけど、やっぱりアル様と一緒だと安心するのは本当。驚かせたお詫びなのかは分からないけど、それからアル様はずっと私を抱っこしていた。「重く無いですか」って聞いても、「羽の様に軽いから大丈夫」としか言ってくれない。そんなはずないのにね?もっと重いよ!……でも、重いって言われるよりはいいかな?


「ここはね、第9代リヒト国王が大切にしていたバラ園なんだよ」

「リヒトしゃま?」

「うん、聞いたことあるかな?」

「ないです……」


 勉強不足でごめんなさい……。


「大丈夫、まだ勉強は始めてないって公爵から聞いているよ?」

「でも」

「知らないなら、これから知っていけば良いだけだよ? 皆誰しも最初は知らない事だらけなんだから。」

「はい!」


 リヒト様……。知らない名前なのに。知らない名前のはずなのに。何故だろう、懐かしい感じがする。ティリア王妃様…、お義母様と会った時の様な気持ち。ずっと前から知っているような。とても大事な名前な気がする。


「シルフィー?」

「!?」

「考えこんでいたみたいだけど大丈夫?」

「だいじょうぶです!」


 思わず考えてこんでしまって、アル様が私の名前を呼んでいたのに気づかなかった。


「リヒト国王はね、本当は平民だったけど、王族になった人なんだ。」

「へいみんなのに、おうしゃまになれるんですか?」

「うーん、そう言う訳ではないんだけど……」

「?」

「まあ、当時色々あったんだよね」

「じゃあ、リヒトしゃまはあるしゃまのそせんですか?」

「うーん、まぁ、そんな感じかな?」

「?」


 色々って所が気になるけど、帰ってから勉強しよう。アル様の口からは言い難い事なのかもしれない。それから暫くはアル様と一緒に庭園を見て回った。もう、開いた口が塞がらないとはこの事だよね?綺麗すぎて、ずっと口が空いてたよ。そんな私を見る度にアル様はこっそり笑ってた。……こっそり笑っても気づいてますからね?肩が揺れてますよ?


「あれ?」


 視界に一瞬違和感があった。綺麗なバラ園なんだけど、何か違うって感じた。


「あの、あるしゃま」

「ん? どうしたの?」

「あのね、なにかへんなの」

「へん?」

「ばらえんはね、とってもきれいなの。でもね、なにかちがうの」


 アル様は私の言葉に不思議そうに首をかしげ、思い当たった様に呟いた。


「違う? あぁ、もしかしてあれかな?」


 そう言って私の手を引いて、薔薇に近づいた。


「ここみて。あ、棘があるから触らないようにね。」

「?」


 アル様が指した当たりの薔薇を覗き込んでみると、一つだけ違う花があった。すぐに何の花かわかった。それは私の1番好きな花。


「あねもね」


 白に近い水色のアネモネ。けれど言われなければ気づかないほどの小さな花。


「こんなに小さな花なのに、よく気がついたね」

「どうして1つだけ、あねもねがあるんですか?」

「さっき話したリヒト国王の話は覚えてる?その国王の近衛騎士に1人だけ女性がいたんだけど、アネモネがその女性に似ていたみたいだから、リヒト国王が植えたらしいよ」


 アネモネに似た人ってどんな人なんだろう?薄水色のアネモネだから、髪の色が薄い人なのかな?


「りひとしゃまは、そのひとのことがすきだったのですか?」

「うーん、その辺はまだよく分からないんだ。でも、リヒト国王は誰とも結婚しなかったみたいだからその可能性はあるね」

「……けっこん、しなかったんですか?」

「うん、次の王様は養子だったみたいだしね」


 だからさっきアル様は、私が祖先って聞いた時に微妙な返事をしたのか。でも、王様がお世継ぎを作らないなんて、臣下の人達がよく許してくれたなぁ。


「シルフィー、眠たくない?」


 突然アル様がそんなことを言ってきた。たぶん、頭をアル様に預けてたからそんな事を言ったんだろう。それよりも私をずっと抱っこしてたアル様の方が疲れて無いのかな?


「だいじょうぶです!」

「ほんとに?」


 あぁ、アル様。ほんとに?なんて、聞きながら背中をトントンするのはやめてください!沢山食べて、沢山歩いたから疲れてるんです!そんな事したら寝ちゃう!


「あるしゃま、ねむくないです」

「うんうん。そうだね」


 だから納得しながら背中を撫でないで!あ、頭も撫でちゃダメ!もう本当に寝ちゃう……。


「おやすみ、シルフィー」


 瞼が閉じる間際にアル様の優しい声が聞こえた気がした。


 そのまま寝てしまったけど、私はずっとアル様にぎゅっとしてたみたい。目が覚めた頃には夕方だった。目が覚めたと言ってもすごく眠たくて、アル様の腕の中から仕事が終わったお父様の腕の中に移り、結局そこでも寝てしまって、気がついたらお部屋のベッドだった。着替えはアンナがしてくれたみたいだから、それからご飯食べずにもう一度寝た。


 私を寝てばかりだ。……いいもん!寝る子は育つもん!……たぶん。



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