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15 ~~死闘~~



 “要塞のジェイコブ”こと、ジェイコブ・アイヒェルホイスは感心していた。

 ジェイコブだけではない。彼と一緒に地下に潜った三人のエクスルーダーたちもエリアを進むごとに驚きを禁じ得ないと言った様子。


 リュックとチャド救出を目的として地下に降りたジェイコブ一行は、以前リュックと出会った場所……そしてリュックから教えて貰った秘密の通路を通じて地下三階へと降り立った。


 初めて見る世界、冬眠ポッドがズラリと並ばない光景に一同は背筋にうすら寒いものを感じたのだが、天井の照明が煌々と辺りを照らす眩しい景色の中で、ジェイコブたちは壁の落書きを見つけたのである。


『扉の向こうにダイアー三体、天井の配管を伝って奥へ行く』

『二十メートル先左にロック付きの小部屋有り、緊急時はそこに避難』


 ーーリュック・ドゥシャン、どこまで奥の深い少年なんだーー


 本来、カンペールの街のワーカー(労働者)において、地下探索のマッピングに秀でた者は絶対に地図を書いたり現地に目印を作らず、常に自分の脳内に記憶して出し惜しみする事で自分をセールスする。

 だが、リュック・ドゥシャンは自分の価値を上げるどころか、次に来る者のために道しるべを作っていたのである。


 リュックの残したメッセージに従い身を隠したりダイアーをやり過ごしたり、そして照明が点灯する異常事態に興奮するダイアーと戦闘を繰り返しながらも、それでも地下三階を難無く進むジェイコブたちであったのだが、やがて彼らの前を巨大で分厚いシャッターが遮った。


 バイオハザードのマークが露骨な大きさでペイントされたそのシャッター、その向こうに一体何が待ち受けているのかと一同は息を飲むのだが、たった独りで地下に潜る勇気ある少年がここを通り抜けて行ったのは確か。ジェイコブたちは互いに顔を向け合いながら無言でうなづき、壁面にあるシャッター開放ボタンを押した。


 ーーまるで津波のようだった

 シャッターが上がり切らない内に、ネバー・ダイアーの大群がジェイコブたちに襲いかかったのである。

 ダイアーは圧倒的且つ絶望的な数を誇りながら生者に飛びかかったのだが、さすがは選りすぐりのエクスルーダーたち。誰一人として怖じ気づいて逃げ出す事は無く、個人プレイの遥か延長線上で組織力を構築させた。


 右手に残忍なナタを構えながら常にチームの先陣を切るディートリク“紳士”ゾンダッハは、背中に括り付けてあったライオットシールド(暴動鎮圧盾)を前に構えてダイアーの波を受け止める。

 すると前がつかえてダイナミックな移動が出来なくなったダイアーたちは押し合いへし合いで動線がバラバラになり、押し寄せた波が一瞬止まる。


 するとすかさずゾンダッハの左側からルーサー“ミンチング・マシーン”ギブソンが得意のメイスを上下縦に振り下ろす。モグラ叩きのように視界に入ったダイアーの頭をことごとく粉砕する。

 ゾンダッハの右側に躍り出たジェイコブもルーサーと同じく、盾防御のゾンダッハから流れて来たダイアーを自慢の“撲殺剣”でことごとく葬っている。


 ダイアーが頭を粉砕され、ただの肉の塊となってバタバタと倒れば、当たり前の話そこは足の踏み場に困るデコボコの道となる。

 それを見越したのか、三人の背後に位置するロザンナ・ボリツコヴァが左右に忙しく移動し、隙間から見えた遠方のダイアーに向かって発砲。一撃必中の精度でダイアーを沈めている。


 何と言うチームワーク、何と言う破壊力

 まるでブルドーザーで大量の土を敷き(なら)しているようだ


「左の奥、壁の配管を見ろ! 彼のメッセージがあるぞ」


 そしてついに希望の光が見えた

 あの配管に登れば安全なルートがあると言うメッセージなのであろう。それが証拠に、ご丁寧に矢印まで書かれている。


 だが、エクスルーダーたちがそこに無事たどり着く前に悲劇が始まる。

 ルーサーのメイスに殴られ、床に倒れたダイアー一体が完全沈黙していなかったのか、ゾンダッハの足にしがみついて右足のふくらはぎを思い切り食い千切ったのだ。


「ぎゃあああっ! ぎゃああああ! 」


 いくら屈強なエクスルーダーと言っても、ふくらはぎを根こそぎ噛み千切られれば絶叫しながら悶絶するしか無い。

 ゾンダッハは右足を抑えながらそのまま床を転げ回るのだが、彼の様子を見てやれるだけの余裕がジェイコブたちには無い。

 疲労を感じて動きが鈍る人間と、疲労を感じずに襲い続けるネバー・ダイアーとの差は凄まじく、メイスや撲殺剣で頭部を粉砕するにも苦労するようになって来たのだ。


「ゾンダッハはもうダメだ! 銃を抜け、このまま進むしかない!」


 床を這ってゾンダッハに近づくダイアーたちに銃を抜いたジェイコブとルーサーは、ドウンドウン!と大口径の拳銃をぬいてダイアーにトドメを刺した。


 ギリギリの線で力の均衡が取れていたのかも知れないが、盾役だったゾンダッハが戦闘不能に陥れば、もはやジェイコブたち残された三人がダイアーと正面衝突するだけの余力は無い。ジェイコブもルーサーもロザンナも、目の前に現れるダイアーの頭に狙いを定めるので精一杯なのだ。


 やがて早くから銃で闘っていたロザンナが弾切れに陥る。ナイフ一本で勝負しようものの多勢に無勢。ジェイコブたちが助けに入ろうとするも早々とダイアーの波に飲み込まれてしまった。

 そしてジェイコブは間一髪「リュックのメッセージ」がある配管に手を伸ばして駆け上がり、ダイアーたちの魔の手から逃れる事が出来たのだが、ルーサーが不運だった。

 メイスを振り過ぎて手になかなか力が入らなかったのか、配管に手を掛けてもなかなか身体を持ち上げる事が出来ずに、追いかけて来たダイアーたちに太ももや背中をバリバリと引き裂かれ、悲鳴とともにダイアーの海に沈んでしまったのである。


 ーーつまり、生き残ったのはジェイコブだけ

 少年二人を救出する積もりが、結果後戻りの出来ない片道切符を手にリュックの足跡を辿る事しか出来なくなったのだ。




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