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131、生徒総会の意見まとめです

 

 『シルフィー様の笑顔を守り隊』で、色々あったけれど私は心が広いので許してあげることにしました。怒ってもキリがないというのが正直なところです。技術の開発自体は喜ばしい事だもんね。ただ、それを私のファンクラブに使うのはやっぱり勿体ない気がするけど。それでも諦めが肝心だと最近学びました。


「ほへぇ…。今日も書類いっぱいだぁ」


 生徒会室に来てみると、今日は久しぶりに書類が溜まっていた。リリーお姉様とルート兄様は涼しい顔をして椅子に腰掛けているけれど、生徒会室に入ってきた私とリシュー、ソフィアは顔を引きつらせながら書類を睨んでいた。こんなに書類があるのは、あの時以来だと思う。私達が初めて本格的に、生徒会のお仕事を手伝った日。あの時は本当にびっくりした。毎日あの沢山の量の書類に囲まれ続けるのかという恐怖を抱いた。結果的にそれは新しい年度が始まったからだという事を知ってものすごく安心した。正直、私は書類仕事は苦手ではないけれど、毎日この量をやっていたら手と脳が死んじゃう。それに遊んでいる暇もないし、美味しいケーキを食べる暇もないから、私の心が本当に死んじゃう。私は1日最低一個以上の甘いものを食べないと体がもたない、…ような気がする。本当にもたない訳ではないけれど、でも甘いものが大好きだから毎日食べたい。ケーキはいくら食べても飽きないのです。なにせ私は1日に何個ケーキを食べたとしても胃もたれとは無縁の体ですからね。本当に素晴らしい体です。産んでくれたお父様とお母様、本当にありがとうございます。これからもこの体を大切にして、おいしいケーキを食べ続けていきたいと思います。


「あぁ、生徒総会の為の要望が結構たまっていてね。」

「生徒総会?」


 そんなのあったっかな?少なくとも私が生徒会に入ってからは1度もやっていない。生徒総会っていう名前からすると、全校生徒で何かを話し合うのかな?


「生徒総会は意見箱に集まった意見を吟味するための会なんだ」

「ふぇ~」


 やっぱりそんな感じなんだ。でもこの世界でもそんな事をするんだ...。


「前に説明したけど、やっぱりシルフィーは聞いていなかったか…」


 え?前にも説明してたんですか?!聞いてないですよ?聞いていたら、ちゃんと覚えてるもん!も、もしかして…


「うん。シルフィーは、ケーキを食べててふにゃけてたからね」


 やっぱりぃ…!というか、私がケーキを食べている時に大事なことを言うのは卑怯だと思うのです!前にも同じことありましたよね…。あの時は確か、学園祭の生徒会の出し物の景品を誰にあげたかっていうのを説明する時に、私はケーキを食べていたんだよね。あの時はまだそこまで重要な話題じゃなかったからいいけど、生徒総会の話は重要だと思う。聞いていない私も私だけれど、ケーキを食べている時は話を聞いてないっていう事をルートお兄様は知っているはずだから、やっぱりお仕事中に大事な話をしなかったルートお兄様にも問題があると思うのです。責任は人に押し付けるべき。なので、私がお話を聞いていなかった責任は、ルートお兄様に擦り付けようと思います。私悪くないもん。


