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091、何だか騙された気がします


「私達は着替えましたよ~」


 生徒会室に戻ると、ルートお兄様とリシューも着替えていた。


「ふわぁ!二人とも素敵です!」


 ルートお兄様もリシューもやっぱり黒がメインのゴシック服。こういう服を着ている姿を見るのは初めてだからとても新鮮。


「ルートお兄様は青ですか?」

「うん、そうだよ」


 何だか王子様っぽい!王子様だけど!ルートお兄様はさっき言った通り、黒がメインだけど、アクセントとして青色の布が使われている。そしてリシューは白に限りなく近い緑。


「素敵素敵!!」

「ふふ、シルフィーも思った通り可愛いね」

「リシューだって可愛い!」

「ありがとう」


 リシューはいつまで可愛いって言われて喜んでくれるんだろう。だって、リシューはもう可愛いじゃなくて格好いいんだもん。いや、可愛いんだけどね。


「ふふ、本当にリシュハルト様は可愛らしいものね」


 ほら、リリーお姉様だってリシューの事を可愛いって言っている。


「……ありがとうございます」


 ……?


 何だかリシューは不満げ?さっき私が言った時は嬉しそうだったのに?それに、入学時に初めてリリーお姉様にあった時に私達は二人まとめて可愛いって言われた。でも、その時のリシューは恥ずかしそうにしながらも嫌そうな顔は見せなかった。


 どうしたんだろう?心境に変化?


 やっぱり可愛いって言われるのは複雑なのかな?もしかして私は幼馴染だから嫌って言えなかったとか?

 あんまり可愛いって言わない方がいいかな…。今度から気をつけよう。




 

 そうしてぼーっとリシューの事を考えていると、背中に衝撃が走った。


「ふにゃあ!」


 び、びっくりしたぁ!後ろから急に誰かが抱き着いてきた。誰かと言っても一人しかいないのだけど。


「アル様!急にびっくりするじゃ、ないで…、っ!!」


 か、かっこいい!!可愛い!!


 ちょっと情緒が不安定になりそう。


 だって、だって。アル様も私達とお揃いの衣装を着てるんだもん!!!


「アル様、すっごくかっこいいです!」

「ありがとう」


 アル様の衣装も勿論皆と同じ黒がメイン。そして、ピンクに近い赤。私と少し似ている!


「でも、どうしてアル様も?」


 アル様は元生徒会ではあるけれど、今は生徒会ではないのに…。でも、アル様のこんな洋服こそ新鮮!


 みんなみんな新鮮で素敵!


「私が今日ここに来ることを予感していたルートが用意をしていたんだ。本当にルートの予測には恐れ入るよ」


 と、アル様はため息をつきながら言った。……確かにルートお兄様の予測は恐ろしいです。


 はあ、皆で写真を撮りたい。これってあれみたい。前世で言うと、何とかレンジャー!

 だってそれぞれの持ち色があって、少しずつ違うけれど似たような衣装を着ていたりとか。


「ふふ、お揃いの衣装うれしいなぁ」

「「「「「!」」」」」


 皆が口や顔を覆ったりしているけれど、そんなのいつもの事だから気にしません。


 今は皆とお揃いっていう事をかみしめるのです。





「シルフィー、さっきはありがとうね。着替えが終わったよ」


 アル様がそう言った。


 ?


 アル様は着替えが終わっているのは知っていますよ?改めていう訳が分からない。


「はい」

「!」


 アル様が言いながら出してきたのは


「るぅ!!」


 ここで察した人もいるのではないでしょうか?


 るぅは私とお揃いの衣装を着ている!


「かわ…っ!」


 ど、どうしたらいいの、この感動を…!


 るぅをぎゅっと抱きしめる。


「かわいい、かわいい、かわいい」


 可愛い!


 だって細部まで私の衣装とそっくりだもん!私がるぅのうさ耳を着けている事もあって本当にそっくり!


 でも、


「どうしてるぅの衣装もあるんですか?」


 アル様に聞くと、アル様はそーっと目をそらした。


「いや、あー。何か、今日ここにシルフィーがるぅを持ってくるだろうと予測していたんだ。ルートが…」

「ひ、ひぇ」


 こ、怖いです、ルートお兄様。どこまで予測…。いや、もう予知と言ってもいいのではないのでしょうか。

 ほら、ソフィアだって引いてる…。リシューは…、あ、なんか受け入れている?


 まぁ、いっか…?


 



「それで、私達はどう動けばいいのですか?配置場所とかも決まっているのですよね?」


 この衣装を着たって事は私にもちゃんと役割があるという事だよね。ちゃんとどこに居ればいいのかを確認しておかないと。『生徒会を探せ』って事は、私達はそれぞれでどこかに隠れておくって事だと思う。そしてルートお兄様の事だから、当然隠れる場所とかも用意してあるんだと思う。


「特に。自由に」

「え?」

「自由に動き回って」

「…えーと?」


 え、それでいいのですか?それってすぐに見つかりません?


「丁度良かった。皆もう集まっているし、今回の企画を説明しておこうと思う」


 おぉ、やっとですか。こんなに直前まで知らされないとは思っていませんでした。でも、今回は私だけじゃなくて他の一般生徒も内容を知らないんだよね?


