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086、お久しぶりです



 クレープは本当にうまうまでした。アル様曰く、周りにお花が飛んでいたようです。でも、それくらい美味しかったです。


「アル様のクレープもとっても美味しかったです!」

「そうだね。どっちもすごく美味しかったね。シルフィーと一緒に食べるとなんでも美味しく感じるね」

「!」


 それは私のセリフです!


「私もアル様と一緒に食べるのすごく好きです!」

「……はぁ、可愛いなぁ」


 アル様がため息をついて呟きます。


 可愛いって言われるのは嬉しいです。


「アル様も格好いいです」

「!」


 二人で「ふふっ」と見つめ合って笑う。何だか幸せ。こういう幸せがずっと続くといいんだけど…。





 そしてぶらぶらとまた歩き回ります。やっぱり出店って面白いですね。特に食べ物屋さんに目が行きます…。あっちへふらふら~、こっちへふらふら~ってするたびにアル様に手を引いて連れ戻されます。食べ物屋さんに目を引かれるけど、お腹いっぱいでもう入らないんだよね……。アル様に連れ戻されてよかったです。


「もう、十分外は見たかな?そろそろ校舎内を見てみる?」

「……、そうですね!戻りましょう!」


 考えてみたけれど、園庭はもう十分見たね。それに、もうそろそろ騎士の人も見回ってくれると思うから大丈夫だと思う。そういえば、騎士の人って誰がくるんだろう?トーリお兄様かな?


 アル様はいつも通りそっと私の手をにぎる。私もその手を握り返すと、アル様が素敵な笑顔を向けてくれる。


「へへっ」

「ふふっ」


 さあ、校舎へ行きましょうか!………と思ったんだけど?





 ん?





 私達の方に「よっ!」って感じで手をかかげている人が居る。遠い所だけど、何だか見た事があるシルエット…、

 

 あれは!


「トーリお兄様!」


 こういう所で偶然知っている人に会うのってなんだかそわそわしちゃう。いつもと違う気分でなんだか嬉しい。


 アル様の手を引きながらトーリお兄様の所まで走っていく。久しぶりに会えたから嬉しい!アル様まで走らせてしまっているけど、気にしない!私の足が遅いのか、アル様の足が長いのか分からないが、私は全力なのに、アル様は早歩きとか訳が分からない。でも気にしない。


「トーリお兄様!」

「おわっ!」


 そして飛びつきぎゅーっ!……をする前にアル様に手を引張られて叶わない!


「アル様?」


 え、なんか笑顔が黒い…?


「え…?」


 な、なんか怖い…?


「シルフィー、私以外の誰に抱き着こうとしているの…?」


 ひ、ひぇ。そうだった、わたしはアル様の婚約者だった。ここは学校で公共の場。流石にアル様以外の人に抱き着く訳にはいかない。例えお姉様の旦那さんでも!


「ご、ごめんなさい…」

「ふふ、慌てるシルフィーは可愛いね」


 あ、元のアル様に戻った!良かった。そういえば、トーリお兄様は大丈夫?目の前で私が一時停止したようなものだもんね。


 あれ、何だかトーリお兄様、笑ってる?肩すごく震えていますけど?


「トーリお兄様?」

「ふは、悪い!なんか変わらないな、お前たち!」

「?」


 これは喜んでいいことですか?……喜んでおきましょう。


「お姉様と一緒じゃないのですか?」

「あぁ。今日の俺は仕事だからね。多分、スティラと一緒に回っていると思うよ」


 それなら私もその内二人に会えるかな?出来れば私が接客している時に来てくれたら嬉しかったのに。


「アル様、後でお兄様とお姉様を探しましょうか」

「そうだね」


「やっぱり仲いいんだな」


 ん?知らない声?

 あ、トーリお兄様、誰かと一緒に居る。全然気づかなかった。ごめんなさい。


「はじめまして!シルフィーで、す………?」


 ん?


 何だか気になって思わず自己紹介を止める。





「何だか…」


 見た事があるような…?優しそうな表情、優しい声…、


「えーと…」


 どこだったかな、ずーっと前にあった事がある気が…?「私とあった事あります?」って聞くのも何だか悪いし、それに、このセリフってナンパの常套句。


 うーん、どこで会ったかなぁ。街?森?孤児院?…あ、孤児院!で、遊んでくれたお兄ちゃん!名前は確か…、


「……あ!ルークお兄ちゃん!」

「やっと気づいたな」


 ルークお兄ちゃんはほっとしたような顔でこっちを見る。そして、


「ね?言ったでしょう?信じてくれないんだから…」

「当たり前だろ?そういってシルフィーに近寄る輩がいくらいると思ってるんだ」

「でも、俺は本当なのに…」

「悪かったって」


 ……えーと?どういう事だろう?


