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132、裏取引がありました


 帰りの馬車は何て言うか、面白かった。面白かったと言うとソフィアに失礼かもしれないけれど、でもなんだか面白かった。ルートお兄様がソフィアの手を握り、ソフィアが恥ずかしがって頑張って外そうとしていたり、ルートお兄様がソフィアの頭を撫でて、ソフィアが恥ずかしがってその手をどけようとしていたり。

 なんだかルートお兄様と2人っきりの時のソフィアを見てみたい気もしてきた。けれど、悔しい気持ちもしてきた。とりあえずソフィアとルートお兄様がとっても仲良しだっていう事がよく分かった。でもなんだか仲間外れにされたみたいで寂しかったから、私も2人の間に無理やり入り込んだ。そして、とりあえず頭を撫でられておいた。二人がイチャイチャするのは私が居なくなってからでいいと思うのですよ。なんで私がいる時にするのかな?……もしかして私とアル様が普段二人で仲良くしてる時って傍から見たらこんな感じなのかな?私的にはただ普通にアル様と仲良くしているだけだけれど、傍から見たら今のソフィアとルートお兄様みたいに見えるのかな。ちょっとこれから考えた方がいいかもしれない。そんなつもりはなくても、私とアル様のせいで周りに多大な迷惑を与えている可能性が出てきた。でもアル様とぎゅっとするのなんだか好きなんだもん。仕方ない、周りの人に頑張って耐えてもらおう。いや、でも私は別にイチャイチャしているつもりはないから周りに耐えてもらう必要もないね。やっぱり普通にしてるだけだもん。普通にアル様と仲良しなだけだから大丈夫。ソフィアやルートお兄様みたいに二人の世界には入り込んでないもん。





 お城に馬車がつくと、門の前にアル様がお迎えに来てくれていた。


「アル様!」


 思わず大きい声でアル様を呼んでしまったけれど仕方ない。これは条件反射です。そして、アル様が両手を広げて私を出迎えてきてくれた。


「ぎゅーっ!です!」


 そして、それに抱きつくのも、条件反射だから仕方がないのです。


「おかえり、シルフィー」

「ただいまです!」


 やっぱりアル様の腕の中はとっても落ち着くのですよ。ルートお兄様とソフィアがなんだか呆れた顔で見てくるけど、そんなのは知らない。2人だってさっきまでこんな感じだったじゃないですか。私だって、2人みたいにアル様と仲良しになってもいいんですよ!


 あっ、そうだ、アル様に教えてあげよう。


「あのね、アル様。馬車でね、ソフィアとルートを兄様と一緒に帰ってきたんだけどね、2人ともずっと馬車の中で仲良ししてるの。私がいるのに酷いとは思いませんか?だからね、私2人の間に入り込んでやったんですよ、偉いと思いませんか?」


 ……あれ?

 思わずドヤ顔で私がやった事をアル様に報告するけど、傍から聞くと、私は仲良しの2人の邪魔者になっただけじゃないのかな?違うんだよ、私はソフィアとルートお兄様がずっと私をほって仲良ししてるのをアル様に報告したかっただけなのよ。決して私が邪魔者になったっていう話をしたかった訳じゃないの。


「そっか、シルフィーは寂しかったね」


 そう言ってアル様は私の頭をゆっくりと撫でてくれる。

やっぱり私のこの気持ちはわかってくれるのはアル様だけですよ。まあ、それはともかく。


「今日からお世話になります!」


 今日から本当にお世話になります。お城にお泊まりするのは慣れてはいるけれど、学園からそのままお城に行ってお泊まりするのは初めてかもしれない。なんだか学校帰りに寄り道したみたいで罪悪感が少しあるけど、悪いことはしないから大丈夫だよね。


