092、『生徒会を探せ』開始です
生徒会の出し物が始まるという事で、多くの生徒がそわそわしている。皆、まだ何をするかを知らないはずだけれど、それでも楽しみにしてくれているんだ。
そして私が今どこにいるかというと。
「アル様、こっちに綺麗なお花がありしたよ~」
「あぁ、じゃあ、行ってみようか」
普通に園庭を散歩しています。
一般生徒からは、
「え?生徒会の出し物は?」
「こんな所でどうしたんだろう?」
「あの衣装、お揃いかしら?素敵ね」
「相変わらず、仲がよろしいわね」
「あら、もしかしてあれがシルフィー様が大切になさっているうさぎの…」
みたいな不思議な目線を向けてきた。
うぅ、やっぱり、るぅが注目を集めている。恥ずかしい!15歳になってまでぬいぐるみと一緒に歩いているなんて!
「さて。そろそろ始まるかな?」
「そうですね。そろそろですよね」
私達メンバーは皆、もうそれぞれ別の場所で自由に動いている。講堂とかに皆を集めて開始すると、それが私達の本物って分かっちゃうからね。
当然説明とか、開始の合図もルートお兄様が魔道具を使って学園全体に聞こえるように伝えるみたい。
『皆、お待たせ』
「あ!ルートお兄様の声だ!」
魔道具を使ってルートお兄様が話を始める。他の生徒も待ちわびていたようで、そわそわとこっちを見ている。こ、こっちを見ないで欲しいなぁ。私達が本物とばれるじゃないですか。
『今年の生徒会の出し物は「生徒会を探せ」だ』
ルートお兄様がそう言った途端、周りの生徒の目が一気に私達の方を向いた。ぎゅんっって音がするくらい勢いよく。
「ひぇ」
こ、こわ。思わず悲鳴が漏れる。
『ではルールを説明する。ルールは簡単。皆に先程配った紙に、生徒会と第二王子であるアル兄上の計6人分のハンコを集めて欲しい。しかし、校内にはそれぞれ10人ずつの偽物が存在している。その偽物からハンコを貰ってしまうとその紙は無効になる。最後に受付にいるジェイド先生に紙を渡して貰ったら押したものが本物かどうか分かる様になっている。本物6人からハンコを貰った人は抽選で景品も用意しているから頑張ってくれ』
なるほど。私達がハンコを押しても、その場で『○』が押されるわけじゃなくて、『×』のハンコと区別が出来ないようになっているんだね。で、6つのハンコを集めた紙をジェイド先生に渡すと、それが本物のハンコかどうか鑑定してくれるってわけね。
確かに、その場で本物かどうか分かれば本物の私達に人が集まるもんね。
流石ルートお兄様!!
そんな所まで考えているなんて!
『ではこれより、『生徒会を探せ』を開始する!』
あっ!ど、どうしよう!私達がさっきからここにいたから、私達を本物だと思っている生徒がこっちをロックオンしている!
『あ、ちなみに。私達の偽物は既に各所に散らばっている。皆の傍に先程からいる人は、本物かな…?』
ルートお兄様、ナイス!私達に向かってきていた生徒がその足を止める。
「はぁ、こわかったです」
「そうだね。流石に勢いが良かったね」
アル様と二人で顔を見合わせふふっと笑う。
「どうしますか?どこに行きましょうか?」
「うーん」
自由にしてもいいって言うけれど、逆に困るなぁ。
「じゃあ、さっきまでの校内探検の続きをする?」
「…!」
そっか。さっき「お化け屋敷」で中断しちゃったもんね。
「そうしましょう!」
どこかに隠れておこうかなと思っていたけれど、アル様と校内探検ならもっと楽しい!
「アル様、おいしいの食べましょ!」
寝たからお腹が空いたのです!
「アル様、こっち!」
「あ、シルフィー手!」
私が走っていこうとすると、アル様が私の手を取った。
「はぐれたら困るからね」
「はい!」
でも、やっぱり皆にじろじろみられているぅ。いつも見られているけれど、今日はその目線が尋常じゃない。私達が本物か見極めているのだろうけれど、アル様との会話もずっと誰かしらに聞かれているから恥ずかしい。
「どこ行こうかな~」
美味しいものっていっぱいあるからどれを食べようか迷うなぁ。
「あ、なら」
アル様が思いついたように私の手を引く。
「アル様?どこに行くんですか?」
「ふふ、灯台下暗しってね」
……?
