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129、私は誰と寝ればいいのでしょう


「え、お留守番、ですか?」


 私の苦手な言葉の一つ、それはお留守番。それを朝食後、お父様の口から言い渡された。


「私、一人だけで?」


 確認すると、お父様は申し訳なさそうな顔でこちらを見てきた。


「ひとり、一人かあ…」


 お父様とお母様は明日から数日他領地に行くみたいで、家を留守にする。どうやら私は連れて行ってもらえないみたいだ。


「お兄様とマリーお姉様は?」

「二人も一緒に行くんだ」

「え、じゃあ、私も一緒に行きたいです!」


 お兄様とマリーお姉様は良くて私がダメってどういうことですか?仲間外れ反対!家族はいつも一緒に居るのがいいんです!私も連れてって!


「シルフィーは学園があるだろう?」

「えー…。」


 それを言われるとどうしようもない。でも、1日、2日くらいなら休んでもいいと思うなあ。


「どれくらい行くんですか?」

「一週間だ」

「うぅ…」


 流石にそんなに長い間休めない…。


「……」


 思えば、1週間も家族に会えないなんて初めてかも。何だか、すごく


「寂しいです…」


 しゅん、と頭と顔を下げると、思い切りお父様に抱きしめられた。


「ふぎゅう」


 嬉しいけれど苦しいのです。でも嬉しい。でも苦しい。寂しい。


「私もいっしょがいい」


 お父様の胸に頭をこすりつけぼやくと、お父様の耳にもしっかり入ったようだった。申し訳なさそうに頭を撫でてくれる。


「何をしに行くんですか?」

「視察なんだ。少し問題が発生したみたいで長期滞在しないといけない。スティラも時期公爵としての勉強で連れていくつもりなんだ。」

「そう、ですか……」


 聞いている限り、遊びじゃない事は分かる。観光でもない事は分かる。

これは我儘を言ったらだめな所だ。お父様たちだって好きで突然領地に行くわけじゃない。ちゃんとお仕事で行くんだ。お兄様とマリーお姉様だってそう。


「行ってらっしゃい、です……」


 そうしたら私は本当にこの広いお家で一人だ…。寂しいなぁ。メイドさんや執事さんとか、使用人さんが沢山いるのは分かっているけれど、皆は私と一緒にご飯を食べたり遊んだりは出来ないから、一人。唯一遊んでくれそうなのがディーくらいかな。


「……」


 寂しくて死んじゃうかも。


「もし一人が寂しかったら、どこかに泊まらせてもらってもいいし」


 な、なんと!その手がありましたか!グッドなアイデアです!私は今までちゃんとお泊りをしたことがあるのってアル様の所かソフィアのお家だけなんだよね。となると今回も選択肢はその二つだろうか?他に選択肢があるとすれば、お姉様がお嫁に行っているルートリア伯爵家と、リシューのお家であるクロード公爵家くらいかな。学園に通い出してから仲のいい友達は沢山出来たけれど、お泊りするほどの仲とまでいく子はあんまりいないかも。……嘘です。「あんまり」もいません。全然いません。私の特別仲のいい同級生のお友達はリシューとソフィアだけです。見栄を張りました。張れていたかどうかは分からないけれど。


「じゃあ、ソフィアのお家に泊まれないかお願いしてみます」

「うん。私達もシルフィーを一人残していくのは心配だからね」


 だよね。私も同じ事を思ってた。自分の事だけど。


 やっぱりお泊りならソフィアのお家だよね。ソフィアの両親にもまた会いたいし、ソフィアのお家の大きいお風呂にも浸かりたいし、ソフィアと沢山お話したい。お友達とお泊りって本当に贅沢な事だよね。

 リシューのお家に泊めてもらう事も出来るとは思う。リシューの両親はとっても優しい人だから。でも、私はアル様の婚約者だから世間体がね。ディアナお姉様やマリーお姉様がいれば問題は無いけれど、二人は今お嫁に行ってしまっている。

 お姉様の所っていう手もあるけれど、流石に一週間は申し訳ない。受け入れてもらえそうだけど申し訳ない。

 アル様の所は…、今まで何回かお泊りしているからいっか。どのみち大きくなったら一緒に住むんだし。あ、間違えた。私はもう大きいや。結婚したら、だね。





 と、いうわけで。





 ソフィアにお願いをしてみたのだけれど、


「私はいいけれど、しばらくは学園終わりにレッスンをするからあんまり家にいないわよ?」


 と言われてしまいました。これは遠回しに振られているのだろうか。いや、ソフィアの事だから本当にレッスンがあるんだろうね。というか、家にいないとはどういう事だろう?レッスンはお家でするんじゃないの?家にいないって事はどこか別の所でするのかな?


「レッスン?」


 なんのレッスンだろうか?