「あ、ということは、このたくさんの書類ってもしかして?」

「うん。意見箱に入っていった書類だよ。」


 その量は全部を積み重ねると10センチを軽く超える。思ったよりもたくさん意見が集まっているみたい。意見箱は学園内に全部で五か所設置しているみたいだけれど、どれも結構いっぱいまで埋まっていたらしい。前世でも意見箱があったりしたけれど、あんまり入れようとかは思ったことなかったなぁ。誰かが入れてくれるだろうっていう考えもあったし、特に変えたいって思う事もなかったからね。小学校はどちらかというと先生が作ったルールに私達が従うっていうのが基本的だった。でも、この世界では生徒が主体となって学園を運営していく。だからこそ、ルートお兄様は生徒会長として本当に頑張っている。もし……、本当は考えたくないけど、もし、もしだよ?ルートお兄様が卒業しちゃったら、次の生徒会長と副会長はどうなるんだろう。生徒会長はもしかしたらリリーお姉様がするかもしれないけれど、副会長は誰になるんだろう。ルートお兄様は本当にしっかりしていたからいなくなったらすごく心細い。だって、リシューとソフィアにいじめられた時に頼れるのがいつだってルートお兄様とリリーお姉様だった。ルートお兄様も卒業して、リリーお姉様も卒業してしまったら、私は一体誰を頼ればいいのだろう。いや、本当はリシューとソフィアが私の事をいじめなければいいんだけど。2人は愛情の裏返しだと言っていつも私の事をからかってくる。でも、それで本当に悲しい思いをしたことはないのだから、あまり文句を言えないのが本当のところだ。もちろん2人の事は大好きだから本当に愛情の裏返しっていうことは分かっているけれど、でもたまには私に優しくしてくれてもいいんだよ?


 意見箱の事に話を戻すけれど、本当にたくさんの人が意見を出してくれたみたい。そうなると意見箱に紙を入れてくれた人達はこの学校の運営に関して何か気になることがあったのかな。こんなに沢山入ってるんだから、もしかしたら生徒会への苦情もあるかもしれない。そうなったら少し悲しいなぁ。私たちは頑張ってお仕事とかをしているけれど、もしかしたら一般生徒にとってよくないこともあったかもしれない。でもそういうのを直していくための意見箱なんだよね。もしかしたら、私達にとって良くない、又は困る意見があるかもしれないけれど、同じくらい皆も困ってるって事だから参考にしていくのが生徒会のお仕事。よし、頑張ってチェックしていかないとね。


「じゃあ、ルート兄様、私はこの束から見ていきますね」

「うん、お願い。同じような意見があったら、それごとにまとめていってくれるとありがたい」

「分かりました」


 まず一枚一番上にあった紙を取って内容を読んでみる、えーと、なになに、花壇の花の種類を増やして欲しい。なるほど、確かに学園の園庭はとってもとってもとーっても素敵だけれど、もっと色んな花の種類があっても綺麗かもしれない。だからといってむやみに植えるっていうのもね...。ここはセンスの見せ所かな。とりあえず、この案は検討するっていうことで。次はえーと、テイクアウトの昼食を増やして欲しい。なるほど、確かに。学食の席は限られている。全員がそこに座れるわけではない。お昼ごはんを元々持ってきている人はいいけれど、持ってきていない人はどこかで買うしかない。そして買う所は学食以外には選択肢がない。もしテイクアウトの昼食が買えなかったとしたら、学食で買うしかない。けれど、その学食を食べるためには、まず席を取らないといけない。椅子がないと、昼ごはんが食べられない。私は今までお昼ご飯が食べられないという事はなかった。けれど、もしかしたらお昼ごはんが食べられない人もいたかもしれない。確かにこれは生活に関わるから検討が必要だね。私なら、もしお昼ごはんが食べられなかったら、すっごくすっごくすっごく悲しくてお腹が鳴りそう。みんなが静かに授業受けてる時に、いきなり「ぐぅ~……」っていうお腹の音を鳴らしちゃいそうで怖い。よし、これはぜひぜひ検討しよう。


「みんなちゃんと考えてくれてますね」

「そうだね。僕達だと気づかないことも、生徒が気付いてくれるから本当にありがたいよ。」


 ルートお兄様が言った言葉にリシューもソフィアも納得したように頷いた。私達は全員貴族だから、やらなければいけないとは分かっていたとしても、なかなか平民の気持ちになって考えることが出来ない事もある。今回の学食の話だってそうだ。私の場合はファンクラブの人達が譲ってくれる。人が多い時も大体は席にありつけるけれど、他の人はそうはいかない。もしかしたら私の為に席を譲ってくれた人の中には、そのままお昼ごはんを食べられずに授業に参加している人だっているかもしれない。そういう人のために改善をしていかないと。というか、本当にそういう事があったら申し訳なさすぎる。


「えーと、他には…」


次の意見を見ようと思って、私は紙をめくる。けれど、そこに書かれていたのは


『シルフィー様と話したいです』


 えーと…?私の事ですか?