灯台下暗し…?
「あ、ここ!」
灯台下暗しって、この事か!
「あら、シルフィー様……、の本物か偽物か分からないけれど、お帰りなさい!」
「た、ただいま!」
ついたのは『森のうさぎカフェ』!
私のクラスの出し物!
多分、このクラスメイトさんは、私達のクラスの出し物だからこそそう言ってくれたんだと思うけれど、「おかえりなさい」って、何だかメイド喫茶とかに来たみたい。…メイド喫茶で間違いはないんだけれどね!メイドさんいるし!
「ここなら美味しいものが食べれてゆっくり出来るでしょう?私もまだ食べていないケーキを食べてみたいからね」
「はい!」
じゃあ、私はいかにもお客さんらしく接客されますよ!
「ではご案内しますね」
「はーい!」
でも、案内してくれている生徒さんも私を本物か見極めている。だって、じーっと見られているんだもん。何だか恥ずかしい。
「シルフィー、何食べる?」
案内された席に座ったアル様が私にそう問いかける。
「えーっと、」
何がいいかなぁ。普段食べられないものがいいよね。でも、今はチョコレートの気分なんだよなぁ。
という事は、ブッシュドノエルとガトーショコラかなぁ。
「あのね、アル様」
「ぐっ…、な、なに?」
私がるぅの両手を持ち上げて、ソフィアがやったみたいに、るぅが話しているみたいに動かす。
あざとく見えるように頑張ったんだけど、効果はあったみたい。アル様は胸元を押さえて蹲りそうになってしまった。効果があり過ぎましたか?
「あのね、私、チョコレートが食べたいの」
「ぐっ、かわいい」
「それでね、アル様。ブッシュドノエルとガトーショコラを半分こしよ?」
「も、勿論。シルフィーの頼みなら!」
やったぁ!誰かが「アルフォンス殿下って…、シルフィー様に弱い…?」って言ってるけど、そうなのかな?そうだといいな!そうすれば私のおねだりが通りやすくなる!
「ご注文はお決まりですか?」
「あっ、はい!」
私達の会話を聞いていたのか、注文に来てくれた。
「えっと、」
「ブッシュドノエルとガトーショコラですね」
あ、本当に会話聞いてたんだ。私が言う前に注文を受けてくれた。
「飲み物はどうしますか?」
「えーと、私がアイスティーで、アル様は…?」
「私も同じものを」
「はい、かしこまりました」
楽しみだなぁ。
「あの、アル様」
「ん?」
「食べ終わったらその後どうしましょう…?」
こそこそっとアル様の耳元で聞く。流石に大きい声では聞けない。
「ん-、どうしようか。シルフィー行きたいところある?」
アル様も私の耳元に顔を寄せてこそこそと話す。
「うーん……」
今すぐにここに行きたいって所はないかも。
「やっぱり、うろうろしながら見て、回ろうか」
そうしましょう。
「お待たせしました」
「おいしそうだね」
「でしょ!」
自分のクラスの出し物だから、「おいしそう」と言われたら嬉しい。しかも可愛い!
「「いただきます」」
最初はブッシュドノエルにしよう!
一口切って、ぱーく。もぐもぐ
ん~、まいっ!
「ほっぺた落ちちゃいそう…!」
「本当だね。これも美味しいなぁ」
最近おいしいものばっかり食べている気がする。幸せ~、だけど太るぅ…。
あ、アル様の方のガトーショコラも食べたいなぁ。その前に、
「アル様。あーん!」
私のケーキも一口切ってアル様に渡す。
「こっちもおいしいね」
「はい!」
「アル様!私も!」
アル様の持っているガトーショコラも食べたくて、口を開けて待つ。
「ちょっと待ってね」
そう言ってアル様はケーキを切る。
「はい、あーん」
「あーん!」
うまうま~。
このレシピを開発したジョシュア君は本当に天才だね!私はなにもしていないけれど、おいしいって言われると私も嬉しい。
そういえば、いつも通りアル様とケーキを分けっこしたけれど、今回ばかりは少しはずかしいかも。だって見られてるもん。でも、アル様が一緒だからいいか。
あと、アル様が私の行動を止めないって事は、この「あーん」は皆の前でしても大丈夫な行動ってことだよね?
正直、令嬢としてどこまでセーフなのか分からない。……ただ、肩車がアウトなことは分かります。
もし、少しでもこの小説をいいなぁって感じたら、☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらてると、すっごく嬉しいです!