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ソフィアpart2






 だからと言って、ルートハイン殿下が考えている事を理解できるかと言ったらそうでもない。

 

 私が馬に乗せてもらった事があるというと、すごく黒い笑顔でこっちを見てきたし。この世界で女性は馬にのったらいけないのかと焦ったわ。


 学園祭でも、なぜか私が呼び出されるし、生徒会の出し物の時も、気が付いたら本物が横にいたし。


 でも、こうして普通の学生生活を送れているのは、私が風の魔法を使えたから。光の魔力を持っているにも関わらず、風の魔法も使える。そんなの、ゲームの設定になかったから驚いたけれど、結果的には良かった。

 それに光の魔法も何故か監査をしなかったし。ゲームでは、ここで検査をして、私が光の魔法を使えると分かり、王家との繋がりを持つ。最初はルートハイン殿下と。そして、15歳になるとアルフォンス殿下と。


 私は王子と結婚をしたい訳では無い。正直避けたいとさえ思っていた。だって、面倒だもの。公務とかそのたもろもろ。





 本当に、どうしてルートハイン殿下を好きになったのか分からない。でも、好きなんだから仕方ない。そう思っていた時に、今回のレオンハルト様の事があった。


 なんとなく、分かっていた。光の魔法を使って治癒をするという事は、この国に縛られるという事。この先の人生を縛られるという事。だから、ルートハイン殿下に婚約を申し込まれた時も、疑問に思わなかった。でも、私が魔法を使った時の、あの驚いた表情はなんだか好きだった。





 レオンハルト殿下を治療した後、私は王家の皆さんと一緒に部屋を出た。そして、その後、謁見の間の近くの部屋に案内される。けれど、私と一緒の部屋に入ったのはルートハイン殿下だけだった。


『どうして、今まで光の魔法を使えることを黙っていたんだ。』


 そう、責められると思っていた。




 でも、ルートハイン殿下は、跪いて


「私の婚約者になって下さい」


 といった。私はそんなルートハイン殿下を見て、少し悲しくなった。光の魔法を使える私は貴重。この国に留めておくために、一番有効な手は婚約。


 私はルートハイン殿下を慕っているけれど、ルートハイン殿下はきっと、そうじゃない。光の魔法を使える私を手に入れる為に、仕方なく婚約を申し込んでくれている。

 それに、悲しい理由はもう一つ。


 5年前の事件が、また起こるのではないか。


 ゲームでも、ヒロインと第三王子が婚約をした後で、第三王子が殺されてしまった。もし、同じことが…。ルートハイン殿下が殺されるような事があれば。それがとても恐ろしい。


「あ、の……」


 私が何も言えずにいると、ルートハイン殿下は立ち上がって、私の頬を手で挟んだ。一気に近くなった距離に、戸惑う。


「殿下…?」

「僕は、ソフィアが光の魔法を使えるから婚約を申し込んでいるわけではないよ」

「え?」

「僕は、あなたが好きだから婚約を申し込んでいるんだ」


 すき…?殿下が私を…?


 なんの冗談だろう?私を頷かせる為に言っているのだろうか?


「このタイミングで申し込んでいるから説得力はないと思うけれど、うかうかしていると、それこそ光の魔法使いを求めて、ソフィアに男共が群がってしまうからね」





 なんなら、証明しよう。





 そう言って、ルートハイン殿下は私に近づいて、その唇で、私のそれを奪った。





 時が止まったように感じた。頭が真っ白になる。





 ルートハイン殿下の唇が離れていった時、私は一気に夢からさめたような心地がした。と、同時に、


「………~~っ!」


 ぶわっと、顔が赤くなっていくのが分かる。


 しんっ、じられない!

 

「き、き…っ!」


 キスした!

