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099、お久しぶりのバラ園です


 何故か今、バラ園に来ています。


「あれぇ?」





 デザートを食べさせて貰って、間違えた、食べて、その後、皆に挨拶をしてから頭を撫でて貰って。アル様の隣のお部屋の私のお部屋にるぅを迎えに行って。


 で、るぅのお迎えにアル様も一緒に来ていたから、少しだけ食後のお茶を飲んでお話して。


 帰ろうと門の方まで向かっていこうとしたら、アル様が「行きたい所があるからちょっとだけ一緒に来てもらえる?」っていうから、「はい、分かりました」って言って。


 で、手を取られたと思ったらいきなり転移してて。





 気付いたらバラ園に来ていました。


「び、びっくりしましたぁ」


 でも前よりは怖く無い。びっくりしただけ。それにアル様が手をぎゅっとしてくれていたからね。


「ごめんね。どうしても、行きたくなって」

「いえ、大丈夫です!ちょっとびっくりしただけですから」


 珍しいですね?


「でも、私、ここ好きですよ。連れてきてもらえて嬉しいです」

「そうなの?」

「はい。何か、落ち着くっていうか、安心するっていうか」


 一番最初に来た日からここは好きなんだよね。こんな素敵な所でお昼寝なんか出来たらすっごく幸せなんだよねぇ。


「ふわぁ…」


 なーんて思ってたら欠伸が出ちゃった。


「眠たいの?」

「いえ、ここでお昼寝したら気持ちいいだろうなぁって」


 だってこんなに綺麗な景色だもん。


「ふふ、なら後でお昼寝しようか」

「はい!」


 よし、今度もアル様を寝かせられるかな?アル様がお昼寝をするところなんてあんまり見た事ないけど、私と一緒にお昼寝してくれるかな?

 してくれるといいな。


「母上が気に入っている薔薇園も庭園にあるけれど、ここも特別感があるよね」


 アル様が言っているのは誰でも入る事が出来る薔薇園の事だね。こことは別の薔薇園の事。というか、ここは本当に特別な場所ですもんね。限られた人しか入る事が出来ないから。





 それにしても、やっぱり何度見ても綺麗なバラ園。誰が手入れとかしているんだろう?いつ来ても咲き誇っている。…あれ、季節感が無い?ここはいつでも春頃ってこと?不思議。

 普通の庭園とかは季節感があるのに、ここだけ季節が固定されている?いや、ただ、バラが咲きやすい気候が維持されているだけかな?そんな魔法あるのかな?あったとしてもずっと維持し続けるなんて出来ることなの?


 いや、無理だね。そんな事を出来るくらい大きな魔力の人はいないと思う。たぶん、たまたまこの気候が維持されているだけだろう。





「今日はレオン兄上とディアナ義姉上もバラ園にいるというから会えるかもね」

「!!」


 なんと!

 このバラ園で他の人に会うのは必ず王家の人だからね。


「楽しみです」


 さっき会ったけれど、何回会っても嬉しいものよ。でも、このバラ園、すっごく広い。果たして出会えるかどうか。レオンお兄様はどのあたりに転移してきているんだろう?


「うーん」


 耳を澄ましても二人の声は聞こえない。まだバラ園に来ていないか、遠くにいるか、私の聴力が低いか。さてどれでしょうね。


「食後に少し執務を片付けてから来るって言ってたから、もしかしたら私達が帰る頃に会えるかもね」


 でも転移されてくる場所は毎回同じなんだよね。だから結局毎回同じルートでバラ園を見て回っている。たまには違うルートで来てもいいかも。でも、そうなると、迷子必須。

 ……じゃなくて、転移されてくる場所が遠く離れているなら会える可能性は少ないかも。まあ、帰る時の転移はどこからでも行けるからうろうろしても問題は無いね。探せるだけ探してみようかな。


「じゃあ、しばらくお散歩しましょうか」

「そうだね。歩いてたら会えるかもしれないし、いつもより遠い所に行ってもいいかもね」


 !!


 さっすがアル様!れっつおさんぽ。





 あれ、この辺って。


「こっちの方にアネモネがありましたよね?」

「うん」


 薄水色の…


「たしか、前見たのは」


 もう少しあっちだったかな?確か、私の身長より低い所にあった気がする。


「あっ!ありました!」


 やっぱり可愛いなぁ。

 確か、第9代リヒト国王が大切にしていた人に似たアネモネの花を、このバラ園に植えたんだったよね。リヒト様は肖像画にも描かれていた人でなんだか優しそうな人。で、リヒト様が大切にしていた人は女性騎士のリーア・ライ・ドマール。リーアさんだったよね。


「やっぱり素敵な人だったんですよね?」

「ん?」


 あ、主語が抜けてた。


「えっと、リヒト様とリーアさんの事です」

「あぁ、その二人の事だね」

「はい」


 思わず自己完結しようとしてたよ。


「そうだね、リーア・ライ・ドマールに関しての記述は少なくてね。でも元は平民だったけど、おぼんで王を守ったという逸話が残っているよ」

「へえ!………え?」


 おぼん?