「ええ、ルートハイン殿下の婚約者になったから、今まで学んだ事とは求められるものも変わってくるのよ」

「なるほど…」

「シルフィーは3歳の時からアルフォンス殿下の婚約者だったでしょう?だからシルフィーはもうそのレッスンを受けていると思うけど、私はまだなのよ。」


 あれだね。私も小さい時から少しずつお城でやって来たレッスン。そういえばやったな。でもソフィアは私と違ってもうマナーとかの基礎があるからそんなに苦労しないと思う。覚えも早いし。きっと優秀な生徒だね。ソフィアみたいな成績優秀者をお嫁に貰うなんて王家の人はラッキーだね。特にルートお兄様。学園でも、最近はルートお兄様とソフィアはすっごく仲良しで羨ましい。特にルートお兄様からソフィアへの愛がすごい。もうルートお兄様の顔が緩みまくってる。どうして私は今までルートお兄様がソフィアの事を好きだって気が付かなかったんだろうね。不思議で仕方がない。反対にソフィアは少し照れているのか抵抗しようとしている。でも、ルートお兄様からしたら、その抵抗すらも可愛いんだろうね。私から見ても可愛いもん。知っている二人が婚約して、とっても仲がいいのって本当に嬉しいものだね。


 でも、そうなると、本当にソフィアは忙しくなるんだね。ソフィアのお家に泊めて貰っても、そこにソフィアがいないのは少し寂しいし、人のお家でソフィアはいないのに私がいるのは申し訳ない。かくなる上は私も一緒にソフィアとレッスンを受けるかな。または学園で時間をつぶす。あ、これでもいいかも。ソフィアがお家に帰る時間に私も学園を出て…、いや、それはタイミングが難しいな。となると、学園からソフィアと一緒にお城に行って、その間私はお城の自分のお部屋でくつろいでおいて、で、ソフィアのレッスンが終わったら一緒にソフィアのお家に帰る。これでいいかも。うん、これがいい!


「殿下の所に泊めてもらえば?」

「え?」


 私がどうやってソフィアと予定を合わせるか考えていると、ソフィアから悲しい案が飛び出しました。


「アル様の所?」

「ええ、喜んで泊めてくれるんじゃないかしら?」

「……」


 確かに考えなかった訳ではないけれど、ソフィアのお家に泊まる気満々だったから少し寂しい。ソフィアとこの間みたいに沢山お話して一緒にお風呂入ったりしたかったのに!それにアル様とだったらいつでもお泊りできるのに!……まあ、ソフィアとだっていつでも出来るけれどね!


 あ、ちょっと言ってみたい言葉が頭の中に浮かんだ。


「ソフィアは私とレッスンどっちが大事なの?!」

「それはレッスンよね」

「がーん」


 即答すぎません?まあ、確かに冗談で言ったのだけれど。流石にレッスンは大事だって分かってる。私だって散々レッスン受けてきたんだし。ただちょっと新婚さんがやるようなやり取りをやってみたかっただけ。バッサリ切られるところも少し楽しかったです。あと、またシャっという音がしたのですけれど?


 でも、やっぱりソフィアとお泊りできないのは残念だけど、ソフィアがレッスンを頑張っているから邪魔は出来ない。基礎があるとは言っても短期間で覚えないといけない事は沢山あるんだから。邪魔はしない。私とアル様、ソフィアとルートお兄様が結婚すればそれこそ一緒に居られる機会は増える。……はず!


「………!」


 あ、あれ、私今、ものーすごくいい事思いついちゃったのだけれど!天才かも。才能が開花したかも。でも、これは私だけではどうしようもない。各方面に色々な許可が必要になって来る。


「という訳で行ってくるね!」


 思い立ったが吉日!即行動!思ったのに、


「何が『という訳』か分からないし、何をしに行くかもどこに行くかも全く分からないわ」


 ソフィアに後ろから抱き着かれて止められました。そりゃそうだ。


「ソフィア、一緒にお泊りをしよう」

「え、ええ。だからうちは別に構わないわよ?私は余り構えないけれど」

「そうじゃないの!」


 ソフィアのお家にお泊りしてソフィアに構ってもらえないなんてそんなの寂しい!


