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156、私はいつも通りです


「いらっしゃい、シルフィー」

「アル様……」


 いつものように、アル様にお茶会に誘われた。けれど、昨日の今日でどう接していいか分からないというのが私の本音だ。


 アル様はいつものように私を歓迎してくれているけれど、私はどう声をかけていいのか分からない。普段通りにするのが正解なのだろうけれど、それでいいのかが分からない。普段どういうふうにアル様と接していたか分からない。だって私の中にはリーアがいるから。リーアは私とは違うと割り切ってはいるけれど、アル様の中にいる人はずっと私の中にいるリーアと会いたかったのだろう。だからそれ全て無視してアル様に接していいのかが分からない。


「あの……」


 言葉が出なくて、スカートをぎゅっと握りしめて、うつむいてしまう。喧嘩をしている訳では無いのに、アル様を見るのが少し怖い。


「シルフィー」


 そんな私を見て、アル様がいつも通り私の手を取り、反対の手で頭を撫でてくれる。


 今更ながらに思い出す。そうか、私はシルフィーだ。リーアじゃない。同時に彼はアルフォンスだ。リヒトじゃない。当たり前の事なのに、多分私の中でまだ消化しきれていない。


「アル様、こんにちは!」

「うん。いらっしゃい」


 そうだ。私はいつも通りでいい。今はいつも通りでいい。今はその時じゃないから。





「今日は何から食べる?」


 園庭に用意してくれている椅子に座ると、料理人さん達が作ってくれているケーキをメイドさん達が持ってきてくれた。そして、私の後ろにいるアル様が私にそう問いかけた。

 私の後ろにいるっていうところに疑問を持ちましたね?でも何となく予想している方もいるのではないでしょうか。私は今、アル様のお膝の上にいます。いつも通りです。


 いつも通りなので、気にしません。


 そして私が要望したものを私の口まで運んでくれるアル様もいつも通りです。もうメイドさんや騎士さん達に見られて恥ずかしいという気持ちは全くありません。………すいません、全くは嘘です。すごく恥ずかしいです。でもやらないとある様が拗ねちゃうんだもん。


「はい、あーん」

「んむっ」


 私が飲み込んだタイミングでアル様が次のケーキを入れてくれる。そして私が喉が渇いた時にはさっと飲み物も与えてくれる。なんていうか、もうお母さんですね。そして私は食事介助をされている赤ちゃんですか?まぁ、楽でいいけれど。


 冬だけど、今日は少し暖かい。だから今日のドレスは少しもこもこ具合が少ない。私的には暑くて困ることはないから、いつでもドレスはもこもこにしてくれた方が嬉しいのだけれどね。さすがに夏は暑いけれど、冬はいつももこもこがいい。でも今日は少しもこもこが少ないから、寒くないけど寒く感じてしまう。その分アル様にぎゅっとしてもらったらあったかく感じるから嬉しい。アル様も私がもこもこの方がぬいぐるみみたいで可愛いって言ってくれるから、きっとアル様も私と一緒でもこもこが好きなんだよね?


「んまーい!」


 最近甘いものを食べていないから、甘くて美味しいのよ!両手で頬を抑えて思わず揺れてしまう。


 ん?アル様、なんかお鼻を押さえてる?鼻血ですか?


「あら、シルフィー、あなたも来ていたの?」


 聞き覚えのある声が聞こえ、振り向いて見ると、そこには私の大好きな親友がいた。


「ソフィア!」


そして、ソフィアの後ろにはアル様の弟であるルートお兄様もいた。


 アル様が許可を出してくれたので、4人でそのままお茶会をする事になった。


 あのぉ、ソフィアが来たので、そろそろお膝から降りてもいいでしょうか?えっ、ダメ?あっ、そうですか。


 きっとアル様の辞書の中には羞恥心という言葉がないのだろう。


 ふと思い出す。やっぱりソフィアはリーアに似ている。髪や目の色だけではない。顔立ちだってそっくりだ。きっとアル様だってそう感じている。けれど、アル様はソフィアにリーアを求めない。そう感じた。


「ルートお兄様も座ってください!」

「うん」


 ルートお兄様はソフィアの手を引きながらこちらに向かってくる。

 そのまま椅子に座……、らない?私達の方を見てくる?


「ルートお兄様?」


 ルートお兄様は私達の方をじーっと見た後に、ソフィアの方を見る


「?」


 ルートお兄様以外はルートお兄様の思考が分からずに、皆、頭にはてなを飛ばす。


「ねぇ、ソフィア」

「はい」


 ルートお兄様はぽつりと呟くように、ソフィアに言った。


「僕たちもしようか」

「何をですか?」

「アル兄上とシルフィーと同じこと。」

「?!」


 ソフィアはびっくりしたようにルートお兄様を見ている。私達と同じ事って、お膝抱っこですか?それは是非是非してみてください。面白いですし。


 でも、ソフィアは顔を真っ赤にしたまま


「無理!」


 と叫んで、私の隣の椅子に座ってしまった。


 それを見たルートお兄様は凄く残念そうな顔をしていたけれど、ソフィアの耳元で「2人の時にね」と呟いたから、ソフィアがもっと真っ赤になってしまった。


 なんだかソフィア可愛いな。そう思ってアル様と目を合わせてくすくすと笑ってしまう。ソフィアは、私達を見て頬を膨らませたけれど、それすらも可愛いと感じてしまう。

 でも、アル様とルートお兄様は、私とソフィアの方を交互に見てやっぱり似てるねと呟く。一体どこがだろう?ソフィアは私よりずっとずっと可愛いのですよ?






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