表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/58

その2

赤羽(あかばね)視点です


  私は物心ついたときから、元陸上選手の父と一緒に走っていた。

 遺伝とか英才教育とかのおかげで、脚は速い方だった。

 当たり前のようにクラブチームに入り、中学も陸上部。

 短距離のエースとして、皆に頼りにされて、向いてもいないキャプテンもこなした。


 だけど、それだけ。


 私は走るだけ。うん、そうだろう、きっと。

 深く考えると、弱い自分が、私を飲み込んでしまう。

 私は走り続ける。

 走っている間は、私は無心の風になる、どこまでもいつまでも。


―――


 中学から高校へ上がる春休み。


 家族からは「勉強も頑張りなさいよ」と言われ、私学の推薦はパスして、県立高校を受験した。

 合格した次の日には、両親に買ってもらった新しいジャージを着て、高校のグラウンドにいた。

 早いうちに陸協登録をしておくと、1年生でも高校総体にエントリーできるらしい。


 今は総体のために走ろう。

 私は陸上ができて、ハッピーなのだ。


―――


 4月の下旬のある日、2年の芽野センパイと話をしていた。


「今年は女の子が1人入ってくれて嬉しいよ」


 その一人は私だ。


 曖昧な情報と高い偏差値だけで選んだこの高校の陸上部、なんと女子部員は私を入れて3人。

 2年の短距離ブロックの芽野めのさん、同じく2年のマネージャーの宮山みややまさん。

 短・長・マネ合わせて7人。少数精鋭、もとい、閑古鳥が鳴く細々とした部だった。


 強豪校じゃなくてほっとしたと、心の中で呟く弱い自分とは向き合わない。


「あと一人入ってくれれば、みやも入れて4人でリレーでいるのに」


 みやとは、宮山さんのことで、芽野さんは「みゃー」と甘えたりするし、他の人も「みやさん」と呼んでいる。

 宮山さんは嫌がるだろうなと思いつつ、でも、少しワクワクした。


「じゃあ、私、頑張って勧誘します!」


 芽野さんは驚いたような顔をする。


「人見知りなのに大丈夫?」


 ……大丈夫じゃない。

 私は陸上をしていないときは、コミュニケーションが下手な引っ込み思案になってしまう。

 陸上以外の場面では、自信がなくなってしまう。

 この前、校舎内で芽野さんと顔を合わせたとき、発見されてしまった。


「だ、大丈夫です。任せてください!」


 でも、陸上をしているときは、私は間違っていないと、思い込むことができる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