 つまりは、ルークお兄ちゃんはトーリお兄様に、私とルークお兄ちゃんは知り合いって言っていたけれど、そう言って仲介を頼んで私に近づこうとする人が多いからトーリお兄様はルークお兄ちゃんを信じ切れなかったって事かな?


 でも、本当に知り合いだったから信じられたって事だよね?


「ルークお兄ちゃん、久しぶりです」

「だな。にしても、よく覚えてたな」


 ふっふっふ。なんて言ったって、私は転生者だもん。当時の記憶力は普通の三歳とは違いますよ!


「相変わらず可愛いな」


 あら、褒められちゃった。


「へへっ」


「流石にもう頭を撫でたりは出来ないけど、元気そうでよかった」

「ありがとうございます」


 公共の場でアル様の婚約者だから気を使ってくれているのね。流石、空気が読めるお兄ちゃん。


「でも、どうしてルークお兄ちゃんがトーリお兄様と一緒に?」

「今はトーリ様の部下なんだ」

「ふへぇ……」


 驚き過ぎて変な返事になってしまった。というか、今思ったけれど、トーリお兄様は副団長っていう偉い立場なのにここに来てもいいんだろうか?…、いや、偉い立場だからこそかな?そんなトーリお兄様の部下として一緒に居るルークお兄ちゃんもすごい。


「アル様もルークお兄ちゃんの事、知ってたんですか?」

「うん、ルークの事は知っていたけれど、本当にシルフィーの知り合いだとは知らなかったな」

「私も騎士になっているなんて知りませんでした」


 皆、私とルークお兄ちゃんが知り合いだとは信じていなかったのね。何かごめんね、ルークお兄ちゃん。


「にしても、あの泣き虫だったシルフィーがなぁ…」

「!」


 え?!あ!もしかして、あのかくれんぼの事いってます?!だ、ダメです!そのエピソード、アル様知らないんですから!


「ほう、是非そのエピソードを」


 ほら!食いついちゃったじゃないですか!


「いいでしょう。あれは、12年前。シルフィーが三歳の頃…、」


 ぎゃー、やめて!


「孤児院に公爵夫人と来たシルフィーの暇つぶしにかくれんぼをしていたんです」

「お、お兄ちゃん、その辺で…」

「シルフィー、ちょっと静かにしていようか」

「ふぐっ」


 ルークお兄ちゃんを止めたけど、アル様に口をふさがれてしまいました。わ、私の恥ずかしいエピソードを暴露して楽しいんですか?!


「最初はシルフィーが鬼をしていたんですが、シルフィーが小さすぎる事を忘れて、私達がいつもしている調子で木の上に隠れてしまったんです」


 小さいは余計です!


「私達がなかなか見つからなかったのか、シルフィーがその後泣き出してしまって…」

「あぁ、想像つくよ…」

「でも、木の上を禁止して、もう何回かしているうちに機嫌が直っていって、」

「シルフィーは機嫌が直るのは早いもんね」


 あの、遠回しに単純って言ってます?


「あの中で一番小さかったのに、『小さくない』って言い張るのがまた可愛くて」

「あぁ、やっぱりその可愛さを振りまいてたんだ……」


 アル様が何だかうなだれてる?お気の毒に…?


「あと、もう一つ」


 まだあるんですか?!


「もう一つ可愛かったのが、私達を最初に見た言葉が『初めまして』じゃなくて、『かくれんぼ!』だったんですよ」

「……それは、可愛すぎるね」


 あの、もうそろそろやめて貰ってもいいですか?公開処刑じゃないですか?あと、なんか、周りにメモとペンを持った人が居るんですが……。あの人確か『シルフィー様の笑顔を守り隊』の人ですよね?私、あなたの顔を覚えてるんですからね。


 そうやって私の恥ずかしいエピソードを話すだけ話してトーリお兄様とルークお兄ちゃんはお仕事に戻っていきました。


 何だか私だけ可哀想じゃないですか?


 でも、ルークお兄ちゃんに会えたことは嬉しかったです。






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