「だからお泊りするの!」

「ええ?やっぱり分からないわ。私ではシルフィー語を理解する事は出来ないようね」

「それじゃあ行くよ!」

「はあ、もうシルフィーに任せるわ」


 ソフィアは頭を押さえながらも私に手を引かれて歩き出してくれました。持つべきものはあきらめの良いお友達。これ大事。





「という訳でお泊りしましょう!」


 という訳で乗り込みました生徒会室。そこでのんきに紅茶を飲んでいたルートお兄様に扉を開けてすぐ叫びました。マナーがなっていなくてごめんなさい。興奮の現れです。ソフィアも呆れたように私の後ろでため息を吐いています。


「何が『という訳』か分からないけどいいよ」

「やったぁ!」


 そしてルートお兄様からはよい返事をもらいました。詳細を全く言っていないけれど、許可をくれました。これでいいのかな王子様。ちゃんと詳細は聞いた方がいいと思うよ。話していない私も私だけれど。


 ルートお兄様から許可を頂いた事で、事のあらましを説明する。……普通逆だよねって疑問はゴミ箱にぽい。


「で、ソフィアもレッスンあるし、私も邪魔をしたくない。でも私はソフィアと一緒に居たい。だからソフィアも一緒にお城にお泊りしたいなあって」


 そう思ったのです。


 そこまで言い切ると、ルートお兄様はやっと話を理解出来たようで、頷いていた。そして、


「いいんじゃない?」


 と簡単に許可を出してくれました。さっすがルートお兄様。話が分かってる。


「その代わり条件をつけるよ」

「条件、ですか?」


 条件…。生徒会のお仕事をもっと頑張って手伝う事、とか?


「夜にはソフィアを僕に返す事」

「えー?!」


 ソフィアとのお泊りを楽しみにしてたのに!ソフィアとお布団でいっぱいお話したかったのに!

 あと、ソフィアはまだルートお兄様の物じゃないもん!だから『返す』事はしないもん!


「嫌です!」

「じゃあ、お泊りも許せないなぁ」

「ルートお兄様の意地悪!」


 だいたい、私がいう事じゃないけれど、婚約者はお泊りをしていいのですか?!私が言う事じゃないけれど!私が言える事じゃないけれど!思い切りルートお兄様を睨んでみるけれど、ルートお兄様も譲る気はないみたい。これはソフィアを説得した方が早いかもしれない。でも、ソフィアは顔を真っ赤にしてルートお兄様を見ている。むぅ…


「ソフィアは私とルートお兄様と、どっちと寝たいの?!」


 さっきはレッスンに負けちゃったけれど、ルートお兄様には勝ちたい!


「え、えーっと…」

「ソフィア、私だよね?」

「僕だよね?」


 私とルートお兄様でじりじりと下がるソフィアの手を片方ずつ握る。逃がしませんよ。


「ね、ソフィア。私達友達だよね?」

「僕は婚約者だよ?」

「ルートお兄様は結婚したらいつでもソフィアと寝られるでしょ?!」

「シルフィーだっていつでもお泊りできるでしょう?」


 ルートお兄様は結構頑固なのですよ。


 仕方ないおねだりをするしかない。


「ね、そふぃあ。いっしょにねよ?」


 シルフィー様のおねだり発動!握っていた手を離し腕に抱き着く。そして上目遣い。コトンと首をかしげることも忘れない。


「うっ……!」


 ソフィアの顔が赤くなった。よし、効いている。


「ソフィアだいすき」

「か、かわっ!」


 そして腕にすりすり!もう勝ったも同然!


「一緒にねてくれるよね…?」


 ソフィアの方を見ながらおねだりをしていたけれど、


「だめ」


 と、私とソフィアの顔の間にルートお兄様の手が差し込まれました。ルートお兄様はそのままその手をソフィアの頬に添えて、ルートお兄様の方を向かせた。ちゅーでもするのかなってくらい顔が近い。

 二人のいてはいつの間にか恋人繋ぎになっている。それでルートお兄様はソフィアのほっぺにちゅーをしたぁ?!


「ふぇ?!」


 思わず私が悲鳴を上げてしまう。こ、ここ学校ですよ?!生徒会室だから誰もいないからいいけれど!私がいるのに!そういうのは二人でやって下さい!


 そして、ルートお兄様は真っ赤になっているソフィアの耳元に口を近づけ、何かを囁いた途端、



 ソフィアが崩れ落ちた。



「ソフィア?!」


 なんだか力が入らないみたいで、ソフィアは蹲ってしまった。そんなソフィアを抱きしめたルートお兄様はそのままソフィアを抱きしめたままソファに座った。

 それで、真っ赤になったソフィアは私を振って、ルートお兄様をとりました。ルートお兄様卑怯です!きっとずるい手を使ったんです!ソフィアを脅したに違いない!


「じゃあ、私は誰と寝ればいいんですか?!」

「一人で眠る選択肢はないんだね…」


 だって寂しいじゃないですか!一人で眠れるならお家で一人で寝ています!


「アル兄上は?」

「アル様はいつも一緒にねているからいいんです!」

「それは兄上が寂しがりそうだね」

 

 でもソフィアが一緒に寝てくれないならアル様と一緒に寝るしかないか。あ、別にアル様と一緒に寝たくない訳じゃないんだよ?ただ、ソフィアと一緒に寝たかっただけ。アル様と一緒に寝るのも大好きだもん。


 何はともあれ、ルートお兄様には許可をもらえたので、多分お城のお泊りは許可がもらえるかなと思います。



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