134、大好きな人とは一緒に寝たいです
アル様は本当に夕食の時間になったら起こしてくれた。驚くことに、ずっとアル様のお膝の上で眠っていた。アル様、お膝しびれていないのかな?アル様はお仕事が終わってからも私を降ろすことなく、ずっと私の寝顔を眺めていたみたい。楽しいのかな、それ?
でも、1度寝てしまうと、まだまだ眠たいので二度寝をしようとしたけれど、アル様が「夕食はハンバーグだよ」と言ったので思わず飛び起きてしまった。そんな私を見てアル様はクスクスと笑うけれど、ご飯を持ち出すなんて卑怯だと思う。眠たいけれどハンバーグが大好きなんだから、起きざるを得ないよね、そんなの。
アル様と2人で食堂に向かっていると、同じく食堂に向かっていたルートお兄様とソフィアに出会った。
「2人は一緒にいたの?」
ソフィアはレッスンじゃなかったのかな?あ、もしかしてレッスンが終わったからルートお兄様といたのかな?
私がそう聞くとルートお兄様の口から驚きの事実が伝えられた。
「うん、僕の部屋の隣にソフィアの部屋を用意してもらったから、そのお披露目をしてたんだ」
な、なんと。
ルートお兄様のお部屋は、アル様のお部屋と少し離れているから、そんなお披露目をしていたのに全然気づかなかった。
「私もソフィアのお部屋みたいです!」
「うん、また後で見においで」
どうせなら、さっき一緒にお披露目の時に見たかったなぁ。でも私は寝ちゃってたから、多分気を使って起こさなかったんだろう。全然起こしてくれてもよかったのに。果たして起きるかは分からないけれど。でも私もお披露目の時に一緒に見たかった。そういえば、ソフィアのお部屋も、お義母様が用意してくれたのだろうか?私と同じかんじでフワフワのヒラヒラのお部屋かなぁ?私のお部屋は私が小さい時に用意してくれたものだから、とっても可愛らしいものだけれど、ソフィアは今15歳だからもう少し落ち着いた雰囲気のお部屋になっている可能性も高い。私はもう15歳だから落ち着いたお部屋にしてもいいかなぁとは思うのだけれど、でも、それでもふわふわヒラヒラしたお部屋がとっても可愛いから、もうしばらくはこの可愛いお部屋がいいなと思ってる。
あ、そういえば、ソフィアのお部屋にはちゃんとベッドがあるのかな?まぁ、それは後で見たらわかることだよね
「今日はハンバーグですよね!」
楽しみすぎて仕方がない。ここのハンバーグはとってもふわふわで美味しい。お城の料理人はお料理がとっても上手で、何を食べても本当に美味しいから大好き。もちろんフィオーネ公爵家のご飯も美味しいからとっても大好きです。でも料理人によって作り方とか味とかも全然違ってくるから、どっちもそれぞれの良さがあって大好き。そういえば最近あまりお菓子作ってないなぁ。全然忙しくはないんだけれど、作りたいって思う事があまりないかも。まぁ理由は分かりきってるのだけれど。わざわざ私が作らなくても美味しいものが出てくるからね。私は作るのも大好きだけど、それ以上に食べる事の方が大好きだから、目の前にお菓子が出てきたら満足しちゃうのは仕方がない。
「デザートは何かなぁ」
「さっきケーキ食べたのに、まだ甘いもの入るのね」
ソフィアの呆れた声が聞こえた気がしたけれど、きっと私の気のせいだろう。
「こんばんは!」
食堂に入ると、お義父様、お義母様、レオンお兄様やディアナお姉様が座って待っていた。
「遅くなってごめんなさい」
そう言うと、皆「今来たばっかりよ」と言って微笑んでくれた。優しい人ばかりで、とっても素敵。こんな素敵なところに、お嫁にこれるなんて、私はとっても幸せ者だ。嫁姑問題とか無縁だと思う。本当にありがたい。何より私が小さい時からみんな知り合いだから緊張とかもしないしね。そう思うと、私の身分が高くて良かったなと思う。ソフィアはまだ少し緊張しているみたいだけれど、ソフィアも王家のみんなもとっても素敵な人だからすぐに仲良くなれると思うな。
