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135、お風呂でうさ耳です



「お風呂、お風呂~」


 さてさて、これからソフィアとお風呂です。

 やっぱり夜寝る時にソフィアは譲ってくれなかったけれど、お風呂は一緒に入ってもいいよってルートお兄様から許可をもらえました。さすがに婚約者とはいえど一緒にお風呂は入れないからね。恥ずかしいし。





「本当にあんたって羞恥心ないの?」


 なんだか前も言われたようなセリフだなぁと思いながら私はポンポンと服を脱いでいく。


「うん、ソフィアの前だと大丈夫」


 多分ソフィアが言っているのは、私が友達の前だからとはいえ、恥ずかしげもなく服を脱ぎ捨てているからだろう。普通この年齢の女の子といえば、いくら友達の前だからとはいえ服を脱ぐのを恥ずかしがるものらしい。そして、私にはその羞恥心は全くなかった。でも、ソフィアにはあるみたいで、少し恥ずかしそうにしながらもゆっくりと服を脱いでいる。ゆっくり服を脱ぐから恥ずかしいんじゃないかなぁ、と思う私は本当に羞恥心がないのだと思う。


「だって、ソフィアだもん。」


 さすがに私だって知らないメイドさんとか友達だったら恥ずかしがる。何度も言うけど、だってソフィアだもん。


「早く入ろう!」


 服を全部脱ぎ終えた私は1足先に浴室に入っていく。この浴室は私専用の浴室。何を言ってるんだろうって思うよね。でも本当にこの浴室は私専用にわざわざお義母様が作ってくれたんだ。小さい時から私はよくお城に泊まっていたから、お義母様がお部屋だけじゃなくて、お風呂まで作ってくれていた。実はお部屋とかお風呂だけじゃなくて、洋服を入れるクローゼットとかその他もろもろ、たくさんの施設を私専用に作ってくれていたのだけれど今は割愛させてもらう。

 このお風呂は私専用だけれど、私以外も一緒に入れるほど広い。多分メイドさん達が一緒でも充分入れる。まあ、メイドさんが一緒に入ってくれた事はないけれど。だからソフィアが一緒に入ってくれてとても嬉しい。


「ここも広いわね」


 ソフィアは体にタオルを巻き付けながら、ゆっくりと浴室に足を踏み入れた。


「ソフィアのお家の温泉程じゃないけどね」


 ソフィアのお家は本当に大きなお風呂がある。お風呂というよりは、温泉。本当に大きくて気持ちが良かった。ぜひまた入りに行きたい。


「ほら、シルフィここ座って」


 ソフィアがさしたのはソフィアが座っている前の椅子。なんとなく、次何を言われるか察しました。


「ほら、髪洗ってあげるからここ座って」


 やっぱりですか。


「ソフィア私、自分で洗えるよ?」

「わかってるわよ。でも私が洗いたいの、ほら、はやく」

「はーい…」


 私達同い年なんだけどなぁ。でも、この間、ソフィアのお家に泊まった時も洗ってもらったからあまり抵抗がない。むしろソフィアが頭を洗ってくれるのはとても気持ちいいから嬉しいかもしれない。


「じゃあ、お願いします」

「かしこまりました」


 2人でふざけ合いながら椅子に腰をかける。


「おかゆいところはございませんか?」

「ございません~」

 

 ソフィアが聞いてくれた言葉に反射的に返す。なんだかあれみたい、お医者さんごっこ…、じゃなくて美容師さんごっこだ。


「あんたの髪って本当にふわふわでいいわね」

「そう、私もソフィアのつやつやの髪大好きだよ」

「ふふふ、ありがとう」


 本当に私はソフィアの薄水色のつやつやの髪が大好き。だって、触ったらつるんって指の隙間は通りぬけていくんだよ。前世でもこんな髪質、とっても憧れてたんだよね。もちろん今のふわふわの髪も大好きだけど。


「できた」


 ソフィアの声が聞こえたので、ボーッとしていた意識が取り戻ってきた。そして何ができたんだろうっていう疑問を抱きながらも、何となく予感を感じ、鏡を覗く。するとそこには白いモコモコの泡出てきたウサギがいた。……私の頭の上に。正確にはうさ耳だけど。


「今日はうさぎさんだね」


 以前ソフィアの家のお風呂で入った時は、ソフィアが猫耳を作ってくれた。今回はうさ耳みたい。


 よし、今回もソフィアにサービスですよ、えーと、うさぎの鳴き声は……。あれ、うさぎってなんてなくっけ?まあいいや!


