150、予想を裏切られました
「みぎゃあ!」
私がどうしてこんなに悲鳴をあげてるのかというと、教室に入る前の掲示板、そこには私のファンクラブ「シルフィー様の笑顔を守り隊」の掲示物が展示されていた。いつもはそこに、活動日時とか、集会日時が書かれている。意味が分からないけれど、私のファンクラブ活動の一環らしい。それだけだったらまだいい。意味はわからないけど、いい。けれど、今日そこには、私が昨日久しぶりに二つ結びをした事が書かれていた。それだけならまだいい。いや、よくないけれど、まだいいのだ。でも今回は大きな写真つき、それが何の写真かというと
「本当に何で?!」
流石にしないだろうと思っていたけれど、昨日の前髪ボサボサの私が凄く大きい絵姿になって飾られていた。
これはもう新手のいじめじゃないですか?
「な、なんで?!」
誰のせい?!いや、本当は分かってる。だってこの角度は昨日遠くから私を撮っていた人に間違いない。絶対そうだ。やっぱり無理やりにでもあれを奪っておいたらよかったかな。でもソフィアが怖いし。なんていうか、もう今更だよね。絵姿を撮られるのなんてもう慣れっこだし、このボサボサの前髪も昨日散々ソフィアに笑われちゃったから、ある程度耐性はついた。だからもう遠い目をして諦めるしかないのです。
もう本当にいつ何が撮られているのか分からない。
前に決断したけれど、すぐに挫折したあの決意を再び思い起こすしかないかもしれない。
常に背筋を伸ばして格好良くいること!
…………なんだか少し違うかもしれないけれど、
まあ、無理だけどね!
そして、この絵姿がアル様の元に送られているのなんてこの時の私は知る由もなかった―………。
「そういえば今日はそのまま家に帰るの?」
リシューの問いかけに私とソフィアは頷く。
「うん」
私とソフィアのお泊まりの荷物は、それぞれのお家に送ってくれているみたいだから、私達はいつも通りの軽い荷物でお家まで帰れば問題ないです。
でも、この1週間毎日お城に帰る事が当たり前になっていたから、家に帰るのって何だか不思議な感じ。家に帰るのが当たり前だったのにね。
何よりソフィアと一緒にいられたのも嬉しかった。もちろん、ソフィアのお家に泊まっても楽しかっただろうけど、今回はその分アル様やルートお兄様、お義父様やお義母様とも一緒にいられた。心残りといえば、ソフィアと一緒に夜寝られなかった事かな。まぁ、お風呂は一緒に入れたから、そこは妥協するしかないけど。とりあえず、私の敵はルートお兄様だって事は分かった。だって、ルートお兄様は私からソフィア奪っていくんだもん。
「一緒に来てくれてありがとう」
ソフィアが一緒に着いてきてくれたおかげでとっても楽しかった。夜だけじゃなくて、登校とかも一緒に出来たしね。
「どういたしまして。私も楽しかったわ」
それならよかったです。でも、結婚したら今みたいな生活が続くのかなと思ったらとても楽しみになってきた。
「今度はリシューも一緒にお城にお泊まりしようね!」
「え、あー。うん」
リシューは少し困った顔だったけれど、遠い目をしながら頷いてくれたようだ。…遠い目?なぜ?
実はお友達とお泊まりするのって夢だったんだよね。ソフィアとは一度お泊りをした事があるけれど、リシューとはお泊りをした事がない。異性だから当然だと言えばそうだけれど。あっ、でも。私とリシューは今一緒にお泊まりしちゃうと色々まずいかもしれない。私はアル様の婚約者だしね。
放課後、私は今日生徒会のお仕事も出ずにさっと家に帰ってきた。そしてロバートが「帰ってきたらお呼びします」というのも聞かず、玄関でそわそわとしていた。
まだかな。まだかな
「お嬢様、落ち着いてください、もう少しですから」
「だって」
だってだって。
「!」
馬車の音がした!
カランコロン……
音が止まった!
帰ってきた!
そわそわそわ
きっと、もう少しすればお兄様達は屋敷の中に入ってくる。ロバートが微笑ましい目で見てくるのも気にせず、玄関でうろうろとしてしまう。
ギィ
玄関がゆっくりと開くと同時に、お兄様の姿が見えた。私はその瞬間、お兄様に思いっきりジャンピングぎゅーをした。
「お帰りなさい!」
「おわっ!」
お兄様は突然飛び込んできた私に驚きながらもしっかりと抱きしめてくれた。
お兄様に抱き締めてもらうのは久しぶりだったから、とっても嬉しい。
「いい子にしてたか?」
お兄様が子どもに言い聞かせるみたいに私に言う。
「はい!」
もちろんいい子にはしていたから、迷いなく返事をする。
お兄様の後ろからマリーお姉様やお父様、お母様も帰ってきているのが見えたので順番に抱きついていく。アル様とはまた違う家族の匂いがして、「あぁ、帰ってきたんだな」と感じる。また、皆と一緒にいられるんだなと思った。それがとても嬉しかった。