 私はアル様に抱っこされたままお城の中に入っていく。いつも思うけれど、本当に私は重くないのだろうか?もう15歳ですよ。子どもじゃないんですよ。もうすぐ大人ですよ。

 重いって言われるとそれはそれで複雑だけど、軽いって言われるのもなんだか小さいって言われているみたいで少し複雑。結局どっちでも複雑なんだから自分でも面倒くさいなぁと思う。でもアル様の感想はいつだって「軽い」しかない。つまりいつも小さいって言われてるみたいで少し悲しい。いやでもやっぱり重たいって言われるよりはいいかな。もう自分でもわかんないや。とりあえずアル様に抱っこされるのは好きだからこのままでいい。

 いや、いいのかな女性としてダメな気はするけど。歩いて行く途中にメイドさんとすれ違うけれど、私がアル様に抱っこされてるのはいつものことだから、もう皆何も言わない。むしろ微笑ましい顔で見てくるだけ。私もそれをあんまり恥ずかしいと思わなくなってきているのが、なんだかダメな気がする。昔はそれでも恥ずかしがってアル様の肩に顔をうずめてたんだけど、最近は本当になんとも思わない。寧ろアル様と顔が近くなって、なんだか嬉しい。背も高くなった気分になるしね。


 あ、そういえば言っておかないといけないことがあったんだった。今日の学園であった事。


「アル様!」

「ん、なあに?」


 近くにあるアル様の顔を見て思いっきり眉を寄せる。自分なりに頑張って怖い顔をしているけれど、果たして出来てるのかが分からない。


「私怒ってるんですからね!」


 頬を膨らませてアル様を見る。でもアル様はよく分からないみたいで、戸惑いながら首を傾げている。アル様は自分が何をしたか覚えていないんだ!なんて事!

 後ろでクスクスと笑っているソフィアも同罪ですよ。ソフィアだって私の許可無しで色々とやってるんですから。


「なんでルアちゃんにあの許可を出したんですか!」

「えっ、何のこと?」


 ここまで行っても分からないんですか?!


「私の絵姿を残す許可ですよ!」


 私がそこまで言うと、アル様は私が何の話をしているのかは分かったみたい。そして何の悪びれもなく、


「だって、私はシルフィーの学園のでの姿知らないでしょう、そうでもしないと見られないじゃないか」


 と言った。いや、見なくてもいいんですよ?大体、学園祭の時に私の絵姿を散々見たじゃないですか。それで十分満足してくださいよ。


「アル様が許可しちゃったから、学園内でも私の絵姿を残そうとしてる人がいるんですよ!大体、アル様は本物の私が見られるんだから、学園での私の絵姿なんて必要ありません!」


 私だって学園にいるアル様の姿なんて全然知らないのに。アル様だけが私の学園での姿を知っているなんて、なんだか不公平じゃありませんか?まぁ、私が学園に通っているアル様にあんまり興味がなかったって言われるとそうかもしれないけれど。だって、アル様とは高頻度で会っていたからね。でも今更気になってきた。だって、お兄様達は学園にいるアル様は、私に見せる顔とは全然違う顔をしてるって言うんだもん。一体どんな顔なのだろうかって気になるじゃないですか。私は私に接する時のアル様の顔しか知らないし。


「え、必要だよ。私はシルフィーの全部を知りたいんだから」

「ダメです!」


 だって、あのカメラみたいなもので、いつ写真を撮られるか分からないって考えたら気が休まらない。まぁ、そこまで背筋を伸ばしながら学園生活を送ったことなんてないけれどね。ただ、いつ撮られるか分からないから不細工な顔をしていないかが心配。


「あっ、そういえば殿下。今日もいくつか絵姿を収めたので後でお贈りしますね」

「ああ、頼む」


 ソフィアがいきなりアル様にそう話しかける。ちょっと待ってください。その絵姿ってもしかしなくても今日撮った私の絵姿の事でしょうか?