「おぼんってあれですよね、料理を運んだりする…?」

「うん、それ」


 な、なんと。


「戦争中に敵の銃をおぼんで防いだんだって」

「へ、へぇ」


 凄すぎて意味が分からない。銃って目視出来るものだっけ?おぼんで防げるようなものだっけ?

 ま、まあ、出来たから逸話に残っているんだよね…?少なくとも私には無理な気がする。騎士団長のシュヴァン様だったら出来るかな?


「で、リヒト国王はいい人」

「……えーと?」


 分かりやすくかつ簡潔にありがとうございます。でも、もっと詳しくお願いします。


「うーん、詳しく言うとどうしても政治の難しい話になってしまうんだよね」


 確かにそういう話は理解はできるけど苦手なんだよね。……理解は出来るんです、私これでも優秀なんです。でも、難しい話は苦手です。


 じゃあ、簡単な話から、そう言ってアル様は話を続ける。


「リヒト国王は先代を倒して王になった話はしたかな?」

「はい」

「その後に国民の生活基盤を整えたりね」


 おぉ。それって結構凄いことですよ?もし、一日一食しか食べられなかったりしたら悲しすぎて死んじゃう。物理的にも心理的にも。


「当時、隣国のへイン国という所との諍いを解決したのもリヒト王だし」


 おぉ。……ん?


「へイン国?」


 今そんな国あったっけ?


「今はもうないよ。戦争で負けて地図上から消えたんだって」

「ふぇ」


 これだけ聞いてもすごいなって分かるよ?今はとても幸せで平和だから、そもそも打開しようとする状況が少ないからね。でも当時はそうじゃなかったって事だよね。前王がいろいろやらかしてくれたから、それを何とかする為にリヒト様が頑張ったって事。


 今も諍いはあるけれど、それでも戦争まではいかないもんね。……多分。

 諍いといえば5年ほど前の盗賊と戦った時のことを思い出した。思い出しただけでどうともしないけどね。


「後は、……いや、やめておこう」

「え?」


 なんで止めちゃうんだろう?


「アル様?」

「いや、何でもないよ?」


 あ、これは話してくれなさそう。話題を替えましょう。


「そういえば、アル様はお兄様達の結婚式に、何か送るんですか?」


 そう、実は私のお兄様とマリーお姉様の結婚式がとうとう行われるのです!あと30日程先だけどね。


「実は私達王家からは、このバラを贈りたいな、と思っているのだけど、どうかな?」


 このバラってバラ園のバラの事ですよね?

 

「わぁ!素敵です!!」

「もちろん、ここのバラだという事は大っぴらには言わないけどね。狙われる可能性もあるから」


 納得です。なんせこのバラたちは貴重という言葉では表せないほど貴重な物だもの。一見沢山咲き誇っているけれど、市場には出回っていない。正真正銘、ここにしかないバラだ。

 そんなバラをどうやってこんなに沢山手に入れたのか分からないけど、それは当時このバラ園を作った人にしか分からないものだ。それに、これを言い出すと、このバラ園はどうして王族の血を引いている者の転移じゃないといけないのか、とか、気になる事はいっぱいだもん。


「実はトーリとシリア嬢の結婚式のでも送ろうかと思ったのだけれど、トーリに断られかけてしまってね」

「え?何でですか?」

「『恐れ多い』だって」

「あぁ、なるほど」


 私でも断る気がする。勿論、とっても嬉しいけどね。でもやっぱり、盗まれたらとか、枯らしちゃったらとか考えてしまう。枯らしてしまうのはしょうがないことだけどね。いくら的確にかんりしても花はいつか枯れてしまう。あのバラ園が特殊なんだよ。


「結局喜んで受け取ってくれたけどね。でも今回の二人はあっさり受け取ってくれるといいなぁ」

「…」


 でも、お兄様なら受け取ってくれると思うな。確かに一度驚いて戸惑うかもしれないけれど、それでも喜んでくれそう。


「シルフィーは何を贈るか考えているの?」

「うーん、それがまだなんです。お姉様の時と同じじゃない方がいいかなと思ったのですけど、なかなか考えられなくて……」

「シリア嬢たちの結婚式には何を贈ったんだっけ?」


 えーと確か。


「結婚式当日に私の魔法で桜吹雪をしたんです」


 義父様にお願いして落ちた桜の花びらを貰ったんだよね。


「あぁ、思い出した。そうだったね」


 あれは綺麗だったなぁ、と呟くように微笑む。


 今回は何にしようかな…。もうしばらく考えてみよう。


「アル様、なにか…」


 いいアイデアがありますか?と聞こうと思ったけれど


「う…っ!」

「アル様…?」


 アル様が急に胸を押さえて苦しそうに蹲った。




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