「ソフィア、ぴょんぴょん」


 両手を丸めて肉球みたいにして、ソフィアに向かって鳴いてみる。うさぎはぴょんぴょんとは鳴かないけれど、今回は見逃してほしい。私がソフィアに向かって言うと、ソフィアは手に泡をつけたまま顔を覆って「あざとさの塊……っ」と呟いた。なんか聞き慣れましたね。その言葉。果たして慣れていいのかは分からないけれど。でも、きっと数分すればソフィアも元通りになるとは思うから、しばらく鏡の中の自分のうさ耳でも眺めておこうかな。





「流すわよ」


 急にソフィアのそんな声が聞こえたので、どうやらいつの間にか立ち直ったみたい。


「はーい」


 私がそう言うとソフィアはゆっくりとシャワーで泡を流し始めた。


 私の髪が洗い終わったので、今回こそソフィアの頭を私も洗ってみたいと宣言したけれど、やっぱりソフィアは自分でやった方が早いわと言いながらサッと洗ってしまった。私だってソフィアの髪で遊びたかったのに。もしかして、遊びたいって思ってる事がバレたから自分で洗ったのかな?違うよ、遊びたいって思ったけどちゃんと洗うつもりだったよ。本当だよ?


 まあ、それはともかく、2人とも洗い終わったので、ゆっくりと浴槽に浸かる。


「ふにゅう、あったかいねー」

「そうねー」


 やっぱり日本人はお風呂が大好きなものだと思うのです。元日本人の私とソフィアからすれば、お風呂は大好物。毎日入らないと1日の疲れが落とせない感じがする。疲れだけじゃなくて、汚れも落とせていない感じがするしね。お風呂は大事。


「ねえ、ソフィア」

「なあに?」

「ルートお兄様のこと好き?」


 女の子2人でする事といえば、恋バナしかないよね?私は最近ソフィアとルートお兄様の事が気になって気になって仕方がないのです。

 私がそこまで聞くと、ソフィアは少し顔を赤くしながら小さく「ええ」と呟いた。その答えを聞くと、ソフィアにそこまで想われるルートお兄様が少し羨ましいと思う。と同時に嬉しくなる。やっぱりソフィアは幸せなんだ。ソフィアをここまで幸せに出来るのだったら、ルートお兄様にソフィアを譲ってあげてもいいかもしれない。なんて上から目線で思ってしまう。いいもんね、ソフィアと友達歴は私の方がずっとずっとずっと上だもんね。私の方がソフィアのことを理解出来ているから、私の方が上から目線でも仕方がない。


「ルートお兄様のどんなところが好きなの?」


 そういえば今までちゃんと聞いた事が無かったなぁと思って聞いてみる。ソフィアはルートお兄様のどこが好きなんだろう?優しいところ?それとも格好いいところ?どこだろう。私から見てもルートお兄様は頼りになる。たまに意地悪だけれど。しっかりしてるし、生徒会長としても多くの生徒から慕われている。もちろん王子様っていう要素もあるかもしれないけれど、それでもルートお兄様の元々の性格が多くの女性は引き付けているのも分からなくもない。大体私の周りには素敵な男性が多すぎるんです。だって、女性の買い物に笑顔でついていき、楽しそうに買い物を手伝う男性なんてそんなにいてたまるもんですか。一緒にケーキを食べに行ってくれて、奢ってくれて、お土産まで買ってくれる男性がそうそういてたまるもんですか。


「えっと、その」


 ソフィアは、さっきより顔を真っ赤にする。ルートお兄様の事を考えて顔を赤くしているのだろうか。そう思ったらソフィアはとっても可愛い。恋する乙女は可愛いって聞くけど、本当にそうだね。私もこんなにドキドキワクワクしてみたいものだよ。なんだか今自分がおばちゃんみたいだなって思ってしまった。私はまだ若い若い。大丈夫。前世と合わせるといくら年齢が高かろうと、精神年齢はまだ若い、大丈夫。


「やっぱり……、」

「ん、どこ?」

「素を見せてくれるところかしら」


 ソフィアがやっと一つに決めきれたみたいで、私にそう言ってくれた。素を見せてくれるところ?何となく分からなくもない。やっぱり皆、自分1人の時とは違う外用の仮面というものを持っている。多分アル様だってそう。けれど、アル様はその全ての仮面を外した姿を私に見せてくれている訳ではないと思う。それが少し寂しいとは思うけれど、でも私が頼りないから仕方ないとは思う。きっとルートお兄様は、その仮面をすべて取り去った姿をソフィアに見せているんだなとは思う。あの黒い笑顔のような素顔をソフィアに見せているんだろうなと思ったら、少し複雑だけれど、ソフィアがいいならいいんじゃないかな。ちなみに私は黒い笑顔はいくらアル様のものとはいえどあまり見たくありません。だって怖いもん。私は悪いことをしていないのに、なんだか悪いことをした気分になっちゃう。


 それに、私だって全ての素顔を他人に見せているわけではない。自分なりに見せているつもりではあるけれど、やっぱり他の人には見せられない一面もある。多分私でも無意識だとは思うけれど。でも、きっとそれは私が見せたくないと思っている自分だと思う。私は私が見せたい私だけを皆に見せたいと思う。それは悪いことだろうか。でも、誰にでもそういう気持ちはあるとは思うんだよね。


「そっか」


 私が1人ニヤニヤしていると、ソフィアはさっきより顔赤くしながら


「もう上がるわよ!」


 と言って浴室出て行ってしまった。残念、もう少し話したかったのに。お風呂場で長話はのぼせたらいけないから、諦めるのが正解かな。勿論、今のところはだけど。そのうち2人で、もっと恋バナしてみたいな。




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