「その代わり、例の物をお願いしますね」

「ああ、勿論。そういう契約だしね」


 えっ


 まさかのこんなところで堂々と裏取引が行われていたなんて!例の物って一体何ですか?契約って何ですか?一体いつの間に2人の間でそんな取り引きが交わされていたのだろうか。嫌な予感しかしないけれど、同時に首を突っ込むと後悔するような気もする。これは知らないふりをした方がいいのだろうか?…………そうしよう、なんだか黒い笑顔の2人に関わるといいことがない気がする。

 というか、ソフィアやリシュー、ルアちゃんが持っているような石をアル様が持っていないはずがない。もしかしたら私が知らない内にアル様もその石を使ったのかもしれない。私以外のものをとったならいいけれど、なんだか嫌な予感がするのですよ。


「まさか、アル様はあの石を私に向けて使ったことなんてありませんよね?」


 私は今アル様に抱っこされている為、アル様の顔は私の目の前にある。そのアル様の両頬を私の手で押さえながら、私の方に向かせる。嘘は許しませんよ。


「……」


 ちょ、なんですかその沈黙は!


「と、とってない」


 アル様は目を逸らしながら、私にそう言った。でも、目を逸らしている時点で撮っていると言ってるようなものだと思う。


「アル様、いつ撮ったんですか?」

「…とってない」


 まだ嘘をつきますか。こうなったら私の必殺技を使うしかなさそうですね。


「…嘘をつくアル様は嫌いです」

「!!」


 私がそういうとアル様は凄くショックを受けたような顔をした。そんなにショックな顔をするなら、嘘をつかなければいいと思うのは私だけですか?そんなことないよね。嘘をつくある様が悪いんだよね?


「シルフィそれはさすがに…」

「ええ、さすがに殿下が可哀想ね」


 でも、ルートお兄様とソフィアはアル様の味方みたいで、アル様に同情の目線を送っている。えっ、これ私が悪いんですか?勝手に私のことを撮ったアル様の方が悪くないですか?私がじーっとアル様の事を見ていると、アル様はとうとう観念したみたいで、ゆっくりと口を開いた。


「シルフィーの、寝顔をちょっとだけ……」


 ちょっとだけって何ですか、アル様のちょっとって本当にちょっとですか?というか、寝顔は卑怯だと思うのです。人の寝顔を撮るのはずるいのです。大体私の寝顔なんか撮って何が楽しいんですか?というか、いつ撮ったのですか?

 まぁ、撮ったものは仕方がないのですよ。

 私の寛大な心で許してあげなくもないのです。


「ま、まあ2、3枚なら…」


 私がそう妥協をすると、アル様はすーっと目をそらした。


「アル様?」


 もしかして、3枚以上撮ってます?何枚撮ったのですか一体。

 寝顔なんて一枚で十分でしょう。撮るたんびに私の寝顔が変わるわけでもあるまいし。もしかして、寝顔以外も撮ってますか?


「枚数はまあ、うん。まあね、そんなことは置いといて」


 あ、アル様話をそらしましたね。

 まあいいです、今回は許してあげましょう。それよりも私、連れて行きたいところがあったんですよね。あ、アル様の事じゃないですよ。ソフィアのことです!


「あのね、ソフィア一緒に行きたいところがあるの」

「行きたいところ?」


 ソフィアはきょとんと頭を傾ける。あら可愛い。


「うん、私のお部屋!」


 アル様達が私の為に用意してくれた、アル様のお部屋の隣の私のお部屋。実はまだソフィアに案内した事が無かったんだよね。ベッドは無いけれどふかふかのソファーとかもあるし一緒にそこで今日の課題をしてもいいかなと思ってた。


「いいわね。1度行ってみたかったのよね」

「やったぁ!」


 ぴょんとアル様から降りてルート兄様と手を繋いでいたソフィアの手を引っ張る。

 ソフィアと手が離れた途端、ルートお兄様がなんだか悲しそうな顔をしたけれど、ルートお兄様は夜になったら私からソフィアを奪うんだから今くらい我慢してください。


「じゃあ、行こう!」


 ソフィアと一緒に私のお部屋の方へ足を進める。


「じゃあ、ご飯の時間までソフィアと一緒に遊ぶので、あっ間違えました、課題をするのでまたご飯の時間に会いましょう!」


 そう言うと王子様2人はなんだか寂しそうに手を振った。





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