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011、お菓子パーティーで幸せです

 さっきから誰かが頭を撫でてくれる。お母様かな。それともアンナ?でもお母様もアンナも私が寝てる時にはあまりこういうことはしない。ということはお父様かな?お父様は帰るのが遅くなった時に私の部屋に来て顔を見に来てくれる。私は寝てるからいつも気付かないけど、アンナが教えてくれる。

 あれ、その前に私っていつ寝たんだっけ?確かお父様と城に来て、王様と会って、王子様と会って、そのあとに、そのあとに?あれ?


 ゆっくり目を開けてみると、最初に視界に映ったのはアルフォンスだった。


「起きたの?」

「はい、……おはよう、ごじゃいます、です……」


 目を擦りながらそう挨拶する。え、アルフォンス様?ということは、やっぱり……、あの場で寝ちゃった!?どうしよう……。とりあえず、謝るしかない。


「あ、あの……、ねてしまって、ごめんなさい……」


 アルフォンス様に抱きついたまま寝てしまった私は30分ほどで起きたらしい。けれどその間、私はアルフォンス様の袖を掴んだまま離さなかったらしく、ずっと膝枕をしてくれていた。やっぱりアルフォンス様の傍は、何故か安心できる。


「気にしなくていいよ。緊張してたんだよね?」

「はい……」


 頭を撫でながら優しい言葉をかけてくれる。小説みたいに私を処刑するようには見えない。





「あ、起きましたか?」


 そう言いながら部屋に入ってきたのはレオンハルト様とルートハイン様だった。


「は、はい。ごめんなさい……」

「大丈夫ですよ。子どもは寝て育つものですしね」


 レオンハルト様が頭を撫でながらそう言ってくれる。レオンハルト様もまだ9歳で子どもなのに……。しかも、前世を合わせると私の方が年上なのに。でも、撫でてくれる手が気持ちよくてつい顔が緩んでしまう。


 あれ、そういえば、


「おとーしゃまと、へいかは…?」

「あぁ、2人は仕事に行きました。何か、急な会議が入ったそうで。父上が君の傍にいようとする公爵の服を掴んでいく姿は中々でしたよ」


 レオンハルト様はクスクスと思い出し笑いをしながら言う。


「眠っている間、ずっとアルの服を離さなかったのでソファで寝かせましたけど、体は痛くないですか?」

「だいじょうぶです」

「それはよかったです。それはそうと、こちらにもおいで。ずっとアルが独占してたから私達はシルフィー嬢に構えなかったんですよ。」

「あ、僕も抱っこしたい! 妹が居なかったから憧れてたんだ!」


 その言葉を受けて、アルフォンス様は渋々私をレオンハルト様に差し出そうとする。


 でも、私は嫌だった。レオンハルト様とルートハイン様が嫌な訳では無い。ただアルフォンス様と離れることが嫌だった。


「うぅっ……」


 思わず涙目でアルフォンス様に抱きつく。何となく離れたくなくてアルフォンス様の胸に顔を埋める。


「そんなにアル兄上がいいの?」


 と聞かれ、思わず頷く。


「寝てる時ずっと一緒にいたから安全地帯として認識されたのか?」


 ルートハイン様が笑いながら解説するけど、たぶんそんな感じです。でも、言葉にされると恥ずかしい……!だって私、前世では小学5年生なんだよ!確かにまだまだ子どもだけど、精神年齢は王子様達より上なのに!


「で、でも……」

「ん、どうした?」

「あ、あの……、あたまをなでなでされるのはうれしいので……、えっと、してくれると…うれしい、です」

 

 たぶん、私の顔は赤いと思う。だって、頭撫でて欲しい宣言だよ……。で、でも仕方ない、好きなんだもん、撫でてもらうの!そんなことを考えていたシルフィーは、3人が手で顔を覆って、「可愛い、尊い……」と呟いていることは知らなかった。





 レオンハルト様の「庭にお菓子を用意してあるから行こうか」という言葉で、私達は庭へ移動することになった。お菓子と聞いて、迷わず「行きます!」と返事した私は、レオンハルト様とルートハイン様と手を繋いでいた。アルフォンス様と離れたのを少し寂しく感じたけど、近くにはいるし、何よりお菓子が私を待っている。私の心も表情も輝いていると思う。


「おかし、おかし~」


 思わず心の声が出たのは許して欲しい。だって、公爵家のお菓子も美味しいけど、美味しいからこそ余計にもっと食べたくなるのだ。


「そんなにお菓子が好きなのか?」

「はい!」

「可愛いですね」

「えへへ」


 分かってる、この可愛いは妹を見る目だ。だから恥ずかしがることなく受け入れられる。会話の中で分かったことがある。第一王子のレオンハルト様は誰に対しても敬語。第三王子のルートハイン様はちょっと荒っぽい言葉遣いの時もあるけど優しい。そして、第二王子のアルフォンス様は敬語でもなく、荒っぽくもない。本当の妹みたいに話してかけてくれる。


 ふふっ、お兄様がいっぱいに増えたみたいっ!





「わぁっ、きれい!」


 庭には沢山の花が咲いていた。その庭園の真ん中辺りにテーブルがあるので、そこでお茶会をするようだ。まるでガーデンパーティー。周りの花を見てみると、様々な種類の花がある。


 すごい!私の好きなアネモネの花も沢山ある!