 私が動揺しているのなんかお構いなしで、ルートハイン殿下はにやっと笑う。


「これで、もう他の誰にも嫁げないよね?」


 そういうルートハイン殿下にまでどきどきするのだから、重症だと思う。









「本当に、本当にありがとう…!」

「いいえ、ご無事で良かったです」


 その後、王家の人達が部屋に入って来た。そして、皆に沢山お礼を言われた。少し緊張したけれど、でも、この笑顔が守れてよかった。悲しい涙に覆われなくて良かった。


 そして、レオンハルト殿下もここに来た。寝ていなくても大丈夫なのだろうか。

 

 レオンハルト殿下とディアナ様からもお礼を言われ、そろそろ帰ろうかと思った。


 ……んだけど。


「ソフィアの唇奪ったから」


 って、ルートハイン殿下が宣言した時はどうしようかと思った。


「ちょ、え、な……っ!」


 私が真っ赤になって動揺していると、王妃様と、王太子妃のディアナ様が「あらあら」と笑いながらこちらを見てくる。でも、私はそんなに穏やかな気持ちでなんていられない。どういう反応をするのが正解か分からない。

 

「なら、もう婚約をするしかないわね」


 王妃様は嬉しそうに笑っている。


「可愛い娘が増えるわ~」


 って言っている。でも、次の王妃様の言葉に固まってしまった。


「ルートったら、全然婚約者を作らないんだもの。いつも、『もう少し』、『今追い詰めている所』っていって」


「……」


 それって、やっぱり、好きな人がいたって事だろうか。


 私が暗い表情になって下を向いていると、


「何を勘違いしているの?」


 そう言ってルートハイン殿下は私の頭を撫でた。


「その捕まえようとしているのはソフィアの事だからね」

「え?」

「やっぱり気付いて無かったか」


 そう言ってため息をついた。

 

「リシュハルトや、リリー、兄上にはすぐに気付かれたけどね」

「え…?」


 脳が、追いつかない。


「類は友を呼ぶ」

「え?」

「リシュハルトが言っていたんだ。鈍いシルフィーの友達のソフィアも鈍いよって」


 それは、…馬鹿にされている、のかな?


「……にぶくないもん」


 こっそり呟くくらいは許されるよね?でも、その瞬間、ぎゅっと、前後から抱きしめられました。……前後から?


「ちょっと、母上。ソフィアは私のものです。離してください」

「まあ、生意気。いいじゃない。私の義娘になるのよ」


 えっと…、これは。殿下と王妃様に抱きしめられてますか?!


「え、あ…っ」


 どうしていいのか分からない!


「いいから離してください」

「ひゃあっ!」


 その瞬間、私の体に衝撃が走った。


 今度は何?!


 と思ったけれど、ルートハイン殿下に抱きしめられているだけだった。……だけって何?!ぶわっと顔が熱くなったのが自分でも分かる。


「あ、あの、殿下!」


 は、離してください!


「離さないよ」

「え…っ!」

「離さない」


 何で2回言ったの?!


「私をルートと呼ぶのと、このまま抱きしめてられておくのと、もう一度口付けをされるのどれがいい?」

「?!」


 何ですか、その究極の選択!


「え、あ…、えーっと」


 ど、どっち?!どっちの方がいいの?!


 だってここは私と殿下だけではないのよ?!王妃様も、第一王子殿下もディアナ様もいる。さっきから一回も話してないけど陛下だっている。そんな中で、初対面の私に何が出来るというの?!


 何が正解か分からない!


「ふふ、ごめん。揶揄い過ぎたね」


 ルートハイン殿下はそう言って笑いながら私を離した。揶揄われていた…?そ、そっか。良かった。でも、ルートハイン殿下の顔が寂しそう。もしかして、私が嫌がったと思っているのかな?


「あ、あの、殿下?」

「ん?」

「いやなわけじゃ、ないんです…。あの、2人のときだと、その…、」


 …、まって、これってなんだかおねだりしているみたいじゃない?!


「ご、ごめんなさい。聞かなかった事に、」


 全部を言い終わる前に私は再び抱きしめられてしまった。


「なんでこんなに可愛いの?今すぐ二人になろう。私の部屋に行こう。もう既成事実でも作ってしまおうか」

「え、え?」


 私はそのまま抱き上げられて、……部屋に…?


「ちょっ!」


 まってまって!冗談じゃすまないやつ!だめだめだめ!


 なんとか王妃様が止めてくれたので、既成事実を作ることにはなりませんでした。





 でも、私はこれから幸せに、なれそうな予感はした。

ルートハイン殿下となら、きっと大丈夫。何があっても、私が頑張るから。


 だから、殿下の事を「ルート」と呼ぶのはもう少し待ってください。





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