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146、もっと頑張ります

 今日は久しぶりの魔法の授業があります。


 でもでも、私は退屈なのです。


「フィオーネはそこで見ていろ」

「えー」

「仕方ないだろう、する事が無いんだから」


 むぅー。


 私は端っこの方でぽつんと、ジェイド先生に用意された椅子に座る。

 足をぶーらんぶーらんさせて頬をふくらませても誰も構ってくれない。


 つまんない。


 私は風魔法を結構使いこなせるようになった。そして、今日はまだまだ魔法が苦手な人にペースを合わせている。だから私はやる事がないのです。


 でも、見てるのは退屈だけど、楽しい。矛盾してるよね。でもなんだか本当に楽しいんだ。やっぱり退屈だけど。

 私は魔法使う時はイメージをしてから魔法を使うけど、他の人達はそうじゃない人もいるんだなっていうのが見ていて分かった。やっぱり詠唱が無いと上手く使えない人もいるし、詠唱しなくても手をかざしただけで魔法が使えている人がいる。私は詠唱無しで出来ない事も無いけれど、やっぱり上手に使えない事がある。他の人達を見て学ぶことも結構あるんだな。


 やっぱり詠唱無しで魔法を使っている人はイメージ力が高いんだろうか、それとも慣れだろうか。


 私ももっともっと頑張って魔法の勉強しないとね。


 あと、皆が風魔法を使っているからこの教室はものすごく涼しい。むしろ寒いくらいかもしれない。動いてないと余計に寒く感じてしまう。


 こんな時、リシューがいればなぁ。


 リシューは火の魔法を使うから、それで暖かいのを出して欲しい。むしろ冬って一家に1台、火の魔法の使い手が欲しいんだよね。だって、ここにはストーブとかエアコンとかの暖房器具がないんだもん。石とかに魔法を込めて使う事も出来るけれど、そんなに長時間持続するものじゃないし身体全体が温まるものでもない。それなら前世の知識を活用して作ればいいじゃんと思うけれど、私にそんな知識はないし、技術もない。せいぜい暖かいものが出る器具が欲しいと言って技術者にお願いをするくらいだ。


 皆の様子を見ていて思うけれど、先生以外ではやっぱりソフィアが一番魔法使うのが上手だと思う。多分、前世で色々な魔法の描写を見てきたからこそ、イメージ力が高いんだろう。前にルートお兄様から初めて見るような魔法を使っているって聞いたから、本当にイメージ力だけじゃなくて、創造力とかも凄いだろうね。多分、アニメとかでもいっぱい魔法に関するものはあっただろうし、余計にこの世界の人達より魔法の知識が違う。あと、単純に、ソフィアは魔力量が多いからこの人達よりも長時間魔法を使っていられる。標準の魔力量である私と比べると、ずっとずっとずっと多い。あれだけ魔法を使えたら楽しいだろうなぁと思う。魔法は1歩使い方を間違えると、人を殺せるような力と言われているけれど、ソフィアに関しては問題ないと思う。ソフィアだもん。


 というか、ソフィアも見学でいいんじゃないだろうか。だって、私と同じくらい魔法が沢山使えるよ?

 えっ?ソフィアは見学組だけど自主練習しているだけ?そんなのありですか?なんだか私がサボっているみたいじゃないですか。でも私は見ていろって言われたし。


 まぁ、いっか。みんな頑張れ。


 ジェイド先生は教室内をぐるぐると回りながら、皆の様子を見ていているようだった。ジェイド先生は基本的に魔法を使った事がある人を担当しているけれど、やっぱりその人の中にも魔法を使う事に苦手意識を感じている人が沢山いるみたいだ。それぞれで個人レッスンをしていると思うけれど、それでも全体でゆっくりと進めていくことで、焦らなくてもいいと知らせているのかもしれない。