「「今日からお世話になります」」
私とソフィアが2人でそう言うと皆賑やかになって嬉しいわぁと言ってくれる。私達が皆結婚したら毎日こんなに賑やかになるんだなぁと思うと、とっても、これからが楽しみ。
私達が全員席に着くとメイドさんが料理をおいてくれた。ここの料理はきちんとしたコース料理の日もあれば1度にたくさんの料理を机に置いてくれる時もある。その日に来ていたお客さんとか、皆の気分によるみたい。
私はどちらかというと、コース料理も好きだけれど、机にたくさんの料理を置いて、それを選びながら食べる方が好き。もちろん余ったら捨てるんじゃなくて、他の人で全部食べてもらえるみたいだから、遠慮なく好きなものを好きなだけ食べられる。
「シルフィー様、まず何をお取りしょうか」
メイドさんがそう聞いてくれたので、私は迷わずハンバーグと叫ぶ。だってアル様に「今日の晩御飯はハンバーグ」と言われた時からずっと食べたくて仕方がなかったんだもん。
「おいしそう…」
よだれがたれそうになるのを頑張って我慢する。
「いただきます!」
ハンバーグの中には沢山お野菜も入っていて、食べると肉汁もたくさん溢れてくるので、美味しくて美味しくて仕方がない。こんなに美味しいご飯を毎日食べられるって考えただけでもアル様と結婚する意味があるってもんだよね。美味しいご飯は人を幸せにするっていうけど、本当にそうだと思う。もし美味しいご飯がなかったら、私はどうしてたんだろうか。前世の記憶を使って美味しい料理を広めたかな。いや、私にはそんなこと出来ないだろう。誰かが広めるのを待って、私は今あるご飯で我慢していたかもしれない。そう思うと、美味しいご飯が発達している世界でよかったなと思う。本当に。
「おいしい」
ソフィアも私と同じようにそうやって呟いているのが聞こえた。日本人としてはハンバーグは子どもが大好きな定番料理と言ってもいいほどの大好きなご飯。勿論子どもだけじゃなくて大人も大好き。私はどちらかというと大きいハンバーグよりも一口で食べられるような小さいハンバーグが好きだった気がする。小さい一口ハンバーグって何か特別感がある気がするんだよね。味はどっちもすっごく美味しいけれど。
「美味しいよね」
私がそう呟くとソフィアも頷き返してくれた。
ディアナお姉様はいいなぁ、レオン兄様と結婚して毎日こんなに美味しいご飯を食べられるんだから。私も早くアル様と結婚して、ここのご飯を毎日食べたいなぁ。あっ、でも公爵家のご飯もとっても美味しいからそっちが食べられなくなっちゃうのは残念かもしれない。何日かに数回家出して公爵家に帰ろうかな。でもそうしちゃうと、アル様が拗ねちゃいそうなんだよねー。アル様と喧嘩した時には絶対に公爵家に帰るようにしよう。それで美味しいものを食べよう
「あっ!あっちのサラダも食べたいです」
私が思うに、サラダにゆで卵が入ってるのってすごく贅沢だと思うんだよね。サラダに卵が入ってるのってよくあるって思うけれど、ゆで卵を作るのは本当に面倒だなって思う。私が作れないだけだけれど、私がゆで卵を作るとすると、かた過ぎたり、温泉卵になっちゃったりする。温泉卵は温泉卵で好きなんだけれど、ゆで卵が食べたい時に美味しいゆで卵ができないのは少し残念なんだよね。
あっ!アル様が食べてるじゃがいももとっても美味しそう!
「アル様、じゃがいも一口ください!」
私はそういうとある様は微笑みながら一口分のジャガイモをフォークにとってくれた。
「はい、あーん」
「あーん!」
うん。ホクホクで美味しい!