「『生徒会を探せ』では、シルフィーの予想通り、生徒会メンバーを探してもらう企画なんだ。本物の私達をね」

「本物…?」


 という事は…、


「私達の偽物がいるって事ですか?」

「そう。魔法で僕達そっくりの偽物を10人ずつ配置しているんだ。勿論僕達の意思も引き継がれていて行動も本物そっくりだよ」

「ふぇー」


 そんな魔法があったんだ。


「魔法の出どころは今回は企業秘密。あ、でも怪しいものじゃないよ。アル兄上も知っているから。ね?」

「あぁ、あの人か。間違いないよ。大丈夫」


 何だか王家の繋がりって凄いなぁ。


「皆このハンコを持っていて」


 ?


 ルートお兄様は皆にハンコを一つずつ配る。勿論アル様にも。

このハンコ、何だか不思議。だって、普通のハンコって朱肉を付ける所がデコボコしていて押すものが分かるよね?でも、このハンコ、たいらで何を押すのかも分からない。


「このハンコは押してみないと何が押されるか分からないような見た目だけど、皆が持っているハンコは間違いなく『○』が押されるハンコだよ」

「まる?」

「という事は『×』もあるの?」


 だよね。私も思ったよリシュー。


「うん。バツを持っているのは僕たちの偽物。僕たちは偽物を含め、皆校内を歩き回っていて、一般生徒に見つかったらハンコを押していくんだ。これにね」


 そう言ってルートお兄様が見せてくれたのは六個の四角の中に生徒会メンバーの名前が入ったもの。六個という事で、ちゃんとアル様の名前もある。……本当にルートお兄様はアル様が来ることを想定していたんだね。


「この紙は一人につき一枚だけ配られる。でも、ハンコは押したら消せないからね。偽物を見つけて偽物に押して貰ったら、その紙はもう無効となる」

「無効…?」

「そう。景品を貰う為のチケットとしての機能を失う」

「…景品?」

「そう。私達全員分の本物のハンコを集めた生徒の中から抽選で数名、後日、私達の絵姿をプレゼントするようになっている」


 は、初耳ですよ?!


「と、ここまでで質問はある?」

「ん-と、取り敢えず、私達は自由に校内を回って、生徒にお願いされたらこのハンコを押せばいいのですね?」

「その通り」


 思ったより楽しそう!


「分かりました!頑張って校内歩き回ります!」

「うん。よろしく。あ、シルフィーはるぅを抱っこしたままでお願い」

「ふぇ?!」


 な、何で?!突然なんてことを言って来るんですか、ルートお兄様!


「大丈夫、ちゃんとるぅ込みで偽物を作ってもらうから」

「そ、そういう問題じゃないです!」


 るぅをそっと見る。キラキラのつぶらな瞳。ふわふわの身体。そして私とお揃いの素敵なお洋服。正直、皆に見せびらかしたい気持ちが無い訳では無い。


「皆、噂ではるぅの事を聞いたことがあるけど、実際に見た事がある人は少ないからさ」

「で、でも、15歳になってまで恥ずかしいです!」


 そう。そこが問題。だって15歳になってまでぬいぐるみを持ち歩いている人いる?!お家で大切に可愛がっているなら分かるのよ?でも。持ち歩くのは……。


「シルフィーはるぅと一緒に居ることを恥ずかしいと思っているの…?」

「ふぇ?!」


 ソフィアさん?なんてことをおっしゃるのですか?な、なんでそんな話に?!


 ソフィアが私からるぅを取り上げる。


「あっ…」


 さっきまで腕の中にいた温もりがいなくなると何だか寂しい。思わず眉がへにゃりと下がってしまう。


「るぅ…」


 手を伸ばすけれど、ソフィアが高い所に持ち上げてしまった。く、こういう時に不便だよ、この身長!


 ソフィアはるぅを、ソフィアの顔の前に持ってくる。


「シルフィー…」

「!」


 る、るぅが喋っている!!?


「私、シルフィーと一緒に学園祭を見て回りたかっただけなのに…。シルフィーは私と一緒に学園祭を回る事が恥ずかしいんだ…」

「そ、そんな事ない!」

「シルフィー、いつも私に学園の事話してくれるでしょう?私だってシルフィーと学園生活を楽しみたいのに」


 !!


 どうしてソフィアは私がるぅに話しかけている事を知っているの?!


「その為に私はシルフィーとお揃いのお洋服を用意して貰ったんだよ…?」

「るぅ…」


 そんなに私との学園祭を楽しみにしてくれていたなんて…。いつもお留守番ばかりで寂しかったのかな?


「シルフィーは私の事嫌いなの?」

「そんなことない!私はるぅの事大好きだよ!」

「じゃあ、学園祭、一緒に回ってくれる?」

「勿論!」


 …………あ。


 あーっ!!


 皆がにやにやしてるぅ!く、悔しい!騙された!


「よくやった、ソフィア」

「お褒めに預かり光栄です」


 なんてやり取りをルートお兄様とソフィアがやっているけれど、私は穏やかではいられない!


「言質はとったよ」

「ふえぇ…」


 や、やられた…。


 ……いいもん!るぅと一緒に学園祭を楽しめるならいいもん!


 ソフィアからるぅを取返し、ぎゅーっと抱きしめる。


 ふてくされてなんかないもん!


「アル兄上はシルフィーと一緒に居てね。僕から提案しておいてなんだけど、この状態にシルフィーを一人にしておくなんて危険すぎるから」

「勿論そのつもりだよ」


 え、私はアル様と一緒に行動ですか!?


「やったぁ!」


 それは単純に嬉しいからアル様にぎゅーっと抱き着く。


「うぐ、かわいい」

「アル様、なでなでして?」

「か、可愛すぎて怖い」


 なでなで。


「ふにゅう」






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