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130、音の正体が分かりました


「じゃあ、私達はもう行くわね?」


 お母様が私にそう告げる。


「はい…」


 お母様の手にぎゅっとしがみつく。


「まとめてある荷物は城に送ってもらうから、学園が終わったらそのままお城に行ったらいいからね」

「はい…」


 お母様の胸に顔を埋める。そんな私達を見たお兄様が、「なんだか、一生の別れみたいだな」と呟くけれど、気分はそんな感じ。


「早く帰ってきてね?」


 一週間したら帰ってくることは分かっているけれど、寂しいものは寂しい。だって、こんなに長い間家族に会わなくなるなんて初めてだもん。


 とまあ、こんな感じで一生の別れの様なお別れをしてお父様達は旅立っていきました。





「うう…」


 アル様の所にお泊りするのは楽しみだけれど、やっぱりお家に帰っても誰もいないという事が寂しい。公爵家はこの機会に最低限の使用人だけ残して休暇をとらせたみたい。確かに交代制ににはしているけれど、一週間の長い休みを取れる機会はそうないもんね。


 机に突っ伏してみるけれど、気はまぎれない。横で私の頭を撫でてくれているソフィアとリシューありがとう、大好き。


「本当にお家に誰もいない…」


 ディーだっていない。最初はディーも一緒にお城に行こうと思ったのだけれど、ディーはリシューが引き取ってくれることになった。昨日、リシューがここぞとばかりに立候補していたからね。本当にリシューは私に似てディーが大好きなんだから。でも、「ディーはシルフィーと違っていい子だし」って言った事は許さない。私もいい子だもん。アラン様にもこの間「いい子」って言われたもん。


「まあ、僕としてはお城に泊まってくれた方が安心ではあるね」

「そうね。家にシルフィー一人だとなんだか不安だし」


 そこは私も同意なのですよ。


「むぅ」


 もう一度うなってみると、再び頭を撫でてくれる。その時、またいつものシャッという音が聞こえた。


 だめだ。そろそろ限界。


「ねえ、ソフィア、リシュー」

「ん?」

「なに?」


 見ないふりをしていたけれど、我慢できない。


「最近、学園でシャッて音が聞こえるの」


 何か知ってる?と二人に聞く。私が聞こえている音を警戒心の強い二人が聞いていない訳が無い。でも二人が何も言ってこないという事は危険な音では無いという事。害はないという事。


 ほっといてもいいと思っていたけれど、何の音か気になって仕方がない。


「あー…」

「えーと…」


 二人はすーっと私から目をそらす。

 ……なんだかわかって来た。二人がこんな目をするって事は、


「もしかして『シルフィー様の笑顔を守り隊』とかじゃないよね…?」

「「……」」


 あ、もしかして当りですか?勘だったのですが、まさかの当りですか?嬉しくない当たりなのですよ。

 でも、本当に何の音なんだろう?シャッて音に聞き覚えは無い。例えるなら文字を書く時のシャッっていう音と似ている。最初は、いつも通り『シルフィー様の笑顔を守り隊』の人がメモ帳に何かを必死に書き込んでいる、または絵姿を描いているのかなと思ったりもした。でも、今回はその方向を見ても誰もいない。正直、影からこそこそとメモをされたり絵を描かれたりするのは慣れた。慣れていいのか分からないけれど慣れた。でも、その時は気配がした方を向けば、必ず誰かはいる。私と目があうと、慌てて逃げていってしまうけれど。でも、今回のシャッという音の方を見ても、本当に誰もいない。正確にはいたのかもしれないけれど、すでに逃げてしまっている。誰かがいる時もあるけれど、特にこちらを見ている様子もない。


「はあ、」


 私が考えを巡らせていると、ソフィアがため息をついた。全く、ため息をつきたいのはこっちですよ?!


「シルフィーが気になっているんじゃ、仕方ないか」

「そうだね」


 ソフィアの言葉に、リシューも納得したようにうなずく。だから、どうして私が仕方のない子を見る目で見られないといけないのですか?!


「これね」


 そうして二人が取り出したのは、


「石…?」


 いや、宝石…?これが音の発生源?これからシャっと音がするの?何で?


「これなに?」


 触ってみても、何にもならない。ただの黒い石。私のペンダントと同じような色。つるつるしてて、丸い。


「どうやって使うの?」


 私がそう聞くと、リシューはそれを目もとに持って来て、


「シルフィーこっち向いててね」

「え、うん」


 さっきから見てるよ?