この1週間、こんなに美味しいご飯を食べられるなんて本当に幸せでしかない。
「そういえば、シルフィーとソフィアは今日どこで寝るの?」
お義母様が突然思い立ったようにそう聞いてくる。でも、そのことに関しては私も文句があるのです。ルートお兄様に!
「あのね、お義母様聞いてください!私は今日ソフィアと一緒に寝たかったけれど、ルートお兄様がソフィアと一緒に寝たいって言って私に譲ってくれないんです!」
私が頬を膨らませて、そこまで言うとお義母様は呆れた目でルートお兄様を見た。
「ルート、また変な独占欲を発揮して……」
お義母様はため息をつきながらそう言うけれど、お義父様はルートお兄様の気持ちがわかるようで、ルートお兄様の方を見ながらうんうんと頷いている。
「分かる。分かるぞルート。好きな子とは一緒に寝たいもんな」
よく見たら、お父様だけじゃなく、レオンお兄様も頷いている。確かに分からない事もないのですよ。私も好きな人とは一緒にいたいし。だからこそ、ソフィアと一緒にいたいのに、ルートお兄様が私からソフィアを奪うんだもん。
「だから今日、ソフィアはルートお兄様のお部屋で寝るみたいです……」
「えっ」
私が頬を膨らませながらも、今日ソフィアがどこで寝るか説明すると、ソフィアは驚いたような顔をした。
「えっ?」
ソフィアの疑問に、思わず私も疑問を返す。だって、ソフィアは今日はルートお兄様と一緒に寝るって言ってたよね?どうしてソフィアが意味がわからないっていう顔をしているんだろう。
「ルートお兄様、今日ソフィアと一緒に寝るのですよね?」
私はルートお兄様に聞いてみるけれど、ルートお兄様も微妙な顔している。
「?」
どうして返事をしてくれないんだろう?
「ルートお兄様がソフィアと寝ないのだったら、私がソフィアと一緒に寝てもいいですか?」
思い切って期待を込めてルートお兄様に尋ねてみるけれど、やっぱりルート兄様から返ってきた返事はノーだった。
意義ありなのですよ。
私は1人頬を膨らませているとルートお兄様は決意したように、私に聞いてきた。
「ちなみに今日シルフィーはどこで寝るつもりなんだ?」
どうしてそんなことを聞くんだろう?そんなの決まっているよね?
「私はソフィアが一緒に寝てくれないなら、アル様と一緒に寝ますよ?」
「そうか……」
私はそこまで返事をするとルートお兄様はアル様に向けてかわいそうな、それでいて勇者を見るような不思議な目線を送った。
これに関しては私もソフィアも意味が分からないけれど、私とソフィア以外の人は意味が分かっているみたいでため息をついていた。
でもやっぱり意味が分からなくて、ソフィアと一緒に首を傾げてみる。
結局今日は私とソフィアはどこで寝ればいいのだろうか?アル様とルートお兄様と一緒でいいのかな?
思い切ってソフィアに聞いてみればいいんじゃないかなと思って、ソフィアに尋ねようと思ったけれど、そういえばソフィアはルートお兄様を選んだんだった。私は既にソフィアに振られているんだった。
「ソフィアは今日、ルートお兄様と一緒に寝るんでしょ?」
私がそこまで言うと、ソフィアは顔を赤くしながらも「そのつもり」と言った。だってそうだよね。ルートお兄様はソフィアと一緒に寝るって言ってたもんね。「夜になったら僕にソフィアを返して」って言ってきたもん。ソフィアはまだルートお兄様のものじゃないけどね!
「もうこの話はおしまいです!」
だってさっきから皆が話してる事がよく分からないんだもん。仲間外れにされたみたいで、ちょっと悲しい。だから、勝手に話題を終わらせます!
仕方ないからしばらくはソフィアをルートお兄様に譲ってあげるのです。私は寛大な心を持っていますので、仕方なく、本当に仕方なく許可してあげるのですよ。
お母様の問いにも答えられた事なので、このお話は本当におしまい。でも、お風呂だけはソフィアと一緒に入りたいです。