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10 エターナル開発事業団



 それはペーターセン事件が起きる直前の事、リュックが持ち帰った「お宝」から端を発する。

 リュックが超一流のエクスルーダーである要塞のジェイコブと地下で遭遇したあの日の事だ。


 リュックが持ち帰った基盤やコンピュータの中から無傷のハードディスクを発見したチャドは、ゴールドラッシュの夢に震えながら、不眠不休で解析を始める。

 それが今までに無かったほどの興奮をもたらしたのだ。



 むき出しの基盤や鉄くずが無秩序に散りばめられ、足の踏み場も無いチャドの住居兼作業場。

 食べかけのミンチミートや固形サラダもほったらかしに、作業机に鎮座する配線と基盤むき出しの自作コンピュータと向き合うチャド。昼夜の境界が全く存在しない常時暗闇の地下生活だが、時計の針は深夜の二時を過ぎている。睡魔の甘い誘惑を軽々と蹴飛ばすほどに彼は夢中になっていたのだ。


 リュックが持ち帰ったハードディスクがコンピュータに繋がれ、ヒビの入った古い液晶モニターは真っ黒い画面を背景に、緑系のネオン文字が何列にも浮かび上がる。


 ーースピンドルモーターもシークモーターも正常にカリカリ動いている。中の磁気ディスクが劣化していなければバッチリだ


 チャドの自作コンピュータと同期が終わったのか、画面にはリムーバブルディスクのファイルを開封するかとの質問メッセージが。

 有無を言わさずに開封実行を命令し、血走った眼で画面に食いついた。


「んあ? 」


 表示されたファイルは全部で二件

 一件目のファイルは空であり、二件目のファイルを開封しようとすると『パスワードが必要』だと警告メッセージが表示されてそれ以上は全く進めないのだ。


「パス付きとはな、いよいよ期待値が上がるデータだぜ。どんなに暗号化してあっても俺にはかなわない、何桁でも突破してやるぞ」


 手元にあった別のアクセサリを自作コンピュータに接続させる。


「ふはは、チャド様謹製の暗号解読ソフトだ。その程度で闇に葬れると思うなよ」


 モニター画面にサムネイルの様な小さな画面が現れる、実行するかと問うて来たのでイエスを押すと、小さな画面に数字が現れ、二十パーセント、三十パーセントと、数字のパーセンテージがどんどん上昇して行くではないか。


「あんまり恥ずかしい個人情報は要らないんだ、流通させられないからな。……動画が良いな、豪華客船の案内動画とか。あと当時のニュース番組集めた動画は評判が良かった」


 動画じゃなくても画像データがあれば高値だ、地上の景色のデータがあれば、プロジェクタを使って鉄の壁を風景に変えられるーー

 取らぬ狸の皮算用とでも言うのか、チャドは有頂天になりながら小さな作業画面を見詰める。するとパーセンテージは百に達し、見事パスワード解除を知らせて来たではないか。


「よし、いただきだ! 」


 喜び勇んでファイルを開ける

 ファイルの中身が画面狭しと広げられたのだが、チャドは喜ばなかった。素っ頓狂な声を上げて固まったのである。

 何故なら、画面に表示されたのは様々な言語のランダム表示。アルファベットだけでなく漢字にカタカナにキリル文字などが不定期に連なって全く判読出来ないのだ。


「文字化けかよ、劣化してないと思ったのに……」


 まあ、良くある事だと呟きながらがっくりと肩を落としてため息を吐く。

 そして回線を切断しようとした時……苛立ち紛れにエンターキーを数回連打すると、突如画面に警告画面が表示されたのである。


『警告! ファイル名 オペレーション・オプティミゼーションを開封するには専用読み取りソフトが必要 ーーファイル管理者 エターナル開発事業団』


「これは! これはもしかして……」


 このハードディスクは劣化などしていなかった。長年放置され磁気ディスクの一部が損耗して文字化けを起こしたのではないのだ。


「こ、これは個人所有物のコンピュータハードディスクじゃない。業務管理用? エターナル側の業務管理用コンピュータのハードディスクなのか? 」


 ーーそれにしても「オペレーション・オプティミゼーション(最適化作戦)」って何だ? エターナル開発事業団なんて聞いた事無いからすっげえ過去の組織だったんだろうが、何かの計画的作業をプランニングするなら「プロジェクト」だろ? プロジェクト・オプティミゼーション(最適化計画)じゃなきゃいけないのに何でオペレーションなんだよ……軍事作戦みたいじゃないか


 知的好奇心に駆られるチャドは、慌てて席を立ち隣のテーブルへ。

 散らかっているコップや紙を右手で無理矢理払いのけもう一つの端末の電源を入れる ーー技術水準が一定以上で豊富な実績を残したテクニカルだけが認められる、上級管理者側ホストコンピュータへのアクセス可能端末だ


「……教えてくれ、オペレーション・オプティミゼーションって何だ? 」


 ガチャガチャと乱暴にキーを叩いて検索窓にその文字を入力するも、「該当ナシ」と寒々とした回答。今度はエターナル開発事業団と入力するもやはり答えは同じく該当ナシ。


「リュック……こうなりゃリュックにもう一度潜って貰うしかない。専用読み取りソフトの入ったハードディスク、落ちてた場所の近くに必ずあったはずだ」



 ……こうしてリュックは最適化作戦の謎に無理矢理付き合わされ、危険な地下三階に何度も潜らざるを得ない状態になるのだが、その結果が目に見えて現れるのはおよそ二カ月後の事となる。


 果たしてオペレーション・オプティミゼーション(最適化作戦)とは一体何を意味するのか

 そしてその作戦をもってエターナル開発事業団は何を目指していたのか



  ◆  ◆  ◆


 真っ暗で冷たい空気に支配されたとある空間

 その闇の深淵とも言うべき世界で一つの明かりが灯される。


 それは彩色豊かな液晶画面の光ではなく、古い時代のブラウン管画面のよう。何本もの横スジが入りブワン! と浮き出て、おぼつかない勢いで四スミの丸い画面に光が入った。

 その画面は「明るい黒」古い古いコンピュータ画面のようであり、画面左上に小さな四角形のドットが点滅を始めた瞬間、赤い文字がズラズラと並び始めたのだ。


 『警告 五階層のテクニカル供与端末より禁止文字入力による検索が実施された 検索文字はオペレーション・オプティミゼーション とエターナル開発事業団 ……情報危険レベル2を発令、検索者と情報端末の排除と情報封鎖を検討せよ。 検索者ID 5466◯◯◯……チャド・ヘックス』


 チャドとリュックだけでなく、彼らの「頭上」にいる者たちも動き出したのである。




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