第40夜(学園編) 波乱の手紙
前回のあらすじ
ルキウス、政権維持の為に主人公を入学させようとする。
こんばんは、シヴァリエです。
男としての姿を手に入れてから、4年かな?
完全な性転換じゃないから、何だか毎日、コスプレしている気分、えへへ楽しい。コスプレってやってると楽しいよね。まこちーの時、ハロウィンコスプレをやりながら踊った時楽しかったなぁ。魔女の格好したんだけど、今考えたら、魔法を使える本当の魔法使いになっているの、凄く感慨深いな~。
今は夜だし、普段通りの女の子の姿で過ごしているけど、やっぱり男の体とは全然違くて、筋肉が一瞬にして消え去る。脂肪だらけだ。特に胸‥‥重い。前世の2倍くらいかな?肩こりしそう。あっそうだ。魔法で軽量に‥‥!
「お嬢様。ルキウス国王から手紙が。」
「?ルキウスさん‥‥ルキウス様から?」
びっくりした。いきなり手紙が来るなんて。
ルキウス様呼び、まだ慣れないなぁ‥‥。未だに優しいおまわりさんのイメージが抜けないから‥‥つい“さん”付けになっちゃう。
それにしても私に手紙って何でだろう?
最近、お兄様宛に何通か手紙のやり取りをしているようだけど、私、ルキウス様にがっつり関わったのは後にも先にもあの時が最後だ。1度だけ辺境伯領の視察に来たことがあるけど、私がターザさんのところで弓を習っている間の話で、挨拶だけしかできなかったんだよね‥‥。
じゃあ、この手紙、本当に何なんだろう?
手紙の封を開けて、中を見る。そこには王室らしい上等な紙が丁寧に折り畳まれていた。それをゆっくりと開いて、中を見る。そこには丁寧な文字で数行に渡って、私にとって衝撃的なことが書かれていた。
「私が‥‥学校?」
そこに書かれていたのは、王立ブーゲンビリア学園への入学案内と、要約すると、ルキウス自身の計らいで学費免除にするからどうか入ってくれ、という懇願に近い命令だった。
アンナ達が心配そうに覗き込む中、私は内容をよく理解する為に中身を読み込む。
王立ブーゲンビリア学園とは、何代も前の王様が作った貴族の為の学園らしい。政治に参加する貴族が政治や軍事を学ぶ為に作られた学園。近年は学費が出せるフローレンス国民なら誰でも入られる学校になっているけど、基本的には貴族が主な生徒で貴族に生まれた子女は必ずその学園に入ることが必須だそう。とはいえ、辺境伯領はその特殊性から今まで入学は免除されていて、兄様がこの学園に入っていなかったのはそう言うことらしい。
じゃあ、何で私が学費免除なんて破格の条件で入学を勧められているかと言うと‥‥。
‥‥あれ?書いてな‥‥あっ、あった。
『入って損はさせないから、ルキウスお兄さんを助けると思って入って欲しいな。』
‥‥私が学園に入ることと、ルキウス様を助けることと何が繋がるんだろう?入って損はさせないってことは学費免除だけじゃなくて、何か諸々譲歩するってことだよね。
うーん、学校かぁ‥‥。まこちーの時はアイドルとして多忙だったから、中学とか全然行けなかった。行ったとしても一時間と3時間だけ、下手をすればテストだけ受けて終わった月もある。だから、高校は諦めて、普通科高校じゃない完全な通信制高校に入ったんだよね。‥‥卒業する前に死んじゃったけど‥‥。
うん。
学校に行ってみたい。私は学校を知らない。だからこそ、憧れる。学校生活とか青春とか謳歌してみたい。ゲームの中の学校は知っているけど、実体験はないから‥‥。
その時、突如として、私の手から手紙が取り上げられた。
兄様だ。
お兄様は私から手紙を取り上げて、中身を見始めた。あれ?気配、全然感じなかった‥‥。本当に突然、お兄様が現れた。
兄様が吟味するように中身を読み込んでいく。
そして、私に一言だけ言った。
「行くな。」
「‥‥え?」
思わず、ショックな顔を浮かべちゃった。何で?何でなんだろう?ルキウスさんの真意はともかく、学校‥‥行けると思ってたのに‥‥な‥‥。
「何で、ですか?」
「‥‥。」
兄様はここぞとばかりにいつもの寡黙になっちゃった。‥‥理由ぐらい教えてくれればいいのに‥‥。
「兄様、何で、なんですか?」
少し強めに聞いてみる。だけど、兄様はまるで聞いていないように、手紙を元の通りに折り畳むと魔法でゴミ箱に捨てちゃった‥‥。酷い‥‥。そこまでしなくていいのに。
「お兄様‥‥!!」
また兄様は無視して、私から背を向けた。
何だか兄様の様子がおかしい。いつもだったら、そんなことしないのに、一言でも理由を言って黙々と拒否の文面を書き始めるのに。何だか変だし‥‥嫌だ。
学校のことはこの際どうでもいい。理由を言われないのが嫌だ。‥‥まるで、私のこと信用してない。一言だけ言って、私の質問無視して、私宛の手紙を勝手に捨てるとか意味わからない。せめて一言理由を言ってくれれば、納得できるのに‥‥。何も知らない子どもに説明する必要ないみたいな態度を取られて、私はちょっとだけショックだった。
「兄様!どうしてわけを話してくれないんですか‥‥!」
「‥‥。」
兄様はさっさと部屋から出ていこうとする。使用人の人達は突然のことに驚いていて、私の味方にも、兄様を止めてくれそうにもない。
「兄様‥‥!」
呼ぶけど、兄様の足は止まらない。
‥‥何だか、それにやるせなくてカチンと来た。
「もうお兄様なんて知りません‥‥!」
私もう16なのに‥‥!私のこと何だと思ってるの?黙ってちゃ分からないのに。どうして黙っちゃうの?‥‥私、まだ、兄様から色々聞けるような関係になってなかったのかな‥‥。‥‥信用ないのかな‥‥。今まで少しだけ自分の前だけ饒舌になるのは、少しだけそういう関係になったからだと思っていたのに‥‥私の勘違いだったのかな?
不安になって悲しくなって、思わず、家から飛び出す。
何だか自己嫌悪で泣いてしまう。
とにかく、今、お兄様の顔なんて見たくない。
どっか遠くに行きたい。
ひたすら走って、家から離れる。
心の中だけ、だけど言わせて下さい。
‥‥私‥‥お兄様に合わせる顔が分からないので、家出します。




