19
今日は、街を出る。
行く場所はもう決めてある。
タスクというエスカ帝国の帝都に行こうと思っている。
歩きで行くつもりだが、中々遠いらしい。
この街の特徴は、錬金術が盛んであることだ。
俺は、この街で、入学して、錬金を学ぼうと思っている。
魔法を使わなくても、錬金だけで戦えるようにもしたい。
『錬金だけで戦うってなんだ?』
それは秘密だ。
これで、妨害術も学べるしな。
〈馬車は借りなくていいんですかー?〉
馬車はいらない。
歩きで行きたい。
狙撃銃なんて、見られたら嫌だしな。
収納しろって?
収納したら、敵が来た時に、すぐに撃てないだろ?
装備品は要らないな。
下手な装備品より、虚無の方が防御力も高いしな。
いやぁ…やっぱ、綺麗だったな…
アリス…………
君を手に入れたい……
だが、俺は振られた………
あんだけ、全てが優秀なら、勇者に選ばれても当然だよな。
告白して良かった…。
そのうち、彼女”如き”では、俺には勝てなくなるだろう。
そしたら、彼女も、俺に惚れてくれるのだろうか…
今は移動が先だ。
俺は街を出た。
食料は買っておいた。
不味いかもしれないが、保存食だ。
早速。ゴブリンが見えた。
もちろん狙撃銃だ。
余裕で、殺せた。
俺はそのあとも歩き続け。
足が疲れるまで歩いた。
「星が綺麗だな。」
思わず、声が漏れた。
空には、綺麗な星が、散らばっていた。
街の中では見れない、素晴らしい景色だ。
俺は今までの人生を思い出す。
物心着いた時には、おじいちゃんしかいなかった。
俺は魔力も低く、何も使えなかった。
魔術も使えないくらい魔力が弱かった。
おじいちゃんが死んだ後、学園に通ったけど、
無能すぎて、何も出来なかった。
そんな時に、俺は振られて、このスキルに目覚めたんだ。
今だけは言おう。
”神よ、絶対にそっちへ行ってやるからな。”
俺はニヤニヤながら言っていた。
今は楽しい、人生を送れているが、
今までの辛い分はしっかりと、精算してもらうからな。
復讐が何も生まないことは知っている。
だが、俺はそのうち、強さを求めて、この世界の強者を倒し、強さを求めてら暴れ尽くすだろう。
その時には、神を超えたいなぁ。
『神を倒すか…おもしれぇ…やっぱり、ついてきて良かった!!』
今の俺には、ヴォイドも、異世界さんもいる。
──────その時、世界を変える者の、”対”となる、者が産まれた────
俺は考えた。俺は七つの大罪ではない。
七つの美徳でもない。
なのに、感情スキルを持っている。
俺の対になる存在はいない。
なら、一体、俺はなんなんだ?
アルファベット持ちもなんなんだ?
俺が見た事あるのは、七つの大罪のフレアと俺とアリスだけだ。
ただ、単に珍しいのか?そういや、禁忌書の作者名の所にヨハンとゲーテの間に、かなり不自然な空白があったな。もしかして、ヨハンもアルファベット持ちか?
今のアルファベット文字を考えれば、
勇者と七つの大罪と七つの美徳はイニシャルを持つのか?
なら、フレディは一体なんだ?
それなら、フレディもアルファベットを持ってるはずだ。
この国の王族は全員強い。
それは恐らく、フレディの血を受け継いでるからだろう。
じゃあ、俺はなんだ?
おじいちゃんには
「ロストは、ワシとは血が繋がっていない。だが、ワシはロストを孫だと思っておる。最後まで愛させてくれ。」
と言われたことから、おじいちゃんとは、血が繋がっていない。
俺の親は七つの大罪なのか?
おじいちゃんが言うには、俺の両親は強かったらしい。
でも、俺は弱かった。
おかしい。
考えれば、考えるほど、謎が深まるばかりだ。
この世界の謎は深い。
考えても仕方ない。今日は寝るか。
〜翌日〜
朝日が眩しい。俺は思わず、目の前に手を出して、
光を抑えた。
今日も歩く。
敵がいれば狙撃銃で倒す。
〈狙撃スキルを手に入れたよ!!〉
狙撃銃で敵を撃ちまくったから、入手したのだろう。
この辺は、ゴブリンばっかりだ。
相手にもならない。
そういえば、ヨハンの日記に、とある言葉が書いてあったな。
”死なない者に生はない、あるのは虚”と書いてあったな。
他にも、
”私の継承者は、辛い思いをするだろう”とも
書いてあれば、
”強者は、死を求めている。だが、私は弱いから、死を恐れている。”
と。
ヨハンが弱い?なら、誰が一体、強いんだ?
最後にフレディの言葉が書いてあった。
”この言葉はヨハンから、託されたものだ。
「僕は、強くなる前に、死ねて、よかった…。」”
ん?強くなる前に?この文章の中で、強くなるとはなんなんだ?
ヨハンが強くないなら、誰が強いと言うんだ。
意味がわからない。
これを知っているものはいるのだろうか。
神しか知らないのか?
いや、神も知らなさそうだ。
俺は読み進めている間に、足を動かしていた。
死を求める?そんなヤツいるのか?
皆、死にたくないはずだ。
『それは、マスターの考えだろ?世の中には、死にたいだけのやつもいるんだぜ?かつてはそうだったろ?』
そうだ……
俺は死にたかった。
だが、今はもう死にたくない。
俺は、自由に生きるって決めたんだ。
このスキルと共に──