 そう考えると、退屈なんて感じている私が申し訳なくなってくる。そもそも私は公爵家の生まれだから魔法を学ぶ機会があっただけで、その機会がない人達はやっぱり魔法をすぐ使う事なんて出来ないものかもしれない。やっぱり私は環境に恵まれていただけだ。もしかしたら私は、ロバートみたいな優秀な魔法の先生がいなければ、こんなに器用に魔法が使えていなかったかもしれない。そもそも十歳まで自分の属性も分からなかったかもしれないのだ。

そう考えると、私の人生って本当に恵まれている。奇跡みたいなものだ。


 そもそもシルフィーに生まれ変わったこと自体が奇跡なんだけれどね。


 ジェイド先生をじーっと見つめているだけでも、本当に勉強になる。ジェイド先生は風魔法に関しては本当にプロだと思う。歩きながら、常に風を纏わせているし。ん?これは……、部屋中に風を行きわたらせている?何をしているんだろう?……もしかして風を使って部屋中の声を、先生の耳に届けている?そんなことが出来るのだろうか?音は風に乗ってくるから、その風をただ循環させるだけじゃなくて、最後に自分のところに戻ってくるようにしているのかもしれない。よくよく感覚を研ぎ澄ましてみると、風を最後にジェイド先生の方に向かって行っている。でも、その風は生徒達の魔法の邪魔にならないように、本当にうっすらと、っていう感じだ。こんな制御が難しい事出来るなんて、さすがは先生だ。私は大きい魔法は得意だけれど、細かな制御が必要になってくる魔法は少し苦手だ。


「……。」


 練習したら私にも出来るようになるのだろうか。


 でも出来るようになったら結構便利だよね。常に風を出していくのは、私の魔力量的にも難しいとは思うけれど、短時間なら出来ない事ではないと思う。それに私は、今使える魔法で満足していて、なかなか新しい使い方を覚えようとしなかったから、ちょうどいい機会かもしれない。はっ、もしかしてジェイド先生はそれを見越して私に見学をさせたのかな?


 ま、まさかね。


 確かジェイド先生は本当に少しずつ風を出して部屋中に行き渡らせて、最終的には自分のところに戻ってくるようなさせていたんだよね。


「よし」


 ちょっとずつ風を、ちょっとずつ…、ちょっとずつ。


「ああ!」


 だめだ、どばっと出た!


「むうぅ」


 ちょっと、ちょっと。


「あ、魔法が切れた」


 む、難しい。


 やっぱり魔法を沢山「ばっ」て出すのは簡単なんだけど、少しずつ出すのって難しいなぁ。寧ろ小さい頃の方が得意だったかもしれない。一番最初の頃は「風よ、そよげ」って言ったらそれくらいの風が吹いていたから。やっぱり今は詠唱を使った方が少しずつ魔法を出す練習になるかもしれない。


 ちらっとジェイド先生の方を見ると、ジェイド先生は私の方を見ながら肩を震わせていた!


 下手くそだと思って笑ってますね!


 これからなんですからね!これから頑張って魔法の練習して、ジェイド先生よりもっともっともーっと上手になってみせるんだから!

 

 つまり、私に必要なのは魔力のせいぎょだということですね!





 それにしても、どうしてソフィアは風の魔法が使えるのだろう。


 私は、ソフィアが風の魔法を使うところも、光の魔法を使うところも見ていたけれど、この世界に属性を二つ持つ人はいない。ソフィア1人しか。一体どういう事なんだろうか。やっぱりソフィアが転生者である事も関係しているのだろうか。そうでなければ、納得がつかないけれど、そうなってくると私も属性を二つ使えたりするんだろうか。でも私は他の属性の魔法を使おうとしても全然使う事なんて出来なかった。当然光の魔法も使おうと思ったけど、ソフィアみたいに扱えない。何も発動しなかった。やっぱりソフィアがヒロインである事も関係しているのだろうか。それを知る為に今研究者たちはソフィアの事を調べているんだろうね。


 なんだか小説のお話が終わっても環境に振り回されるのって、ソフィアは本当に大変だなって思う。ソフィアがゆっくりと過ごす日が早く来て欲しいなぁ。




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