 これは意見?それとも要望?これは叶えないといけないことでしょうか。一体どうすればいいのだろう。私と話したいと思ってくれている事はとても嬉しいのだけれど。この紙は誰が要望出してくれたのかも分からないし、何より私の知り合いかどうかもわからない。正直知らない人と話すのはあんまり得意ではない…。あっ、駄目だ。私はアル様と結婚するんだから、頑張って知らない人と喋るのに慣れないといけない。もしこの要望が通って知らない人と話すことになったとしても、私にとっても特訓になるから頑張らないと。でも、出来れば女の子がいいなぁ、なんて思っちゃう。だって、女の子の方が同性だから喋りやすいような気がするんだもん。本当に喋りやすいのかもしれないけれど、男の子の場合は何を話したらいいのかが分からない。何か共通の話題でもあればいいけれど知らない人だと何に興味を持っているのかも分からないし、どういった話をしていいのかもわからない。いつも知らない人と話す時は横に誰かがいてくれるから、私は話を振られてそれに答えるっていう流れになっている。だからこそ知らない人と一対一で話すという状況になったらどうすればいいかがわからない。私なりに頑張っていきたいとは思うけれど、実際に目の前にそういう状況が来たら頑張れるか分からない。


「あのー、ルートお兄様」

「ん、何?」

「何か、こんな意見来てるんですけどどうすれば…」


 ルートお兄様に紙を渡すと、ルート兄様は眉間にしわを寄せた。そんなルート兄様を見たリシューとソフィアも同様にルートお兄様の紙を覗き込んで眉間にしわを寄せた。そして3人そろって盛大なため息をついた。何ですか、その、やっぱりねみたいなため息は。リリーお姉様の方を見てみると、リリーお姉様はあらあら、というように頬に手を添え、静かに微笑んでいた。なんだかリリーお姉様のその笑顔を見ると安心してくる。リリーお姉様は私の精神安定剤であることに間違いはありません。絶対そうです。だってリリーお姉様の笑顔を見るとなんだか安心するんだもん。


「とりあえず、シルフィー系の要望はこっちにも固めておいて」


 私系ってなんですか?

 こんな意見一つで十分ですよ、二個も三個も絶対ありませんから。私あての要望を固めておく必要はありません!


「もう……」


 それはともかく、もう一度意見の紙を見直そうと思って上に置いてあった紙を一枚とると、そこには今度はルートお兄様あての要望が書かれていた。えーとなになに?


『ルートハイン殿下に罵られたいです』


 思わず私の中で沈黙が流れた、えーと、これはどうすればいいんだろう。ルートお兄様に見せるべきだろうか。いやでも見せた時の反応が怖い。真っ黒い笑顔が返って来る気がする。


 うーん、どうしようか


 紙を持ったままうなっていると、その紙をソフィアに取り上げられてしまった。


「あっ」


 この紙を見せたらだめな人第2位に取られちゃった!


「えーと、なになに?」


 ソフィアはその紙に書かれてある要望を見た途端、先程のように眉をしかめた。そして



 ぐしゃ



 その紙をぐしゃぐしゃに丸めてしまった。


「えっ、ソフィア?」


 紙をぐしゃぐしゃにするのは、アリなのだろうか。ありならさっきの私の紙もぐしゃぐしゃにして欲しかった。というか本当にぐしゃぐしゃにしてよかったのだろうか。思わずルート兄様を見てみると、きょとんと頭にはてなを浮かべていた。キョトンとするルートお兄様は可愛いけれど、ソフィアの事を思うと安心出来ない。


