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090、お久しぶりです、小悪魔さん


「ごめんなさい、少し遅れちゃいました…」

「お邪魔するよ」


 私とアル様が生徒会室につくと、私以外のメンバーはもう集まっていた。皆は私の姿を見ると安心したように表情を緩めた。やっぱり皆にも私が倒れたって情報は伝わっていたよね。ルートお兄様とソフィアなんかは私が倒れている姿を見ているだろうし。心配かけただろな。


「シルフィー、もう…、大丈夫、なの?」

「うん、大丈夫…」


 ソフィアが詰まりながら話しかけてくるのは、私の今の状態を見ているからでしょう。


 あの後、結局アル様は私を降ろしてくれることなく、私はここまでアル様の抱っこで来ました。そして、今も抱っこされたまま。おまけに私はるぅを抱っこしているからとても奇妙で不思議な光景だろう。

 結局、どこからるぅが登場したのは分からなかった。アル様、もしかしたら私の部屋に侵入したの…?ま、まさかね!……違うよね?


 でも、戸惑っているのはソフィアだけで、リリーお姉様はあらあらと言いながら微笑んでいる。そして、リシューとルートお兄様は「あぁ、いつもの事か」という感じで触れても来ない。それが一番恥ずかしいのだけど…。


「シルフィー、もう大丈夫なの?」

「リシュー、うん。もう大丈夫。アル様が一緒だったから」

「そっか」


 私がそういうと、リシューは安心したように息を吐いた。


「良かった。アルにぃと一緒だったから大丈夫だとは思っていたけど」

「そうだね。アル兄上が一緒だったからあんまり心配していなかったかな」


 流石、アル様。信頼されていますね。そして心配はあまりされていなかったのね。でも、心配をあまりかけていないみたいで安心した。だからこそ、二人はこう言ってくれたのかもしれない。昔から私を知っている二人は、私がこういう時にどう思うか知ってくれているからありがたい。


 というか、


「アル様、そろそろ降ろしてください!」

「えー」

 

 「えー」じゃないですよ!もう到着しているんです!これ以上抱き上げる意味はありません。


「もうちょっとだけならいいんじゃない?」

「めっ!です!」


 私がそういうとアル様はとっさに顔をそらしてしまった。


「『めっ』って何?可愛すぎない?可愛すぎて怖い。シルフィーがやるからこそ許される。この可愛い状態のシルフィーを手放せと?……無理だろう。こうなったら他の男どもの目をくりぬいて、」

「怖い怖い怖い!!!」


 アル様の発想が怖い!


 ほら!この怖いアル様に面識のないソフィアが引いているじゃないですか!相変わらず微笑ましい笑顔で見てくる他の三人は置いておいて、本当に発想が怖いです!もう少し穏やかに!


「ここで降ろしてくれないなら、もうお城でも私のお家でも抱っこさせてあげないもん!」

「!!」


 え、何でそんなにショックを受けた顔で見てくるの…?私間違った事言った?そもそも抱っこ移動がおかしい事に気付きましょうよ!私15歳ですよ!

 そして、何でルートお兄様達も同情するような目線をアル様に向けているの?私に向けるべきでしょう?!


 可哀想なのは私ですよ?


「シルフィー、それはアルにぃが可哀想だからやめてあげて」

「そうだよ。そんなのアル兄上が死んじゃう」

「そうねぇ、殿下の為を思うと得策ではないわね」


「え?え…?」


 わ、私が悪いの?


「シルフィー」

「は、はい!」


 アル様は私を抱き上げたまま私に真剣に話しかけてきた。結局降ろしてくれないんですか?


「シルフィーは私からシルフィーを奪うつもりなの?」

「えっ、と…?」


 どういう事でしょう?抱っこをやめるって話が、何でそんなに壮大な話に?

 それはともかく、今すぐ私を降ろせばいいだけの話では…?


「えっと、アル様が私を降ろしてくれなかったらの話ですよ?」

「私に、シルフィーを降ろせと言うの?」

「え、はい」


 …え?さっきからそう言っていますよね?


「まあ、二人の言い分はともかく、そろそろ時間だから降ろしてあげれば?」


 と、ここでようやく救世主が現れました。ルートお兄様ナイスです!出来ればもう少し早めに助けて欲しかったです!


「仕方ないなぁ」


 と、アル様はしぶしぶといった感じで私を降ろす。や、やっと地面に足が着いたよ…。


「結局、生徒会は何をするんですか?」


 凄く今更だけど、やる直前になってもまだ知らないんだよね。そろそろ教えて下さい!


「『生徒会を探せ』だよ」

「…『生徒会を探せ』?」


 何でしょう、それは?何だか前世で特定の人を探すような絵本があった気がしたけど、そんな感じかな?