 何故かは分からないけれど、前世からずっとアネモネが好きだった。

ついつい花の方へ寄っていく。そして、後ろに腕が引っ張られたことで王子達と手を繋いだままということに気がついた。


「あ、ごめんなさい!」

「シルフィーはお花が好きなの?」

「はいっ!」

「じゃあ、お茶会が終わったら皆で一緒に見る?僕は余り花に詳しくないけど、レオン兄上とアル兄上なら花に詳しいと思うし」

「いいんですか!?」

「うん、もちろん」

「ありがとうございます!」





 テーブルからは美味しそうな匂いがしてくる。テーブルより背が低いため、なんのお菓子があるのかは分からないが、美味しそうな匂いでさらに期待が高まる。自分では届かないため、傍にいたレオンハルト様が私を椅子に乗せてくれる。


 しかし、シルフィーには机が高く、机からは顔しか出なかった。

 おいしいお菓子が食べれない。そう思うと涙が出てくる。


 おかし……。わたしの、おかし……。たべたかったのに……。


「うぅ……、おかし……」

「泣かなくていいよ。こっちにおいで。」


 気が付くとアルフォンス様に抱きかかえられていた。そして、アルフォンス様は私を抱っこしたまま椅子に座った。つまり、私は椅子に座っているアルフォンス様の膝に座っている訳で……


「あ、あの…っ!」

「ん? ここなら届くでしょ?」

「はい……、でも……っ」


 王子様の膝に乗るのって大丈夫なの!?不敬罪じゃない??


「そんなことより、お菓子食べなくていいの?」

「!!!」



 その時、私の中で お菓子>不敬罪 という式が浮かんだ。分かってる、不敬罪よりお菓子が勝っちゃうのは不味いってこと。でも……


「たべます!」


 お菓子が勝ってしまったから仕方ない。ふとテーブルを見ると、ガトーショコラにタルト、パイにマカロン。たくさんのお菓子がありすぎてクラクラする。

 間違いなく私の目は輝いてる。


「何から食べる?」

「えっと、えっと……」


 苺タルトかな?それともブルーベリータルト?あ、ムースもある!でもアップルパイも捨てがたい……!


「うぅ……」

「ふふ、ゆっくり選んでいいよ。沢山種類を食べたいなら一口ずつ食べてもいいよ」


 え!それは魅力的!だけど……


「もったいないからダメです……」

「じゃあ、僕達が残りを貰うよ」

「それもダメです!」


 残りを王子達に食べさせるなんて出来ない。


「きょうはひとつだけたべます」


 まずはどれを食べようかな。よし、タルトにしよう!


「いちごのタルトがたべたいです!」


 メイドさんが私の前にいちごタルトを持ってきてくれる。


「ありがとうございます!」


 いちごタルトが嬉しすぎて笑顔でお礼を言う。でも、いちごタルトに目を奪われて、メイドさんが悶えたのを知らなかった。一口食べてみる。口に入れた途端、タルトがサクッと崩れる。はぁ、幸せ。


「おいしいです~」


 そして、タルトが美味しすぎて幸せだった私は、またもや王子達が悶えていたのに気づかなかった。



 残念な事にお腹の容量は小さいから1つしか食べれなかった。もっと食べたかったけど、お腹いっぱい。次の時の楽しみにしておこう!





「そういえば、私の側近は君の兄のスティラなんですよ。知ってましたか?」

「え、おにーしゃまがですか?」


 初耳です。お兄様がたまにしかお家にいないのは、レオンハルト様の所に来ているからなんだね。……お兄様がレオンハルト様に取られたみたいで少し寂しいけれど仕方がない。


「うん。彼は優秀だし、このままいくと次期宰相ですから」

「はいっ! おにーしゃまはとってもかしこくて、やさしいのです!」


 お兄様の事を褒められるのは嬉しい。だって、お兄様は本当に優しくて格好良いんだもん!


「お兄様か、いいですね」

「? なにがいいんですか、レオンハりゅトしゃま」


 しまった。噛んでしまった。王子様のお名前は長いから幼女には難しいのです。


「私のこともお兄様と呼んでくれませんか?」

「え?」

「私には弟しか居ないし、2人とも兄上と呼びますから」

「あ! 僕の事もお兄様って呼んでいいよ!」

「えっと、……」


 いいのかな?お兄様じゃないのにお兄様って言っても……。お兄様が増えるのは嬉しいけど……。そう思って2人を見ると、期待した目でこちらを見てくる。


「えっと……、レオンおにーしゃまと、ルートおにーしゃま?」


 2人を見ながら名前を呼んでみる。しかし、名前を呼んだ途端、2人は……、崩れ落ちた。お父様と同様、


「天使……、尊い。」


 と呟いて。


「え! あ、あのっ!?」


 何が悪いことしちゃった!?


「大丈夫だよ。2人とも、君の可愛さにやられただけだから」

「えぇと……」


 それは大丈夫なんでしょうか?


「それで、僕のことは呼んでくれないの?」

「ええっと……」


 アルフォンス様はお兄様って感じがしない。だって小説では私の婚約者だったわけだし。だから呼ぶとしたら、


「あるしゃま」


 かな?そう呼ぶと、アルフォンス様も2人同様に崩れ落ちた。幼女の前に崩れ落ちる王子様3人。なんと奇妙な光景だろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛さチート持ちな模様 今後も無自覚に世の男共を魅了していくことになるのかな
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