「ソフィアどうかしたのか?」

「ええ、ちょっと」

「まあ、ソフィアがぐしゃぐしゃにしたってことは、くだらない要望だったんだろうね」


 ルートお兄様がそれだけ言うと、また再び手元の紙の確認に戻った。


 なんですかこの信頼関係。私がぐしゃぐしゃにしたら絶対に何が書かれていたのか紙を広げて確かめる癖に。


「あっ、さっきの紙には、むぐっ」


 私がさっきの紙に何が書かれていたのかをルートお兄様に知らせようとすると、ソフィアに口を塞がれてしまった。ちらっとソフィアの方を見ると、あっ、ごめんなさいと思わず謝りたくなってしまうような顔をしていた。ルートお兄様には言ったらダメって事ですね。はい、分かりました。


 まあ、そんなこんなもありながら、みんなで意見の紙を確かめていくと、所々


「あっ、こっちもシルフィー系の紙だ」

「あらこっちも」

「こっちもよ」


 とどんどん紙が出てきたのが少し困った。でも私のところにも、ソフィアやリシュー、リリーお姉様の紙がいくつか出てきた。もちろん、ちゃんと学園に対しての要望とかも沢山出て来たけれど。生徒会メンバーあての要望が出てくると、皆で確かめて「ぐしゃっ」と誰かしらが握りしめていたのがなんだか面白かった。面白がっていいのか分からないけれど、絶対叶えられないものもあったからいいのかな?やっぱり私以外のメンバーもファンクラブを作ったら方がいいんじゃないかな。多分私あての要望をくれたのは私のファンクラブの人だと思うけれど、他の人のファンクラブを作ったら、きっとたくさん意見が集まると思うんだよね。


 あっ、そういえば生徒総会は私は出なくてもいいみたい。とりあえず今みたいに会議には参加しないといけないけれど、生徒総会は会長であるルートお兄様と副会長であるリリーお姉様だけが参加すればいいみたい。あと書記のリシューも参加しないといけないけれど。他の一般生徒達は各クラスの委員長がそれぞれ参加するだけみたい。生徒会で話し合ったことを各クラスの代表に伝え、その代表がクラスに伝えるっていう流れらしい。つまり私は何もしなくていい。気が楽です。まあ、この会議では色々と話し合わないといけない事が沢山あって大変だけれどね。果たして話し合ってもよい内容なのかが分からない事もあるけれど。





 今日はもう遅くなってしまったので、残りは後日しようという事で今日は帰ることになった。


「一緒に帰ろ!」

「ええ」


 授業が終わって生徒会のお仕事も終わって帰ろうとして、今日はソフィアと一緒なんだと思ったらとっても嬉しくなった。そしてソフィアだけじゃなくて、ルートお兄様とも一緒に帰れるんだと思ったらもっと嬉しくなった。

 せっかくだからリシューも一緒に帰れたらいいなと思ったんだけれど、リシューはトーリお兄様と剣の稽古みたい。それを見てみたい気持ちもあるけれど、とりあえず今はソフィアとルート兄様と一緒にお城に帰ることが先だ。友達と王子様と一緒にお城に帰るなんてとっても贅沢。……あれ、私2人の邪魔になってないよね?2人は婚約者だから2人っきりにしてあげた方がいいのかな?いやでも、一緒じゃないと私が寂しいし。きっと2人は私のことを邪魔者扱いなんてしないよね。もし邪魔って言われたらその時はまた別の馬車を用意してもらおう、2人に限ってそれはないと思うけれど。あ、そっか。もしそんな事になったらアル様にお迎えに来てもらえばいいんだ。アル様の馬のロットにも迎えに来てもらって、アル様と一緒に放課後デートをしたらそれも楽しそう。よしそうしよう。……いや、そもそもルート兄様が私からソフィアを取ったのがいけないんだ。私とソフィアは親友だもん。一緒にいたらいいんだもん。




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