「という訳で、シルフィーはこれに着替えて」

「ふぇ?」


 という訳とはどういう訳でしょう?ルートお兄様は「これ」と言いながら袋を渡してきた。会話からすると、これは服かな?確かに私の今の洋服は『森のうさぎカフェ』のうさぎの衣装だもんね。流石にこのお洋服のまま生徒会のお仕事をするわけにはいかないもんね。


「はーい。着替えてきます!」

「あ、待って。私も行くわ」

「私も行きますわ」


 あ、そっか。二人は制服だけど、二人も衣装に着替えるんだね。ところで衣装って何だろう?制服じゃダメなのかな?衣装って事は劇?でも、ルートお兄様も劇ではないって言っていたし、練習もしていないし。


「さあ、行くわよ」

「あ、うん」


 ソフィアとリリーお姉様に手を引かれ更衣室へ向かう。


「あ、シルフィー、るぅを少しだけ預かっていてもいいかい?」

「え?」


 生徒会室を出る直前でそう言ってきたのはアル様。


「シルフィーが着替えている間、るぅは私とお留守番でもいいかな?」


 も、もしかして!


「アル様もるぅと一緒に居たかったの?」


 本当はるぅみたいに可愛いものが大好きだけど、男の子だから言い出せなかったとか??

12年間アル様と一緒に居て初めて気づいた事実!


「勿論!アル様さえ良ければ、るぅもアル様と一緒にいたいって言ってますよ!」

「……なんだか誤解を受けている気がしなくもないけど、まあいいか」


 ?


「じゃあ、着替えてきますね!」

「うん。行ってらっしゃい」


 部屋の外で待ってくれていた二人と一緒に更衣室へ向かう。


「それにしても、『生徒会を探せ』ってどういうものなんですか?」

「それなら、後で会長から説明があると思うわ」

「なるほど」





 更衣室に到着して、衣装が入った袋を開けてみる。


「~~っ!!」


 か、可愛い!!!


「ふふ、何だか新鮮ねこういう服って」

「確かにそうですね。制服とは全く系統がちがいますし」


 二人は何だか冷静に会話をしているけど、こういう服が入っているって知っていたのかな?


「すっごくすっごく可愛いです!!」


 私達三人に用意された服は、皆似たような服。


 そう。懐かしき、『ゴシック服』!!


 私が小さい時にお父様とお母様からお誕生日のプレゼントで貰ったような黒くてフリフリのすっごくかわいい服!小悪魔になれちゃう、魔法のお洋服!


「素敵です!」

「あ、うさぎの耳はそのままで」

「ふぇ?!」


 私が興奮しているにも関わらず、ソフィアは冷静に注文を付けてきた。

 え、だってこのうさ耳は『森のうさぎカフェ』のですよ?確かにこのゴシックのお洋服とるぅのピンクのふわふわのうさ耳はすっごく合うと思う。だってこのゴシックの衣装にも所々、ピンクのふわふわの生地が使われているから。


「大丈夫。問題ないわ」


 問題あると思うのですが…。でもソフィアが言うなら間違いないのかな?

 あれ、靴まで用意されているの?準備万端過ぎません?





「二人とも、すっごく素敵です!可愛いです!」


 勿論、ソフィアとリリーお姉様も私と同じくゴシックのお洋服。でも、少しずつみんな違う。リリーお姉様はロングスカートになっていて、どちらかというと綺麗系。アクセントには白いレースがふんだんに使われている。

 ソフィアと私は膝丈。でも、ちゃんとタイツが用意されていた。しかも衣装は私とお揃い!違うのが私はピンクの生地が所どころ使われているけれど、ソフィアは水色。

 でも、皆、黒の生地がメインだから、何となくお揃い感が強い。


 でも、問題があるとすれば、


「どうしてソフィアはうさ耳じゃなくて、普通の髪飾りなの?」


 そう。私にるぅのうさ耳を着けたままにしておくように言いながら、自分は黒が基調の髪飾りを着けているのです。


「あぁ、シルフィーにもあるわよ」


 そう言って、ソフィアは私もうさ耳の片方の根元にソフィアとお揃いの髪飾りを付ける。


「ふわぁ!可愛い!」


 って、そうじゃない!


「私、うさ耳とってもいい?」

「だめ」

「ダメよ」


 はぅ。リリーお姉様にまで拒否されてしまいました。


「シルフィーはこれでいいの!」


 ソフィアにこう断言されてしまっては拒否できません…。リリーお姉様もうなずいているし…。


「はーい、分かりました」


 でも、頬を膨らませるくらいは許されると思うのです。



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