表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/210

148、これからは一緒です



「はぁ、シルフィーと眠るのは今日で最後かあ……」


 夜、アル様と一緒に寝ようとしたら、アル様が寂しそうに私を抱きしめながらその呟いた。


「結婚したらいつでも一緒に寝れますよ」

「それはそうなんだけど」


 私は何を言ってもアル様は残念そうに私の肩に頭を埋めてぐりぐりとする。


 そんなこと言われたら私だって寂しい。ここ1週間一緒に寝ていたから、一緒に寝るのが当たり前のようになっていた。だから家に帰って1人で寝るのは少し寂しい。勿論家には帰りたい。けれど夜はアル様とまた寝たい。そう思うのはおかしいことではないと思う。習慣はすぐには辞められないものだ。ここ1週間でアル様と寝る事がすっかり私の習慣になってしまっていた。


 だめだ、なんだか本当に寂しくなってきちゃった。


「アル様、ぎゅーです」


 元々アル様は私の事を抱きしめてくれていたけれど、それだけじゃ満足できなくて、私からももっとぎゅっと抱きしめる。本当にどうしてアル様といると、こんなに落ち着くんだろう。


「やっぱりシルフィーといると落ち着くなぁ」


 なんだかアル様も同じ事を考えているって分かったら嬉しい。アル様と出会ったのは12年も前。あの時は緊張してアル様と会うのが怖かった。だって小説の事を考えていたから。アル様と仲良くなったら、ヒロインが現れた時に嫉妬して意地悪をしてしまうと思っていた。でも、ヒロインはとっても優しくて可愛くてなのにアル様と仲良くなるような場面も全然なかったから、嫉妬する暇もなかった。それにアル様はすぐに優しい人だと分かったから、アル様から離れようなんて思わなかった。私がアル様から離れるのはアル様が私から離れた時だろう。


「ずっとずっと一緒だったからね」

「はい」


 12年という月日は、とても長いようで短い。もし100年生きるとしたらそれは十分の一ほどだ。その中でもアル様と一緒に過ごした時間だけを考えると一体どれほどの時間になるのだろう。本当に人生の1割ほどではないのだろうか。そして、アル様が『シルフィー』ではなく私を好きになってくれたというのは本当に嬉しい。アル様は本当に私の事を可愛がってくれている。それは婚約者だからではなく、私だからだと最近分かってきた。


 たった12年という月日だけれど、もっともっと前から一緒にいたのではないかという錯覚さえ起こってくる。アル様は私以上に私のことを知っていると感じる事もある。それはアル様が私の事をずっと見てきてくれていたからだろう。それともアル様が私に何かを求めているのだろうか。私が知らない私をアル様が求めているのかもしれない。


 お兄様の結婚式の時だってそう。私は自分が舞を踊る事が出来るなんて知らなかった。けれど、アル様は私になら出来ると確信を持っていた。その確信はどこから来るのか。私には分からなかったけれど、アル様は知っていたのかもしれない。


「これからもずっと一緒にいたいなぁ」


 アル様が思わずという風に呟く。


「私も一緒にいたいです」

「私達はずっと一緒だったけれど、でも1度離れてしまった。でも、今度こそ守りたいな。守ってもらうんじゃなくて、今度こそ私が」


 アル様は一体いつの事を言っているのだろうか。もしかして私が誘拐された時の事?それとも、盗賊に出会った事?


 首を傾げてみても、アル様はそれ以上言うつもりは無いみたいだった。


 でもアル様の言葉から推測するに、私はその時アル様を守る事が出来たのだろうか。もしそうならば、また私はアル様を守りたい。守ってもらうのが当たり前な私じゃなくて、お互いに守りあえるような存在になりたい。


 その為には


「アル様、私もっと剣の勉強した方がいいかもしれないです」

「ん?急にどうしたの?」

「だって、私ももっとアル様を守りたいけれど、私の剣だとまだまだ勝てないです」

「ふふ、そういうこと」


 アル様は笑ったまま、私の頭を撫でた。


「大丈夫だよ、シルフィーはシルフィーのままで」

「でも…」

「大丈夫だよ。今度こそ私が守るから。あの時の最後は私が守ってもらったから、今度こそ私がシルフィーを守るよ」


 アル様が一体いつのことを指しているのかが分からない。アル様は先程から一体いつの事を言ってるのか分からない発言をする。もしかしたら、それは私では無いのかも知れないと思うけれど、アル様の目線は私に向いているから、きっと私のことなのだろう。私が忘れているだけなのか、それとも私にその自覚がないのか。


「なんだかシルフィーはリーアみたいだね」

「リーア?」

リーア様って確か、ずっと昔のフロイアン国の王様であるリヒト様の騎士として戦っていた人だよね?おぼんで王様を守ったっていう逸話を思った人。


 そんなリーア様と私のどこか似ているというのだろうか?


「2人は似ているよ、やっぱり。誰かを守ろうとしてる時の目が本当にそっくり。」


 そうかなぁ。私はリーア様を見た事が無いからなんとも言えないけれど。きっとアル様はリーア様の絵姿でも見たんだろうね。そんな格好いい人とそっくりって言われるのはなんだか申し訳ない気持ちになってくるけれど、少し嬉しい。リーア様がリヒト様を守ったように、私もアル様を守れるような人になりたいと思う。


「さあ、もう寝よう」

「はーい」


 これからはもっとたくさん一緒にいられる。


 そんな予感を胸に抱いて、私は眠りについた




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