「じゃあ、いくよ」


 どきどき。この小さな石からどうやってシャっていう音がするんだろう。



 シャッ



「え?」


 確かにいつも聞いているシャッという音はこれだった。何回も聞いているから間違いない。でも、結局よく分からないのですが?どうやってシャッて音を出したの?というか、シャっという音を出したからどうなるのですか?


「じゃあ、シルフィー、これ持って」

「あ、うん」


 ソフィアに黒い石を渡されたので持ってみる。持ってどうしたらいいの?これは結局何をする道具なんだろう?


「じゃあ、これもって…、あぁ、違う。こっち向きで。もう少し離して、うん、ここ」


 私\持たされた石を手を伸ばした形で持つ。


「……」


 手が、ぷるぷるするぅ。


結構腕が疲れるのですが?


「で、そのままその石に魔力を流して」


 え、魔力?という事は魔法具ですか?


「むぅ…………」


 じわーっと少しずつ魔力を流していく。



 シャッ



「あっ!」


 音した!


「………………」


 え、っと?


「結局、これは何?」


 魔力を流したら音がする事は分かったけれど、何に使うの?


「これは、えっと。うーん、なんて言ったらいいのかしら…」


 珍しくソフィアがどもってる。


「これは、石を向けたところの風景を絵にして残す道具、かな?」

「な、なるほど!」


 つまり、これは前世でいう所のカメラだね!ソフィアはカメラを知っているだけに、どうやって説明をすればいいのか分からなかったんだね。


「ん………?」


 さっき…、


「リシュー、私に向けてたよね?」

「…」


 リシューはすーっと目をそらす。


「ソフィアは私に持たせて、私の方に向けさせてたよね」

「……」


 ソフィアはすーっと目をそらす。


「私の絵を残したの?!」

「「…」」


 な、なんてことを!


 あ、最初に私が『シルフィー様の笑顔を守り隊』に関係あるか聞いた時に、関係ありそうな反応してたよね?という事はもしかしなくても、今までのシャッて音は私の写真を撮ってました?!


「だ、誰ですか、こんなのを開発したの?!」


 あーー!!


 あれだ!前に技術の向上がなんとかって言ってたやつ!もしかしなくてもこれの事ですよね?!


「みいい…っ!」


 自分の中で話が繋がって、思わず声を上げる。


「どんな声よ。可愛いわね」

「初めて聞く悲鳴だな。可愛いね」


 変な悲鳴を上げた事で少し気分も落ち着いた。

 ところで気になっているのがあの物陰にいるクラスメイトなのですが?学園祭で会計役を務めてくれたルアちゃん。平民の子だけど、すっごくいい子。


「ルアちゃーん、どうしたの?」


 さっきから、物陰からずーっとこっちを見てるんだよね。軽く手を振ってみると、またシャっという音がした。


「あ、ソフィア、また!」


 あれ?ソフィアが犯人だと思ったけれど、ソフィアは石を構えていなかった。


「じゃあ、リシュー?」


 でもなかった。


 まあいいや。今更だしね。


「ルア、こっちに来ていいわよ」


 ソフィアが声をかけるとルアちゃんはゆっくりとこっちに歩いてきた。……手に見覚えのある黒い石を持って。


「あーーーっ!」


 さっきのシャって音の犯人はルアちゃんだったんだ!


「この度『シルフィー様の笑顔を守り隊』の広報委員長に任命されました!私の仕事はシルフィー様の日常のお姿をこの世に残す事です!」

「?!」


 なんですって?!広報委員長ってなんですか?!いつの間に『シルフィー様の笑顔を守り隊』に入ったんですか?!


「え、もしかしてその石みんな持ってるんですか?」

 

 結構貴重じゃないですか、この魔法具って。貴重だからこそ、今まで作られていなかった。今まで人の姿を残す方法は絵で描くの一択だった。でも、このカメラはその手間をいっきに省いてしまう。歴史が変わっちゃう。そんなのが一気に広がったらどうなっちゃうか…。


「いえ、まだそんなに浸透していないので数人しか持っていません。今は試運転の段階なので!」


 試運転の物をどうして皆が持っているのだろう。え、ルアちゃんのお父さんの発明?そんな貴重なものを『シルフィー様の笑顔を守り隊』なんかでつかってもいいのだろうか…?こういうのって、お偉いさんに提出をしないといけないのでは?あ、もう渡している?流石です。というか、学園内でつかってもいいのだろうか?


「大丈夫です!映ったシルフィー様の絵姿を複製して、第二王子殿下に渡すという事で話はついてます!」

「?!」


 何をやっているのですか、アル様!というか、いつの間にそんな話し合いをしたのですか?!


 私に許可をとって下さい!!





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